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第3話 ケインズ村

 ケインズ村に向かう前に、やることが沢山あった。4月から始まる大学の為の引っ越しの準備も終わっていない。異世界に心を奪われている場合ではなかった。


 そんな引越しの準備をしている最中、俺は自分の身体に起きた更なる異変に気がついた。


 高校時代に使っていた教科書や参考書を縛っているとき、ふと目に留まった英語の教科書を開いてみると、すらすらと理解できた。読めちゃったのだ!まるで日本語の小説を読むかのように。


 その光景を見た妹の夢が「お兄ちゃん。山のキノコでも、手あたり次第に食べたの?だめだよ」と感心しながらも心配してきた。優しい妹である。


 妹の夢は、俺とは外見がまったく異なる。夢は手足が長く、スラリとしており、二重の美人さんだ。父親に似た様だ。俺は完全に母親似である。


 でもその時の俺は、夢の声など全く耳に入らず、自分自身の変化に驚いていた。これがあの巻物の威力なのか?


 更なる確認がしたくなり、そのまま近くの図書館へと向かった。もう驚き!どんな国の文字でもサクサク読めてしまう。進路を考え直そうかと真剣に悩んでしまった。


 これで異世界に行っても、会話で困ることは無いだろう。今からでも異世界へ行こうと思えば行ける。ただ、実際の俺は異世界どころじゃない。


 明後日には東京に向かわなきゃいけない。急ピッチで引っ越しの準備を再開しないと。あと、異世界へ通じる扉も、忘れずに東京に持っていかないと。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 引っ越しも無事に終わった俺は、裏山から持って来た異世界へつながる扉を使って、空いている時間を利用し、時々異世界を散策している。


 まずは、洞窟の内部に何か落ちていないか、隅々まで丹念に調べてみた。


 洞窟の隅々をくまなく調べた結果、ゴブリンが持ち込んだと思われる沢山の品々を見つけた。特に役立ちそうなものとして、異世界の通貨が大量に詰まった(カメ)が置かれていた。


 さらに、ポーション(中)が2本置かれていた。


 ポーション(中)は、鑑定によるとどんな傷をも治すことができるようだ。切断された部位も、24時間以内であればこのポーションで治るらしい。その為、非常に高価なものであり、貴族でさえ容易には手に入らない品らしい。


 ゴブリンのおかげでお金は勿論、ポーション(中)まで手に入ってしまった。でも...本当にゴブリンだけの仕業なのか?ゴブリンがポーション(中)を?それも2本も?


 もしかしたら...お地蔵様たちの仕業かな?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 東京への大学進学に伴い、一時的にぼっちキャンプを諦める必要があると考えていた。しかし、洞窟から持ち帰った扉を活用することで、ぼっちキャンプをもっと手軽に楽しめるようになった。


 異世界には食用に適した山草が豊富に生えており、「ファイアリーフ」や「スターベリー」を始め、天ぷらに最適な濃厚な味の「レインドロップフラワー」や、旨味たっぷりの「クラウドリーフ」も存在した。


 空いた時間を利用して、異世界の食材を収集しながら洞窟の周辺を探索した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 さて、話を戻そう。今は土曜日の朝。バイトは今日と明日はお休み。そして、今日の目標はケインズ村にたどり着くこと。


 さあ、今日こそケインズ村にたどり着くぞ!スムーズに入れるといいけど...


 周囲を警戒しながら、洞窟から少し離れた場所にあるケインズ村を目指す。と言っても、崖の上から見えるんだけどね。


「ほへー!でかい」


 遠くから見ても巨大に見えたが、近づいたらその大きさがより明らかになった。おそらく魔物を避けるためだろうか、その広大な土地は石垣で囲まれている。


 扉の部分は特に頑丈な素材で作られており、旅人や馬車がケインズ村への入村を待って並んでいる。


  うわぁー、人がたくさんいる。村の中に入るだけで、かなり時間がかかりそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 門前に着いたところ、村に入る扉の前には長い列ができていた。仕方なく列に並ぶと、周りにいたのは女性ばかりだった。


 へえ、意外だな。異世界では冒険者や旅人は男性が多いと思っていたのに。


 そして、周りの者たちが俺をチラチラと見てくる。もしかしてチャックでも開いているのだろうか?


 また、周囲にいる者たちは、非常に逞しい体格をしている。中には190cm近い者もいるようだ。


 俺よりもみんな、背が高く、体も大きい。ただ...人の外見についてあれこれ言える立場では決してないが、その...綺麗な子が少ないみたいだ。


 俺がぼんやりと人間観察をしていると、非常に筋肉質で俺より背が高く、鋭い目つき、団子鼻、ぷっくりした唇をした女性が、「し、失礼するけど、あ、あんた男性だろ。男性はあっちだよ」と言って、別の入り口を教えてくれた。


 遠くからではっきりとは見えなかったが、入口は男女別々になっているようだ。


「ほ、本当だ。あ、ありがとうございます!」


 その女性に感謝の言葉を述べ、お辞儀をしてから、男性専用の出入り口に向かって走った。


 すると、「キャーキャー!」と先ほどの場所から歓声が聞こえる。何かあったのかな?


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