表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/32

第1話 始まりの洞窟

新作です。よろしくお願いします。

 俺の名は秋枝(アキエダ)智也(トモヤ)。19歳で関東国際医療大学の作業療法学科に通っている。今年の春に岐阜から東京に出て来て、一人暮らしを始めたばかり。


 東京って本当にすごい街だよ。岐阜とは雲泥の差だ。電車やバスが次から次へと走ってくるし、駅は迷路みたいに複雑だ。どこだよ"銀の鈴"って...。


 大学では少しずつ友達もできてきたけど、まだ馴染めていない感じがする。医療系の大学だから全体的に女子が多い。


 俺が専攻している保健学部作業療法学科に、男子は40人中6人しかいない。そのうち俺を含めて3人は地方出身で、他の3人は東京生まれの東京育ちだ。


 女子と話す機会も増えてきたけど...。


 最近、すごく可愛い看護学科の女の子から、声をかけられることがある。でもそれは罠だと思う。どんな罠かは知らないけど。


 俺なんかに興味があるわけないし、何か企んでるんじゃないかと疑ってしまう。その結果、警戒心ばかり強くなってしまった。自分でもそんなに卑屈にならなくてもと思うのだが、自分で言うのも何だけど、俺は見た目が最悪なんだよね...。


 背は低くて目は細い。鼻は丸くて、食欲旺盛で太り気味。モテ要素ゼロって感じ。昔から「ブーちゃん」ってあだ名で呼ばれている。子豚のブーから来てるらしい。まあ否定できないけど。


 はあー、俺も可愛い女の子と付き合いたいな。でも...こんな見た目だし。「性格が良ければ外見なんて!」と励ましてくれる女の子もいるが、じゃあ、俺と付き合ってくれよ!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 季節は、少しだけ大学生活が慣れてきた6月。授業とほぼ毎日バイト兼、教授のお手伝いに呼ばれている。でもまだ一年生の俺が、なぜ毎日のように教授に呼ばれるかと言うと、実は俺にはすごい能力があるからだ。


 何と俺は、すべての言語が理解出来るし、話すことも可能だ。


 それを知った強面(コワオモテ)の佐々木教授に、毎日の様に翻訳のバイトを手伝わされている。


 ただ、しっかりと報酬はくれるし、ご飯もおごってくれる。


 フランス語やドイツ語は時給で3500円。ポルトガル語やスペイン語は、時給4000円もくれる。高額だ。ただ医療系の情報誌だけあって英語やドイツ語、フランス語が多いかな。


 俺がなぜ、すべての言語が話せる様になったのかというと、その始まりは約4ヶ月前に遡る。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 4ヶ月前、俺の実家には裏山があり、手つかずの森林がそのままの状態で放置してある。松茸山でもなく密猟が来ることも無い。そんな裏山で、ぼっちキャンプを楽しむのが俺の趣味だ。


 東京に旅立つ日が近づいてくると、今までお世話になったこの山が無性に恋しくなった。だから今日、高校生活最後のぼっちキャンプを決行することにした。


 今は、ひたすら奥地を目指し歩き続けている。


 高校生活最後にふさわしいキャンプ場所は...なかなか決められない。


 やばい!本当に日も傾いてきた。そろそろ寝どこを決めないと。そんな焦りが出たのか、岩肌に足を取られてしまった。


「うわー!」


 斜面に生えている草や、むき出しの岩や木の根っこに身体をぶつけながら、5mほど下まで転げ落ちてしまった。


「あいたたた...」


 不幸中の幸いなのか骨などに異常は無い様だ。全身擦りむいたけど、骨折や打撲などの痛みではない。手足も動く。ただ、ジーンズがダメージジーンズになってしまった。母ちゃんに怒られそう。


 山肌に木々の根が(アラ)わになり、岩もむき出しである。そんな場所から転落しても、大きな怪我をせずに済んだことに、まるで他人事のように感心してしまう。


 しかし、感心している場合ではない。行動を起こさなければ。


 元の場所へ登ろうとしたその時、右手に見慣れぬ洞窟が現れた。


「あれ、あんな所に洞窟なんかあったか?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 この山に関しては、親父と小さな頃からうろつき回っている。親父は看護師として昼夜問わず働いているが、休日は裏山に入り、「鍛錬(タンレン)だ!」と山を駆け回るトレイルランニングオタクである。


 ひたすら山中を走り回り、疲れると山草をちぎって持ち帰って来る。


 妹の(ユメ)は親父が山に入ると、「うわー!今日も山菜か。も―、お母さん!肉も出してよ!」と文句を言う。妹よ。あまり肉ばっかり食べると、兄と同じ体型になるぞ...。


 この山の隅々まで親父と共に走り回ったが、こんな場所に洞窟など、あった記憶は無い。


 ただ、目の前にある洞窟は、昨日今日で出来た感じではない。


「一応、洞窟の中を調べてみるか。親父に報告しないといけないし...」


 洞窟の中に誰かが隠れていたら怖いので、次に行う行動を口に出してみた。


 熊とかいないよね...。


 恐る恐る洞窟の中を覗いてみると、奥行きと高さが共に約5mのこぢんまりとした空洞があった。熊の姿はなかったが、三体のお地蔵様が互いに寄り添うように置かれていた。


 三体とも表面が苔に覆われており、相当古いもののようだった。長い間、誰の目にも触れずにいたのだろうか?何となく申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。


 大きめの葉っぱでお地蔵様の表面の苔を取り除いた後、使い古したタオルで申し訳ないが、表面を念入りに拭いた。そして、ポケットに入れておいたチョコレートを三つに分けて、お地蔵様にお供えをした。


 ふぅ~、何とか掃除が終わった。手持ちが無くてすみません。また親父と一緒に掃除とお供えに来ます。


 手を合わせ心の中で祈ると、三体のお地蔵様が突然ピカッ!と急に光り輝いた。


 な、何だ、爆発するのかと思い、とっさに洞窟から逃げ出そうとしたその時、お地蔵様が突然俺に向かって話しかけてきた。

読んでいただき、ありがとうございます。


もしよろしければ、ブックマークや☆評価で応援していただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ