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「こんな傷だらけじゃ、ミオ様に心配されちゃうなあ……こんな私なんていなければ……ミオ様にも迷惑かけないのに……」
『いなければなんて言わないで』
またあの声?が聞こえたけど誰なんだろう?なんかとっても優しい声だった気がする。心がぽかぽかする感じ。
しばらくすると私の部屋に姉上様のメイドが来て「うわあ、ぼろぼろ〜きゃはっ!カラ様から庭の草むしりをするようにだって〜」と私のぼろぼろの姿を見てきゃはきゃは笑いながら言った。姉上様のメイドは私の返事を聞かず足早に出ていった。
「ミオ様に見つからないようにしなきゃ」
この屋敷の人達は私を人と思っていないからなのもあって道具類は貸してくれない。だいたい「道具が道具使うって可笑しくない?」と言われお願いを無視される。私が今住んでいるティアンダラ王国は愛人の子は道具、人以外も道具という風潮がある。でも、全員が全員そう思っているわけではない……ミオ様のような人たちもいる。
草むしりはどれだけやっても終わらない……だって、どれだけやっても魔法で雑草をはやされるから。庭師が魔法を掛けたんだろう。雑草を生やす魔法は、初級だから誰でも出来るから……私はソラティアがいないから出来ない。ソラティアがいないと魔力があっても魔法を使えないのだ。
「辛いなぁ……」
頑張っても頑張っても草むしりは終わらず雨が降ってきた。
周りでこの屋敷のソラティア達が私を見ている。私は不思議とソラティアに愛されているみたい。以前使用人の人がソラティアで私を攻撃しようとしたら、攻撃されず私を庇おうとしていたから。私が何で他の人たちのソラティアに愛されるか分からないけど……。
「……誰か、た、……」
私には助けてくれる人なんかいないのに……ミオ様達には迷惑は掛けれないから言えない。
私は雑草を抜きながらぽろぽろと泣いてしまった。でも、雨で泣いていると気づかれないのが不幸中の幸いだ。私が泣いていると分かると、この屋敷の人達は私を嘲笑うのだ。
『待っていて。もうすぐだよ』
またどこからともなく聞こえたけど誰の声なのだろうか?もうすぐとは何のことなのだろう?何か起こるのかな……。
あ、あれはミオ様の馬車……てことは帰ってきたのかな?どこか出かけてたんだ。見つからないよう気をつけなきゃ。
最近ミオ様はどこかに出掛けることが多いけどどうしたのだろうか?以前は屋敷から出ることはあまり無かったのに。
「ナナ?!!!!」
ミオ様に見つかってしまった……なんでバレてしまったのだろうか。見つからないよう気をつけていたのに。
「ナナ!ずぶ濡れで何しているんだ?!それに何でそんなに怪我だらけなんだ?!!部屋から出ないようにと言ったのに……もしかして?!」
「ミオ様気にしないで下さい。私なら大丈夫、です」
「大丈夫な訳ないだろ!!……僕に力がないから……決めた」
やっぱり私のこんな姿を見ればミオ様はご自分を責めてしまうからそうならないよう気をつけてたのに……。雨は止んだからとと言っても、雨で地面はぐちゃぐちゃで泥も凄いのに庭に来るなんて。
「ミオ、そこで何をしている跡取りが愛人の子なんかに触るな」
久しぶりに父上様を見た気がする。父上様は私を見ないよう避けているから顔を見合わせるのはあんまりない。たまに私を殴りに来るだけだから、こうやってしっかり顔を見たのは初めてかもしれない。
「父上!!!なぜ!なぜ!!ナナのっ……」
「ナナ?そこの道具の事か?道具に名前なんかつけるな」
「……父上……僕は決めました。僕はナナを連れてここを出ていきます」
「ミオ様?!」
最近ミオ様は何か考えているようだと思ってはいたけどこんなことだとは……。