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「入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼致します。」
マタナリオン様は何の用でこんな殺風景の部屋に来たのだろうか?私の部屋なんて薄汚れた机とベットしかないのに……。
「私の部屋に何の用ですか?」
「ミオ様からの伝言です。明日は部屋から出ないようにとのことです。」
「そうなんですね。」
何で部屋から出ない方がいいのかな?でも、お仕事どうすればいいのかな?義母様や姉上様から絶対あれしろ、これしろって言われると思うのに。
「カラリア様の御友人が来られるそうなのです。ミオ様は、またナナ様が痛めつけられないよう伝えて欲しいと私にご命令されました。マリシャーヤ様たちには離れの倉庫の掃除を命じたとミオ様が伝えるので大丈夫です」
「ほんと……ミオ様はお優しい……」
「……すみません。お助け出来ず……」
「ミオ様付きの人達は本当にお優しいですね。貴方はミオ様付きの護衛騎士です。だからミオ様に害のあることをしてはならないのは分かっています。私は大丈夫です」
マタナリオン卿はしゅんとしながら「失礼致します」と言って私の部屋から退出して行った。
こうやって私を心配してくれる人がいれば私は私でいれる……だから、大丈夫。
朝起きると少しお屋敷がガヤガヤしてるような気がする。きっとお茶会の準備や姉上様のドレスの準備でガヤガヤしているのかな。
「することがない」
私の部屋は机とベットとクローゼットしかない。クローゼットに至っては、ボロボロのメイド服とボロボロの寝間着しか入ってない。
「コンコン」と私の部屋がノックされたけど誰が来たのかな?
「はい。誰ですか??」
いつまで経ってもお返事はなかった。何で??私の部屋に来る人なんてあんまりいないのに。
気になったのでドアを開けてみると、ミオ様のソラティアのゼオンがいた。本来の姿より小さくなっていて子馬の姿になっている。
「あれ?ゼオン?どうしたの?」
「ぶるるるぅ」と小さく鳴き私に擦り寄って来た。やっぱりソラティアって可愛いなあ。羨ましいよ……。
「ミオ様が心配して来たのかな?」と言うと、ゼオンは頷き部屋に入るよう押してきた。
「ゼオンは本当に綺麗な鬣としっぽをしているね」
ゼオンは嬉しそうに小さく「ヒヒン」と鳴いた。
「そうだ!ブラッシングしてあげるね!」
私は机の中からゼオン用のブラシを取りブラッシングを始めた。
「綺麗だね」、「サラサラだね」、「可愛いね」と言ってると急に外が騒がしくなった。
「……姉上様達がこっちに来た?……ゼオンごめんね。このクローゼットに入ってて。何があっても何が聞こえてもクローゼットから出ちゃ駄目だよ?ミオ様に迷惑を掛けたくないから」
ゼオンをクローゼットに入れて扉を閉めた。ゼオンは何かを訴えるように感じたけど知らんぷりをした。
「バンッ!」と私の部屋の扉が乱暴に開いた。
「ここにいたのね」
「ミオ様が言ってたのとは違う所にいましたね」
姉上様とそのお友達と執事がいた。ここには来ないと思ったのに何で私の部屋に?
「ミオの命令を背いたんだからお仕置しなくちゃね?」
「そうですね!」、「命令を背いたんですから当たり前ですわ」と色々姉上様のお友達が言ってきた。でも、それはどうでもいい。ミオ様の迷惑にならないようにしなくちゃ……それに、ここにゼオンがいるのをバレちゃいけない!
姉上様は執事に私をお仕置するよう命令を下した。
「欠陥品」、「出来損ない」、「愛人の子のくせに」、「早くいなくなれ」と言われながら私が気を失うまで殴る蹴るをされた。
起きると姉上様達はいなくゼオンが涙を流しながら私を舐めていた。
「良かった。ゼオンはバレなかったみたいだね。ミオ様に迷惑掛けたくないもん……ゼオン我慢してくれてありがとう。また姉上様達が来るかもしれないからミオ様の所に戻って……私は大丈夫だから」
ゼオンは何回も振り返りながら私の部屋を出ていった。
「体中痛いや……はは……」