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「このクズ!階段を隅々まで掃除しとけって言ったでしょ」
「言われたことも出来ないの?ノロマ!」
「申し訳ありません」
いつもこのような似たような会話をする。
私を叱ったのは義母様のマリシャーヤ様、ノロマと言ったのは姉上様のカラリア様。義母様と姉上様は赤い髪色なのに私は黒髪。私も赤か父様の色の茶髪だったら愛されたのだろうか?私の黒髪は実の母親と一緒だと以前父様が仰っていた。私は実の母の顔を覚えていない……義母様から私を産んですぐ捨ててどっか行ったと言われたからだ。そして、ここまで私が酷く扱われるのにはもう1つ理由がある。それは、私にソラティアがいない事だ。
ソラティアとは産まれた時に手に握られている、宝石から産まれる生き物のことだ。
私は宝石を持って産まれず、愛人の欠陥品だからここまで蔑まれるのだ。義母様のソラティアはリスで姉上様は白い小鳥なのです。私もソラティアが居てくれればここまでこうなってなかったのかな?
「名無し!倉庫も掃除しておくように!」
「あ、もちろん?終わらない限りご飯は無しね〜?」
義母様と姉上様は笑って階段を登られて行った。
私はご飯無しが多いせいで、11歳なのに6歳にしか見えない。
「ソラティア……」
私のソラティア……本当に私は宝石を持って生まれなかったのだろうか……いや、事実から目を背けてるだけ、か。
「ナナ」
「はい?」
私をナナと呼ぶのは姉上様の弟であり私の兄上様のミオンラ様だ。兄上様も赤というより真紅の髪色だ。はっきり言ってしまうと義母様や姉上様よりとても綺麗な髪色をしている。
「また母さんや姉さんに虐められたんだね。ごめんね……僕に力がないから助けられなくて……」
「そんなことありません。ミオ様はそうやってお優しいお言葉を下さいます。それだけで私は救われているのですよ?それに私を庇ってミオ様が悪く言われるのは私は嫌です」
「いつも君はそう言うね。もっと僕に力があれば……」
ミオ様は14歳なのに私の力になってくれようとする……けど、ミオ様の立場が悪くなるかもしれないから助けてくれようとしなくて、いいのに。以前「名無しは酷いから名前を付けよう!」って言ってくださったけど断った。だって、ミオ様が名前をつけたとバレたらと考えると……。
「ミオ様……私は掃除に戻りますね」と言って倉庫に走って逃げた。
クゥキュルルルとお腹がなってしまった。1週間位まともに食事も出来ていないから当たり前だ。3日に1回硬いパンが出ればいいくらいなのだから。
「おなか、すいたな」
倉庫の掃除が終われば今日はご飯を貰えるのだろうか?いつものように何かの葉が入ってるだけの味の薄いスープだけかな?1回でもいいから満腹になってみたい。「お腹いっぱい」と言ってみたいな……。
「君、ここのメイド?」と影から急に声をかけられた。
「………お兄さんここの屋敷に仕えてる人じゃない、よね?」
「おわ、質問に質問で返された」とケラケラと笑って目の前のお兄さんは言ってきた。
「私はここの子だよ」
「そんな格好でここを掃除してる子が?」
「悪いことをしたからお仕置でこの格好でここを掃除してるの」
「あ、そうなんだ〜。もう用は済んだから俺は行くね」と去ってしまった。
あのお兄さんに正直に話せば助けてくれたかな?でも、義母様から知らない人にあったらさっきのように言えって言われたし、もしバレたら今よりもっと扱いが酷くなるかもだから言えない。