3 土偶
僕は暗い洞窟の中にいた。
白い獣を追っているうちに、洞窟の中に迷い込んだのだ。
「亜月!」
見失ってしまった。
「でも、村の近くにこんな洞窟なんてあったか」
「ここは神界と人間界との境界じゃ」
見ると小人が前にいた。
「お前は誰だ」
「神界のゲートキーパーじゃよ」
大きな目、太い胴体、小さい手足、神に奉納するために土を焼いて造った人形にそっくりだった。
「に、人形が喋った」
「普段は人間とは話をしないが、お前はその七支刀をもっているからな」
僕は手にした刀を見た。
剣舞に使用していたが、亜月がさらわれて、そのまま持ってきてしまったものだ。
「その刀には特別な力が宿っておる」
「そうなんですか……」
「そんなものをもって、何をしに来た」
「亜月を取り戻しに来たのです」
「もしかして白寿が咥えていたあの巫女のことか」
「そうです」
「ふうむ」
土人形が考える仕草をした。
「お前はあの巫女の何だ」
何かと言われると何と答えていいのか分からなかった。
「亜月は僕の命より大事な人です」
「ほう」
土人形の目が開いた。
グロテスクな光を放っていた。
「面白い。ならば、俺が白寿のところまで連れて行ってやろう」
すると、突風が吹いてきた。
僕はその風に飲まれて、吹き飛ばされた。