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19ここは夢じゃない(ヒロイン目線2)

「王様に合わせてくれるかしら?」


 王城には門番がいた。さすが、王城って感じ。マジ卍。まぁ、私ならすぐ通れるだろうけど。それにしても、in☆にあげたいくらい映える城だ。


「失礼ですがどちら様でしょうか?」


 ぼーっと考え事をしていると、門番の嫌そうな態度に、イラッとした。何この人? どうしてそんな嫌そうな対応なの? 私が主人公よ? 話しかけられただけでも嬉しそうにしなさいよ。あ、そっか私がわからないからないのね。アンジェは特別な人にしか見えない設定だし。


「聖女様よ」


「はぁ…?」


 頭のおかしいものを見る目がさらにイライラする。モブの癖に、私の夢の中の住人の癖に生意気すぎよ。


「いいから会わせなさいよ!!」


 門番に向かって大声でそう言っても門番の態度は相変わらずで、開けてくれそうにない。


「アンジェ…どうにかして!!」


「ピーー!!」


 思わず鳥のアンジェに助けを求めるとアンジェが光り、私の姿を照らす。すると門番が焦りだした。


「こ、この光。そしてお姿…。も、申し訳ございません。夜でしたので髪の色などが見えず失礼な態度をとってしまいました。」


 確かに東京みたいにどこかしこも光ってるわけではなかった。だからってこの神々しさがわからないのかしら? ヒロインよ?


「まぁいいわ。速く王のところへ連れて行って」


「か、確認を取りますので少々お待ち下さい」


 すぐにではない所はムカつく。けどまぁ、この態度には満足だし…。


「いいわ。早くしてよね」


「は、はぃぃ」


 門番は走っていく。それを目にしてウンウンと満足しながら私はアンジェをなでてあげた。


「よくやったわ」


「ピピッ」


 ふふっ。私の姿を見たら誰もがひれ伏す。王子候補達のハーレムで楽しく過ごすのもすぐね。



✽─✽─✽─✽─


 確認が取れましたと、案内される。思ったよりイケメンね。ゲームではちらっとしか出てこないモブだから期待してなかったのに。


「見事な黒。其方が聖女であるか?」


 見てわからないのかしら?この美しさが?


「この世界に先ほど来たのでわかりません。でもこの鳥がここに来れば良いと教えてくれたのできました。」


 私はあたかも急にここに来たいい子に見えるように少し涙目で王を見上げ、アンジェを指差す。


「おぉ、その鳥は! 下賤のものには見えず、魔物にはない真っ白な色。しかし、白い悪魔達と違って魔法が使える。まさしく奇跡の象徴。女神の使いではないか!」


 女神の使いは聖女を連れてくると目の前の男。もとい王様は大喜びしている。とりあえず、ゲームの設定では知っているが、とりあえず今知りました風を装っておくか。王といえど私の踏み台。イケメンハーレムへの階段だし。


「女神の使いってなんでしょうか? この鳥がいることで私は聖女というものになったのでしょうか? 急にこの世界にきたので、怖い」


 どうよ、この涙まで流せる演技力。自分が怖いわ。上手く、王様には取り入れたし、次は各王子様ね。でも、少し不安がある。このゲームの主人公は高校生のはずなのに、私は…。まぁ、所詮夢だしね。でも夢なら気を利かして高校生の見た目にしてくれればいいのに。


「さて、聖女よ。年はいくつだ?」


「年? 14よ。早生まれだし」


「今回の聖女はずいぶん幼いのだな」


 幼いって失礼じゃない? これでも学校では大人っぽいって言われてるのよ。夢の住人のくせに私に幼いって。失礼な王様は祈りだした。



「女神よ、幼子を戦いにだせとは余りにも残酷ではないだろうか」


 戦い? 行くわけないじゃない。夢なんだから王子と会ってイチャイチャして覚めるわよ。チュートリアルの戦いでさえ嫌よ。



「あの? 戦いに行く気はありません」


「そなたは聖女だろう? 無理にでも行ってもらうぞ。 代々の聖女達にもそうしてもらった」


 王様の目にドキリとした。ここ、本当に夢? 何かがおかしい。もうすでに怖くなってきたので夢ならば覚めてほしい。しかし、いくら願っても何も起こらない。


「代々の聖女はどうなったの…?」



「戦いの中で死んだ。 中には日本に帰りたいと泣き自ら命を絶ったものもいる」


「そんなの絶対いや」


 確かにあのゲームは死もあるアクションありのゲームだったけど、夢なはず。私の思い通りに事が進まない事に焦りと絶望を感じる。隣のアンジェさえも死神に見える。


「お、おかしい…ここは私の夢の中でしょう?」


 本当に夢の人物だとしても肯定するはずがないとわかっている。だけど聞かずにはいられなかった。


「夢? 何を言っている?」


 嫌だ。嫌だ。嫌だよ。帰りたい。戦いになんて行きたくない。私が何したの? 悪いことなんてしてない。ちょっとスマホ見ながら歩いていただけじゃない。堪えられず涙が出てきた。そんな私に対して優しい声をかけるものなどいなかった。


「私、嫌だよ…」


そう言って王を見上げても帰ってきたのは冷たい目だった。隣のアンジェも何が嫌なの?と言うように首をかしげている。


 理解した。ここは夢なんかじゃない。地獄だと。日本で中学2年になるを待っていた春休みに茉里奈は地獄に来てしまったのだ。それがどれだけ酷かはわからない。物語の選択を間違えれば死ぬ事もあるアクションストーリー。まだ幼い少女が受け入れるにはあまりにも残酷で──。


✽─✽─✽─✽─



「マリーナはまだ出てこないのか?」


「えぇ、陛下。しばらくかかるかと」


 マリーナこと、茉里奈がお城の部屋に閉じこもり半年以上が過ぎようとしていた。


「仕方ない。マローネを呼べ」


「マローネ様を?」


「あぁ。子供の扱いは同じぐらいの子供が一番わかるだろう」


 こうして、茉里奈とマローネが関わるのだが、それはまだ未来の話。ときは戻りてリディアは今──。

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