7 貴族の嗜み
「ヴァイス様はダンスは踊れますでしょうか?」
メガローネ先生は5時間の説教の後、ふぃにそう聞いてきた。ゴブリンをちょっと置いたぐらいでそんな怒らなくても良いだろ。
「全く?」
悪びれもなく答える。あ、顔が引きってる。踊れないとまずいのかな?
「貴族にはパーティーがよく開かれます。そこで踊れないのは恥ですよ。練習しましょうか」
俺の手をメガローネ先生は取る。流れるように踊るが、もちろん足を踏みまくる。
「ご、ごめんなさ」
「最初はそんなものです」
1曲分踊るまでにメガローネ先生の足は何百回と踏まれていた。痛くないのか?
「痛くないのですか?」
「ふふっ」
メガローネ先生は俺の腰に手をやると、グイッと引き寄せる。もう一曲やるらしい。…さっきから俺が女子パートなのは気のせいだろうか?
「得意魔法は水なのですよ」
耳元で囁かれた。少しくすぐったい。水だから何なのだろう?足元をよくよく見てみると氷の膜でガードされていた。つるつる硬いのは靴かと思っていたが…なるほど氷を踏んでいたのか。
「このように、スマートにこなして下さいね」
「はーい」
踊りたくないし、壁際でそっとしとこう。
「採点してますからね?」
ニコッと笑う。父と同じ水だからだろうか、綺麗だと思うが背筋がぞっとする。
「善処いたします」
これは…帰ったら練習せねば。
「踊れるよ」
「え?」
シュヴァもどうせ踊れないだろと舐めてかかっていた俺はシュヴァにダンスあるんだって、練習しなきゃなと言ってカウンターをくらった。
オドレル…? なぜ?
「う、嘘だ」
シュヴァは俺の腰に手を当て、スッと踊りだす。だから、なんで俺が女子パート!?
「う、うまい…だと…」
はっきり言って上手かった。先生よりはちょっと荒々しい感じだが、踊れている。もちろん足は踏みまくったが痛くなさそうだった。そもそもの造りが違うのだろうか…。
「学園に入る前に嗜みとして習った」
「誰から!?」
「ヴァイスの父」
初耳なんだけど…。
拝啓父様。
まずは俺に教えようとは思わなかったのでしょうか?
俺は今すごく困っています。人様の足を傷ものにしそうです。
「俺はヴァイス以外とは踊らないから別にいいけど」
「それは無理だろ男同士だし」
「双子は出来たって言ってた」
え、何してるのあの人達。そして、何ちゃっかり仲良くなってるの? いつの間に?
お前、ルイには今だに吠える態度なのに双子には尻尾降ってるのか?
「今年はヴァイスと踊るって言ってた」
ホントウニナニイッテルノ?
なんで、俺がいない所で進んでるのかなぁ?
「嫌だよ」
誰と踊るにせよ、できない仲間がいないのはわかった。…いや、待てよ。ツバキは踊れるとして、ルイは踊れないんじゃ…。よし、行ってこよ。
「もちろん踊れるよ?」
ここでも裏切られた。
「なんで!?」
「え…っと。秘密」
ルイは俺の腰に手を当てる。
「また、このパターンか」
「また?」
「先生とヴァイスも女子パートを踊らせてくるんだよ」
「ふーん」
先程まで、腰に手を当てる仕草はとても優しかったのだが、急に強引にグイッと引き寄せられる。荒々しいものに変わった。顔が近い。ドキッとする。
「ど、どうしたんだ」
「別に、それにいくら男装したってヴァイスは女の子なんだからしかたないよ」
ルイは俺の胸元をチラッとみた。確かに、抑えると分からないのだが、最近胸が少し育ってきている。今は貸切状態の寮の最上階なので、抑えてなかった。
「これな~」
と、胸を触るとルイは頭を抱えだす。どうしたんだろうか?
「頼むから、よそでやらないでね?」
「何を?」
はぁっとため息すらつかれる。どうしたんだろうか?
「あ、それより、ダンス! 頼むから男子パートやらせてくれ」
先生の採点厳しそうだしなんとかしなくては…。この時点で、仲間探しは諦めた。まぁ、そもそもルイは人前で踊ることなど、ほとんどなく、仲間にしても意味がなかったのだけど。…何故か皆踊れるし。
「僕は嫌かな」
はっきりと断られる。
「男子パートは譲らない。ヴァイスだけには特に」
そんなに対抗されるものだろうか??
「ルイ兄」
ガチャっと扉が開いてツバキが入ってきた。はっ!
そうだ、ツバキがいたじゃないか。女子!
「ツバキ!」
手を取り、目を見つめる。
「は、はい!」
俺は息をすって、勢い良く言葉を出した。
「俺とダンスの練習をしてくれ!!」




