6 ゴブリン退治
それはゴブリンの頭からずれて木に当たった。しかし、いつもの威力はなく、木に刺さるぐらいだった。
「なんで…?」
当てようとしても当たらない。ゴブリンがこっちに気づく。仲間はいないのか、1体で突撃してきた。足がうごかない…。怖い。生き物らしいものを殺すのが怖い。
「何してるの」
ゴブリンはシュヴァに引っかかれて、倒れた。足元に石が、転がってくる。なにか切ない気持ちになった。
「なぁ、シュヴァ…俺らってなんで魔物倒してるんだろう?」
「なんでって…」
「シュヴァは魔物でゴブリンとは仲間だろ!」
俺はシュヴァにあたる。スライムの時は現実味がなくて、でもゴブリンは喋って足で歩いて手で武器をもつ。人間と何が変わらないのか分からない。俺は倒せない。そもそも乙女ゲームにモンスター要素入れたやつ誰だよ…。
「仲間じゃない」
「え?」
「…俺は人食べないし…俺はヴァイスのパートナーだろ!」
シュヴァの目は潤んでいた。ゴブリンは人食べるのだろうか。
「そうだな。…ごめん。どうかしてた。ゴブリンが俺らに近い気がして…」
日本で動物を殺すのは食べるためだ。俺は自分のために無意味な殺生をしているのではないだろうか?
「近くないよ」
「え?」
「ゴブリンは人食べるし、駆除しなきゃ増えるよ? 邪魔だし、俺達魔物も定期的に狩る。だから一緒にされるのは不快」
あ、やっぱり人が食料なんだ。しかも、魔物もからも駆られてるんだ。ネズミみたいな扱いなのかな?
「それに、誰かを倒して強くならなきゃ。大切な人を守れない。だからゴメンって狩るの」
それが心理な気がした。ごめんって狩る…か。日本で嫌いな生物Gが出たとき俺は気持ち悪くて新聞紙で叩いていたが、謝ったことは一度もない。それができるだけこいつのほうが偉いのかもしれない。
「ありがとっ。どうかしてたよ」
俺は空に向かって1本矢を射る。それはいつもの矢で、調子が戻った事を知らせていた。しかし、それ以上に俺の決意であり、雲を割いて空まで登っていく。裂け目から三日月が見える。月も笑っている。俺の心も晴れやかだった。
矢の光に釣られてゴブリンだけでなく様々な動物が寄ってきてる。俺は木に登り息を潜める。
スーッと吸って…止める!
ーッパァン。
「やったね」
横でシュヴァが微笑んだ。
「これからだろ」
火蓋は切られた。仲間の1人が殺られたことで、ゴブリンがらギーギーと100あまり向かってくる。不思議ともう怖くは無い。シュヴァに後ろ向きでのり、次々と矢を放つ。先程までのが嘘のようにあっという間に片付いた。
「手伝ったら駄目じゃなかったの?」
「乗り物は別だろ」
ニッと顔を合わせると、おかしくてたまらなくなった。それは、シュヴァもだったようで笑う。
「さて、数えるか」
「138」
「え?」
「矢の数。もう外してないだろ」
走りながら数えてたのか。シュヴァは暇だったしっと言って笑っていた。さて、これを先生に届けるか。
「だいぶ暗いなぁ…?」
「そうだねぇ」
眠っているかもしれない。しかたないか…。もしもを考えて、起こさないように、先生の部屋の前に血まみれの袋をそっと並べることにした。もちろん手紙も添える。
「ただいまー」
「ヴァイス様! どこに行ってらしたんですか! 皆様、心配して探してたのですよ」
「先生に特別課題を…」
「言い訳は後にして下さい! 皆様を呼び戻しますので、たっぷり叱られて下さいね」
…課題こなして叱られるって何の罰ゲーム?
俺の訴えも虚しく、書き置きも伝言もしなかった俺が悪いとタップリ3時間説教をくらった。
…かごめかごめ状態でしなくてもいいじゃんー!!
本日のせいか→レベルUP3オプション説教。現在Lv18。
次の日、メガローネが扉を開けると、そこには血まみれの袋があり、手紙が添えられていた。
『ミッションコンプリート』
…ワナワナと肩が震える。
「ヴァイス様ーーーー」
それは学園でメガローネが初めて叫んだ日であり、ヴァイスの説教が追加されたのだが、達成感で気持ちよく眠っているヴァイスは気づかなかった。
説教オプション5時間追加。




