8 決戦に向けて
そして、一週間が過ぎた。
今日は隊長会議の日だ。
「間諜の報告によれば、帝国軍はモールド平原に集結しつつあるという」
ブラムス総隊長が俺たち各隊長に告げた。
「帝国の各騎士団や補給部隊の動きから、大軍を持って我が国への進軍が始まると思われる」
「総攻撃、ということですか?」
「だろうな」
リーザの問いにうなずく総隊長。
「ヅェルセイルのように魔神が出てくる可能性は?」
これは俺の質問だ。
「今のところ、魔神が動いたという報告はない。が、魔神は帝国にとって最重要の機密兵器といっていい。出てくるかどうかは、何とも言えんな」
ブラムス隊長が答えた。
「ともあれ──奴らに対しては、当然こちらも全軍で迎え撃つ。今までにない一大決戦となろう。敵の動きから見て、会戦はおそらくひと月後──それまで各自で英気を養いつつ、備えてほしい」
一大決戦……か。
俺はごくりと喉を鳴らした。
相手が大軍とはいえ、今の俺なら次々に蹴散らしていく自信がある。
さすがに数が多すぎれば、俺一人で相手をするわけにはいかないだろうが……。
ただし──相手が人間だけならば。
あるいは、魔神が出てくることはあるんだろうか。
それによって、戦いの厳しさは天と地ほどの差になるだろう。
「我ら聖竜騎士団は王国最強だ。その自負と責任、使命感を持って、今作戦に当たる。いいな」
「はっ!」
総隊長を除く全隊長の声が唱和した。
もちろん、俺も。
──実際に魔神が出てくるかどうかは分からない。
ただ、備えはしておこう。
「ちょっといいか、マリウス隊長」
去り際に総隊長から声をかけられた。
「なんでしょうか?」
「今回は特に君の活躍が重要だ。今まで以上に──いや、今までと比べてもはるかにな」
普段にも増してプレッシャーをかけられている気がする。
「おそらくは、帝国も魔神を投入してくるだろう」
「彼らは今まで魔神を戦線に投入することに消極的だったんですよね? なぜでしょうか」
以前からの疑問だった。
「これまでに出てきたのは、魔神ヅェルセイル一体だけ。まだ十六体の魔神が温存されている状況です」
「理由は不明だ。魔神を使役するには何か代償があるのか、あるいは制約があるのか……帝国の中で、何か事情が変わりつつあるのかもしれん。我らもいっそう気を引き締めなければならん」
と、総隊長。
「あるいはすべての魔神を投入してくることも考えられる。そうなったとき──君は勝てるか、マリウス隊長?」
鋭い眼光が俺を見据えている。
「単体であれば……そして、この間のヅェルセイルと同レベルの相手であれば、なんとか勝てると思います。ただ複数で連携して来られると厳しいでしょうね。私自身がもっと強くならねば……」
答える俺。
「それに──他の魔神の強さは不明です。ヅェルセイル以上の者がいるのか、あるいはもっと弱いのか。いずれにせよ、私一人で十六体に対抗するのは難しいでしょう」
もっと──もっとレベルを上げる必要がある。
魔神の経験値は魔獣や帝国軍と比べてもけた違いに多い。
一体倒すごとにかなりレベルを上げられるはずだ。
この間のヅェルセイル戦で出てきた『魔血操兵』のような敵を大勢倒すことができれば、労せずしてレベルアップできそうだが……奴らも警戒してくるかもしれない。
「簡単な戦いにはならない、ということだな」
「はい」
「君はミランシアの要だ。いざとなれば、いかなる犠牲を払っても君だけは生かす。無論、この私も──君のためなら、命を投げ出そう」
「総隊長……」
「どうか、自分の価値をわきまえてくれ。君は戦局を左右する存在だ。絶対に死ぬな」
総隊長が俺を見つめる。
「これはすべてに優先する命令だ。いいな」
「……承知しました」
いかなる犠牲を払っても、か。
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