2 隊長会議
王都に戻った俺たち十二番隊は、民衆から歓迎された。
なんといっても、完全勝利である。
「あれが最強と名高いマリウス隊長よ」
「素敵……凛々しいわ……」
「ちょっと年上だけど、いいなぁ」
などと、年ごろの少女たちらしき声が、ちらほらと聞こえる。
一介の村人だったころは、考えられない反応だ。
とはいえ、俺もこういう反応にはだいぶ慣れてきた。
会釈を交え、悠然と手を振ってみせる。
「きゃあ、こっちを見てくれた!」
「マリウス様ぁ!」
たちまち湧き起こる歓声。
「すっかり大人気ですね、隊長」
ウェンディが微笑みかけた。
「まあ、こういうのはあまり柄じゃないが……」
「隊長、この後は隊長会議があるのでしたね」
ジィドさんが話しかけてきた。
「隊舎に戻りましたら、後の仕事は私がやります。隊長は会議に向かってください」
「助かります」
そういえば、すぐに会議だったことを思いだす。
ジィドさんの方が俺のスケジュールを正確に把握しているんじゃないだろうか。
本当に助かる。
俺は隊舎に戻るなり、ジィドさんに後のことを任せて、会議場にやってきた。
円卓に十二の椅子が並べられた大ホール──ここで隊長会議が行われるのだ。
まだ時間前なので、席についている者は少なく、雑談タイムといった感じだった。
「マリウス、今回もすごかったみたいだな」
リーザが話しかけてきた。
「魔神との戦いでだいぶ成長できたみたいだ」
と、俺。
「私も聖剣の力でかなり戦闘能力が上昇したが──それでも、君にはとてもかなわないな。いや、むしろ以前よりも差が開いている」
リーザはため息をついた。
「まだまだ。俺はもっと強くなるつもりだ」
「マリウス……?」
「誰にも頼らずに、俺一人で戦局を切り開けるレベルを目指して、な」
「はは、さすがにそこまで強くなったら、もう人間じゃないだろう」
俺の言葉を冗談だと思ったのか、リーザが微笑む。
「君一人に頼りっきりではいけない。私も、もっと強くなるよ」
「あらあら、仲がいいわね」
今度はドロテアが話しかけてきた。
「リーザにもやっと春が来たみたい。おめでとう」
「ドロテア隊長、その話はいいですから」
「照れちゃって。可愛いわね」
「照れてませんし、私は可愛くなくていいです。優れた騎士でさえあれば」
「美人なのにもったいない」
この二人こそ、あいかわらず仲がいい。
今の掛け合いもじゃれ合っている感じがして、俺まで和んでしまう。
と、
「マリウス卿」
一人の女騎士が話しかけてきた。
長い金髪を巻き髪にした、気品のある美人だ。
「あまりお話する機会がありませんでしたわね。わたくし、七番隊隊長ジュリエッタ・ドールマンと申します。以後、お見知りおきを」
「十二番隊隊長、マリウス・ファーマだ」
「よく存じておりますわよ。卿を以前より何度か遠くから見つめることはありましたが……近くで見ると、ますます素敵ですわね」
はふぅ、と妖しい吐息をもらすジュリエッタ。
清楚な容貌ながら、その雰囲気には妖しい色香が漂っていた。
「……そいつはどうも」
「今度ゆっくり話しませんこと? わたくし、あなたにはとても興味がありますの」
「光栄だな。いずれ時間があれば──」
「みんな、そろっているようだな」
ブラムス総隊長が入ってきた。
年齢は五十絡み。
王国最強と謳われる歴戦の猛者である。
場の雰囲気が一気に引き締まった。
「これより隊長会議を始める」