1 砦奪還
砦内の残存兵はおおよそ二百ほどのようだった。
残りは俺の【破軍竜滅斬】で消し飛んだのだ。
「ひ、ひいいいいいっ、化け物だぁぁぁぁぁっ!」
「殺されるっ、殺されるぅぅぅぅぅっ!」
奴らはすでに戦意を失っていたらしく、俺が砦内に踏みこむのとほぼ同時に逃げて行った。
結果的に、俺一人で砦を奪還した形だ。
「隊に合図をするか」
「だね」
うなずいたのは、メル。
魔神ヅェルセイル戦で俺がレベルアップするのに応じて、彼女は一定時間この世界に実体化することができるようになった。
今の彼女は、普通の人間と同じく肉の体を備えた存在だ。
俺は砦の上から狼煙を上げた。
あらかじめ決めておいた、俺と隊員たちとの合図である。
俺が単騎で敵を蹴散らし、砦を制圧したことを示す狼煙だった。
ほどなくして、十二番隊がこっちに向かってくる。
先頭にいるのは副隊長のジィドさん。
ウェンディやサーシャ、クルス、ジュードたちの姿もある。
「お帰りなさい、隊長! すごかったですね~!」
「たった一人で敵軍を蹴散らすなんて……」
砦の外に出ると、ウェンディとサーシャが真っ先に駆け寄ってきた。
「お疲れさまでした、隊長」
さらにジィドさんも。
少し離れた場所では、
「……以前にも増してとんでもない強さだな」
「はは、追いつくのが大変だな、クルス」
「追いつく? ふざけるな、いずれ追い抜いてやる」
「志は高く、か。いいね」
「当然だ」
と、俺をにらむように見ているクルスと、飄々としたジュード。
「さすが隊長だな……」
「たった一人で砦を奪い返すとか、マジか……」
「さすがに人間やめてないか、この人……」
などと、ざわめく隊員たちの声が聞こえる。
なんだか人外扱いされてるような気がするが……。
まあ、彼らが誰一人傷を負うことなく、今回の戦いを終えられたのは良かった。
まさに無血の勝利、だ。
「じゃあ、帰るか」
俺は隊のみんなに告げた。
「はーい、ボクたち何もやってないけど」
「そうね。あたしももうちょっと活躍したかった……」
「だよねー」
「ええ」
と、ウェンディとサーシャがうなずき合っている。
確かに、結果的には隊全体で来る必要はなかったわけだ。
とはいえ、俺一人の力で砦を奪還できるかどうかは、実際にやってみなければ分からない。
それに戦場には不測の事態がつきものだ。
今回は運よく、そういった『想定外』はなかったが──。
「お前たちが後方で控えてくれていたから、俺も安心して戦えた。あらためて礼を言う──ありがとう」
嫌味にならないよう気を付けながら、俺は隊員たちに一礼した。
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