16 経験値取得
「やった……か」
肉片をひたすら切り刻む地道な作業の後、ヅェルセイルは──その肉片はもはやピクリとも動かなくなった。
やがて、それらは灰となって散っていく。
魔神ヅェルセイルの最期だ。
『魔神×1との戦闘に勝利、経験値45000を取得しました』
『スキル効果により経験値45000000として取得されます』
『総合経験値が622114000→667114000になりました』
『術者のレベルが333→341に上がりました』
『次のレベルまでの必要経験値は残り5440400です』
そうか、ヅェルセイルを倒した経験値が入ったんだな。
魔血操兵の経験値と合わせ、今回の戦いで俺はレベル178から341へ──大幅にパワーアップしたことになる。
と、
「──おじさん」
メルが、そこに立っていた。
白いドレスをまとったような姿だ。
「メル……」
基本的に彼女は【破軍竜滅斬】を使うときにしか現れないはずである。
「どうして……?」
「おじさんのレベルが上がったおかげだね。あたしもある程度は実体化できるようになったみたい」
微笑むメル。
たぶん俺のレベルが一定数値以上になると、そういう『特典』があるんだろう。
「ずっと現世にいられるわけじゃないけど、時々は会えるね。おじさん」
「そうか……」
俺としてもメルと会える機会が増えるのは嬉しい。
「彼女は、誰だ」
リーザが怪訝そうにこちらを見ていた。
「何もない場所から突然現れたように見えたが……」
「……メルが見えるのか、リーザ?」
「ん? もしかして、おじさんの恋人?」
メルの表情が険しくなった。
「違う」
リーザはクールに言い放つ。
「なーんだ、よかった」
「なんで、お前がホッとするんだ、メル」
「え、だって……」
なぜかメルが頬を赤らめている。
「……そうだな、リーザには言っておくか。彼女の名前はメル。俺のスキル【破軍竜滅斬】の導き手──まあ、スキルに宿る精霊みたいなものだ」
「精霊……」
リーザがつぶやいた。
「私の聖剣に宿るアストライアみたいなものか」
「役割は違うかもしれないが、似たような感じだな」
「……綺麗な人。おじさんを取らないでね」
メルがなぜかリーザをにらんだ。
それから、見せつけるように俺の腕にしがみつく。
「そうだ、今度デートしようよ、おじさん」
「デート? メルとか?」
「いいでしょ。あたしが実体化できた記念」
「まあ……非番の日ならいいぞ」
「やったー!」
「……随分と仲がいいんだな」
つぶやいたリーザの表情が、かすかにこわばっている気がした。
一体、どうしたんだ?