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2 スキル勝負

 どうやら俺のことは、おおむね好意的に受け止められているようだ。

 そう思った矢先、


「みなさん、随分と和やかですね。悔しくないんですか? ポッと出のおっさんが隊長なんて」


 辛辣な声が響いたのは、そのときだった。

 振り向くと、そこには三人の男女の姿。


 いずれも二十歳前後だろうか。

 そして、いずれも美形の男が一人と女が二人。


「あんたが新しい隊長さんですか。俺はエドモンといいます。お見知りおきを」


 三人のうちの男の騎士が俺をねめつけた。

 その表情には、明らかな敵意が浮かんでいる。


「一か月前までただの農夫だった人が、いきなり隊長に指名されるなんて……よっぽど実力があるんでしょうね」

「何か汚い裏工作でもしていないなら、の話ですが」


 女二人が俺のことを汚いものでも見るかのように一瞥する。

 彼女たちも、俺に敵意むき出しだ。


 ……三人とも俺を歓迎していないようだな。


 まあ、ある程度は予想していた。

 いきなりの大抜擢で反感を持つ者もいるだろう、と。


 ただ、隊員たちが十数名集まっている場で、ここまであからさまな態度を取られるとは思っていなかったが。


「よろしく頼む」


 初対面で険悪なムードにはなりたくない。

 俺は他の騎士に対するのと同じように礼を返した。


「エドモンさん、それにジネットさんとカリナさんも。隊長に向かってそういう口のきき方はいけませんよ」


 とりなすジィドさん。


「……失礼しました」


 三人が俺に対するのとはまったく違う、かしこまった態度で頭を下げる。


「だけど、やっぱり俺は納得できません。聖竜騎士団は選ばれた騎士たちの集まりでしょう。ここに入るために、みんな血のにじむような努力をしてきたんだ。臨時の兵士採用ならともかく、上位の席次に任じられるのは、そういう人ばかりのはずです」

「なのに、この人は──農夫上がりで、しかもたった一か月で隊長就任なんておかしいですよ」「たとえば、ジィドさんが隊長に就任できるなら納得できますが。やっぱり裏工作でもあったんじゃないかと勘繰りたくなります」


「そこまでです。マリウスさんの隊長就任は隊長会議で決まったことですし、王命です。裏工作など憶測にすぎません」

「じゃあ、憶測じゃないって証明してくださいよ」


 エドモンの視線がふたたび俺に向けられた。


「隊長に任命されるなら、それだけの実力をもっているんですよね?」

「たとえば、強力なスキルを使えるとか」


 女騎士二人──ジネットとカリナが続ける。


 俺は今までの戦いで格闘、防御、武器、魔法と各種スキルをいくつか習得していた。

 それを披露すれば、三人は納得するだろうか。


「この先に鍛錬場があります。見せてくださいよ。あ、なんなら俺と比べてみます?」


 と、エドモン。


「比べる?」

「どっちの威力が上か──隊長なら俺なんかより、ずっと威力が高いスキルを撃てますよね?」


 気がつけば、他の騎士たちもいちように俺を見ていた。


 ある者は心配そうに、あるいは興味深げに、そして俺を値踏みするように。

 他の部下の手前もあるし──力を示しておいたほうがいいだろう。


「分かった。お前が望むならそうしよう」


 この手の輩には、実力を見せて納得してもらうしかない。

 俺はそう判断した。




 俺たちは訓練施設に移動した。


 その中で、攻撃スキルの訓練用に作られた部屋に入る。

 広大なホールには破壊力軽減の魔法が何重にもかけられ、威力の高い攻撃スキルでもある程度安全に使用できる設計になっていた。


 俺たちの勝負は、とある的に対してそれぞれが攻撃スキルを放ち、より損壊させたほうが勝ち──というルールになった。


 的は、防御魔法を七重にかけたライデル鋼製。

 それが十個連なっている。


「使用するのはランク2の攻撃スキル【インパルスブレード】でどうです? 使えないなら、別のスキルでもいいですが」


 エドモンが提案した。

 自信に満ちた顔である。


【インパルスブレード】は武器スキルの一種で、名前の通り斬撃の形をした衝撃波を放つ技だ。


「大丈夫だ。それなら習得している」

「じゃあ、さっそく俺から」


 剣を抜くエドモン。


 さすがに騎士だけあって、構えが様になっていた。

 いまだ剣術は素人の俺とは違うな。


「はああああああっ、【インパルスブレード】!」


 エドモンの剣が緑色の光に包まれ、その輝きが一直線に突き進んだ。


 十メートルほど直進し、的に命中する。

 破壊音とともに、十個の的のうちの三つまでを両断した。


「ほう、防御魔法を七重にかけたライデル鋼の的を真っ二つとは」


 ジィドさんがうなる。


「さすがは若手のホープの一人、エドモンだな……」

「攻撃スキルなら、副隊長クラスにも匹敵するんじゃないか……」


 他の騎士たちもいちようにざわめいた。


「次はあんたの番ですよ、隊長」


 エドモンが傲岸に顎をしゃくった。

 すでに勝利を確信しているのか、ニヤニヤと笑っている。


「分かった。的が壊れたから、新しいのを出してくれ」


 俺は部下の一人に言って、壊れた三つの的を新品に交換してもらった。


 エドモンは十個中三個の的を両断した。

 俺のスキルなら、果たしてどうか。


 戦場では何度も使用したスキルだが、こういう的に放つのは初めてだ。

 どの程度の威力を発揮するのか、今一つ予測できない。


「どうしました、隊長? 怖気づきましたか?」


 エドモンが挑発してきた。


「部下の俺より威力が低かったら、やっぱり恥ずかしいですよねぇ」

「もう。やめなよ、エドモン」

「あんまりプレッシャーをかけたらかわいそう」


 ジネットとカリナは言いながらも、エドモン同様にニヤニヤと笑っていた。

 俺のスキルが彼ほどの威力を出せず、隊長としての体面を傷つけられるのを期待しているのだろう。


 別に面子にこだわるわけじゃない。

 だけど、隊長として──この隊をまとめる者としては、やはりそれなりの力量をしめしておかないと、今後に差し支えるからな。


 全力で──いかせてもらう。


 俺は剣を構えた。


「なんだ、あの構え……」

「素人……?」


 エドモンたち以外の騎士からも、そんな声が聞こえた。

 さすがに本職の騎士たちから見ると、俺の剣の構えは不格好かもしれない。


 だけど、構えは問題じゃない。


 スキルの威力は、基本的にその術者のレベルに比例する。

 だから──。


「【インパルスブレード】!」


 気合いとともに、俺は剣を振り下ろした。

 まばゆい緑色の閃光が周囲にほとばしる。


「えっ……!?」

「う、嘘……!?」

「こんな──」


 エドモンが、ジネットが、カリナが、そして全員が──呆然とした声をもらした。


 俺が放った緑色の斬撃波は──。

 十個の的をすべて両断し、さらにその向こうの壁も真っ二つにしてしまったのだ。

おかげさまで日間総合表紙に戻っていました。感謝です!

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