14 攻略なるか
俺はさらに蹴りを繰り出すが、ヅェルセイルは大きく跳び下がってこれを避けた。
「はあ、はあ、はあ……素手でも、この強さか……」
「そういうことだ。剣がなくても、徒手空拳でお前を殺す」
俺は格闘戦の構えでじりじりと近づく。
一気に距離を詰めて攻撃を繰り出した。
拳の連打。
手刀の連打。
蹴りの連打。
まさしく雨あられと打突を浴びせかけ、ヅェルセイルの肉体を粉々にする。
無数の肉片と化して、魔神がその場に散らばった。
勝った──。
思いつつも、俺は腑に落ちなかった。
あまりにもあっけなさすぎる。
もしかしたら、ヅェルセイルはまだ──。
「マリウス!」
背後からリーザの声が聞こえた。
警告の、声が。
「ぐっ……!」
背中に焼けるような痛みが走った。
甲冑ごと、背中を深々と切り裂かれた──。
そう理解する前に、体の方が勝手に動いていた。
大きく前方に跳び、距離を取ってそいつと対峙する。
魔神が、そこにたたずんでいた。
「残念だったな。魔神はコアさえ残っていれば、無限に再生できるんだよ」
ニヤリと笑うヅェルセイル。
バラバラになったはずの魔神の体には、傷一つ残っていなかった。
「だが、痛みまでが消えるわけじゃない。屈辱もな」
ヅェルセイルの顔から笑顔が消える。
「屈辱、か」
「ああ、人間ごときに体をここまで破壊されたんだ。屈辱以外の何があるっていうんだよ」
「よほど人間が嫌いらしいな」
「当たり前だ。下等生物が魔神と対等に口をきくだけで不快なんだよ」
ヅェルセイルが吐き捨てた。
「しかも、その下等生物にぼろ負けしたんじゃ、頭に来るか」
「てめえぇぇぇぇっ!」
挑発に乗って、魔神が突っ込んできた。
俺はカウンター気味に拳や蹴りを繰り出し、奴の四肢を粉砕する。
再生したとはいえ、魔神の戦闘能力が上がったわけではないらしい。
地面に転がった魔神の残骸は──、
「無駄だ無駄だ」
すぐに元通りに再生してしまう。
──『コア』は、どこにあるんだ。
再生するところを気を付けて見たが、奴が『コア』と呼んでいたパーツは発見できなかった。
「ふん、人間の目には魔神の『コア』は見えない。知覚することもできない」
ヅェルセイルが言った。
「おおかた『コア』を破壊すれば、俺は再生できなくなる──とでも目論んだんだろ? 確かに、その通りだ。がが、お前たちに『コア』を見つけることはできない。そうでなければ、わざわざ自分から弱点をばらすわけがねーだろう? ええ?」
勝ち誇る魔神。
確かに、簡単な話ではなさそうだ。
さて、どう攻略するか──。