12 ルークの戦い2
「敵を倒し、想いを背負って戦う──一人の人間だ!」
叫んで、ルークは飛び出した。
その背に、薄桃色に輝く光の翼が出現する。
高速移動スキル【レイウイング】。
「もっとだ……もっと速く──俺は、俺の力を引き出す……!」
集中する。
練り上げる。
高ぶらせる。
スキルの発動と威力増加に必要な『精神の力』を。
戦う意思──『闘気』を。
「おおおおおおおおおおおおおおっ!」
咆哮とともに、ルークの動きが赤い閃光と化した。
「何……!?」
戸惑ったような様子を見せる魔神。
「いくら改造されているとはいえ、人間がこれほどの高速機動を……!? これは【光】の力──?」
「【スラッシャーギガ】!」
ルークの斬撃が魔神の胸元を斬り裂いた。
すさまじい爆光とともに、吹き飛ばされるヅェルセイル。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
ルークは荒い息をついて、その場に立っていた。
全身からごっそりと力が抜けたような感覚だった。
魔神の反応を超えるほどの速度で動き、渾身の斬撃を叩きこんだのだ。
余力が、もはやない。
「今のは効いたぞ……人間ごときが!」
爆光が晴れ、現れたヅェルセイルが怒りの声を上げた。
胸元が大きく切り裂かれて、白煙を上げている。
ちょうどさっきのルークと同じように。
次の瞬間、魔神の姿が消えた。
「っ……!?」
速すぎる!
一瞬にして間合いに侵入されたかと思うと、みぞおちに衝撃が突き抜けた。
「が……は……」
倒れるルーク。
「お前もだ、女!」
さらに魔神が爪剣を振るう。
リーザは聖剣でそれをブロックするものの、勢いを止められずに数十メートルも吹き飛ばされた。
「遊びは終わりだ」
魔神が憤怒の表情で告げた。
思わぬダメージに逆上しているのだろう。
「お前たちはもう殺す。そして、あの人間も──」
「いや、殺すのは俺の方だ」
凛とした声が、響いた。
ルークはハッと顔を上げる。
前方から、マリウスが歩いてくる。
その全身から、目に見えるほどの闘気のオーラをまとって──。
「よく持ちこたえてくれた。おかげで準備完了だ」
告げるマリウスの声には自信がみなぎっている。
(なんだ、あれは……!?)
ルークは目を瞬いだ。
マリウスの雰囲気が、何か違う。
強さが、違う。
今までとは圧倒的に──何かが変化している……!?