11 ルークの戦い1
ルークの目の前で、リーザが魔神と斬り結んでいる。
(俺も……行かなきゃ……)
力が入らない体で、弱々しく立ち上がった。
先ほど魔神に切り裂かれた胸元から白煙が上がっていた。
生身の部分だけではなく、研究所によって改造された生体魔導部分にもダメージを受けているようだ。
自己修復が始まっているものの、すぐに元通りとはいかないだろう。
体が、重い。
それでも、ルークは進んだ。
「リーザ隊長、俺も戦います……!」
あれは、敵だ。
敵は殺す。
ルークにとって、それだけが自身の存在意義なのだから。
「ルーク、大丈夫なのか」
リーザはいったん大きく後退し、彼の下に駆け寄ってきた。
「まだいけます。俺の役目は、敵と戦うこと……こんなところで休んでられません」
言って、ルークは魔神をにらみつける。
「俺は、そのために作られたんだ」
「ルーク……」
「ふん、まだ戦えるのか? だが二人になったところで結果は変わらん。この俺を足止めなど……舐めるなよ、人間ども」
魔神が双眸をぎらつかせた。
戦闘形態の魔神は、さすがに迫力が段違いである。
ルークはこみ上げる緊張と不安を押し殺し、剣を構えた。
「そっちは、先史文明の魔導技術で改造された人間か。なるほど魔獣や魔神の細胞を組みこんであるわけだな」
つぶやく魔神。
「えっ……?」
「なんだ、自分の体のことを知らないのか? お前の中には俺たちと同じものが宿っているのさ、王国の騎士くん」
魔神が笑った。
「なんなら、今からでも帝国に寝返るか? お前はどっちかというと人間よりも俺たちの側に近い存在だろう」
「ルーク、耳を貸すな!」
リーザが鋭い声で言った。
「君は私たちの仲間だ。栄えある聖竜騎士団の隊長の一人。魔神の同族などではない!」
「リーザ隊長……」
ルークがうつむく。
仲間。
そうだ、マリウスも自分のことをそう認めてくれた。
養成機関の同期たち──『黄金世代』は自分のことを『同期の誉れだ』『誇りだ』と言ってくれた。
部下の騎士たちは彼の力を認め、年少ながらも敬意を払ってくれた。
「俺は……魔神や魔獣の同類じゃない。人間だ」
ルークはショートソード『覇道桜花』を構え直す。
胸の中が、熱い。
自分を取り巻く人たちの思いに報いたい──。
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