4 切り札
書籍版の2巻発売が決定しました! ありがとうございます!
MFブックス様より9月25日発売予定ですので、ぜひよろしくお願いします~!(*´∀`*)
「……今の攻撃はなかなかだ。ダメージを受けたぞ」
光が晴れると、ヅェルセイルの顔から笑みが消えていた。
全身がズタズタに裂けている。
特に両足はダメージが大きいらしく、立つのがやっとのようだ。
「だが、俺の体はすぐに回復するぞ。少しだけ待っていろ。今の攻撃の褒美に、じわじわとなぶり殺しにしてやろう」
その言葉通り、魔神の全身は白煙を上げながらすさまじいスピードで修復されていく。
「そうはさせない」
奴が足にダメージを負い、スピードが失われているはずの今なら──。
いや、今しかスキルを確実に当てられるチャンスはない。
「全員、離れてろ──いくぞ!」
俺は右手を掲げた。
異空間から銀色に輝く大剣が飛び出し、俺の足下に突き立った。
ランク7スキル【破軍竜滅斬】を放つときの専用剣だ。
同時に、俺の側に半透明の体をした黒髪の美少女が現れる。
【破軍竜滅斬】の導き手であり、スキルに宿る精霊ともいうべき存在──メル。
「メル、俺に力を」
『うん。あたしはいつでもおじさんの側にいるよ』
彼女が俺に寄り添った。
「じゃあ、いくぞ。メル」
『心を研ぎ澄ませてね、おじさん』
メルが俺に抱き着き、頬にキスをする。
「ああ、全身全霊の一撃を放つ」
おそらく、この一撃で勝負は決まる。
もしも【破軍竜滅斬】でも仕留められなかったら──。
よぎる不安を俺は頭から振り払った。
俺は地面に突き立った剣を抜き、構えた。
「【破軍竜滅斬】──増幅紋章配置」
前方に、翡翠色に輝く紋章が二つ出現する。
紋章は一種の加速器になっている。
まず斬撃波を放ち、紋章を通過することで、その威力が倍加される。
しかも紋章は二つあるから、威力の倍加も二度起こる。
二重に攻撃力をブーストした斬撃で、すべてを薙ぎ払う──。
それが俺の切り札、【破軍竜滅斬】だ。
俺は銀色の大剣を振りかぶった。
その刀身がまばゆい光を発する。
「【破軍竜滅斬】──斬撃波放出!」
俺は渾身の力を込めて剣を振り下ろした。