4 魔神3
「──あのスキルを使うんだな、マリウス」
リーザが俺にささやいた。
「……ああ。だけど、あれは一日に一発しか撃てない。確実に当てる必要がある」
答える俺。
「なら、私たちが魔神を引きつけよう」
「俺もいきます」
リーザとルークが進み出る。
……よし、二人が魔神の気を引いている間に、俺はスキルを命中させられるタイミングを探ろう。
「頼む」
俺の言葉に二人はうなずき、
「【プラズマエッジ】!」
「【メルトクロー】!」
リーザが光の刃を飛ばし、ルークが闘気を集中させた左拳を繰り出す。
ともに必殺クラスのスキル二種が、ヅェルセイルを直撃した。
「この程度か」
リーザの光の刃は魔神に当たった瞬間に霧散し、ルークの左拳は魔神の体に傷一つ付けられない。
「かあっ」
ヅェルセイルが一喝すると、それによって発生した衝撃波が二人を吹き飛ばした。
「こいつ……っ!」
「止まるな、ルーク。攻撃を仕掛け続けるぞ──【ラピッドムーブ】!」
言って、リーザが高速移動スキルで走り出す。
「了解です! 【レイウイング】!」
ルークも同じく高速移動のスキルでそれに続いた。
「ふん、スピード勝負か」
笑うヅェルセイル。
リーザとルークは魔神の周囲を回りながら、剣やスキルで仕掛けた。
斬撃と衝撃波、拳と蹴り、光刃や光弾──さまざまな攻撃を矢継ぎ早に浴びせる二人。
リーザは聖剣の力によって、ルークはもともとの生い立ちによって──それぞれ人間を超える身体能力を得ているはずだ。
だが、そんな二人が同時に攻撃してもヅェルセイルはまるで動じない。
余裕たっぷりの動きで、リーザの聖剣を、ルークの剣を、すべて避けてしまう。
攻撃が──いや、動きそのものが完全に見切られている……!?
「くっ……!」
さすがにリーザの表情に焦りの色が浮かび始める。
と、
「ルーク隊長、リーザ隊長、あたしがサポートします! 高威力スキルで狙ってください!」
叫んだのはリズだった。
「異能増幅器作動!」
リズが魔導義手に仕込まれた機能を発動させる。
対象のスキルの威力、効力を増幅させる機能だ。
「【プラズマブレード】!」
「【スラッシャーギガ】!」
闘気を集中し、斬撃衝撃波ですべてを薙ぎ払うスキル──【プラズマブレード】。
相手の物理・魔法防御を60パーセントカットし、敵を斬り裂くスキル──【スラッシャーギガ】。
リーザとルークの、それぞれ必殺技といっていいスキルである。
それらが、威力を倍加してヅェルセイルに叩きつけられる。
「ぐっ……!? がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
閃光と爆光に包まれた魔神が、苦痛の絶叫を上げた。