1 ふたたびシャルテ王国へ
研究所での人造魔獣やレグルシリーズとの戦いを経て、俺のレベルは大幅に上がっていた。
ちょうど220である。
任務が始まる前に比べ、40以上もレベルが上がったことになる。
思わぬ収穫といえるだろう。
新たに取得したスキルなどは後で確認するとして……とりあえず、俺たちは研究所から外に出た。
「隊長!」
と、ウェンディやサーシャが駆けてくるところだった。
二人には外で待機するよう命じたはずだが……。
「さっきルーク隊長が突然研究所内に入っていったので。持ち場を離れるべきか迷ったんですが……」
「中で何かあったんですか?」
心配そうにたずねるウェンディとサーシャ。
「ルークは──まあ、少し事情があって合流したんだ」
俺は言葉を濁した。
ルークの『素性』については伏せておくべきだろう。
そのルークは、暗い表情だ。
ラ・ヴィムの技術で改造された実験体──か。
彼自身はもともと戦争で家族を失い、ベロニカの研究所に拾われ、そこで改造されたらしい。
この建物内にいたルークそっくりの兵士たちは、彼のデータをもとに作られた人工生命だということだった。
改造兵士に人造兵士──いずれも禁忌とされる研究である。
まあ、その辺りの追及は王都にいる担当官に任せればいい。
俺たちは──俺たちの任務を果たさないと、な。
こうして、俺たちはふたたびシャルテ王国に向かった。
魔神について、考えを切り替える。
奴の目的はなんだろう。
二本目の聖剣を狙ってきたのか。
あるいは、帝国の世界侵攻の尖兵として現れたのか。
だが、それならもっと早く魔神を戦線に投入してもよさそうなものだ。
なぜ、今なのか。
「もしかしたら──」
予感がする。
ミランシアとガイアスの百年にわたる戦争が、今新たな局面を迎えているんじゃないだろうか。
そして、その局面はすぐに激流となり、俺たちを飲みこんでいくんじゃないだろうか。
そんな、予感が。
俺たちはシャルテ王国東部の大都市アドシャルテに入った。
すでに四つの都市を滅ぼした魔神は、現在この都市を攻めているのだとか。
「敵は魔神だけじゃないかもしれない。配下の魔獣が町中に放たれている可能性もある。全員、十分に気を付けてくれ」
俺はみんなに言って、先頭を進んだ。
すぐそばにはリーザがいる。
ルークはしんがりを務めている。
隊の中でもっとも戦闘力の高い俺たち三人が、隊列の前後を挟む形だ。
だが、警戒とは裏腹に、町中で魔獣に出くわすことはなかった。
大通りをまっすぐに進むと、
「──!」
不意に、すさまじいプレッシャーが押し寄せた。
いる。
姿はまだ見えないが、圧倒的な存在感が前方から放たれていた。
物理的な圧力さえ伴い、俺の全身を軋ませる。
これが──魔神。
今までとは、間違いなくけた違いの敵だ。
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