11 ルーク3
「指示を遂行する」
ルークは静かにつぶやき、俺たちに歩み寄ってくる。
ぎらついた眼光には明らかな敵意が宿っていた。
「お前、まさか──」
俺は乾いた声でうめいた。
「操られている……のか?」
リーザがつぶやく。
「そいつらがあなたの敵よ、ルーク! 殺しなさい!」
女科学者が叫んだ。
「了解だ」
ルークが腰の剣に手をやった。
「おい、ルーク……?」
「敵を、殺す。それだけが俺の存在理由だ。だから今は──あんたたちを駆逐する」
ルークが剣を抜いた。
おおぶりなナイフといった感じのショートソード──第一級魔導武具『覇道桜花』。
いわゆる伝説の剣だと話に聞いていた。
その刀身が淡い薄桃色の輝きをまとう。
ルークは、本気だ。
「やめろ! 俺たちが戦ってどうする?」
「俺は指示を遂行するだけだ」
一歩を踏み出すルーク。
ずしん、と地響きがした。
「お前……!?」
さっきまでは感じなかったすさまじい威圧感が、彼の全身から放出されている。
「あんたの強さは知っている。最初から『力』を解放させてもらうよ。全力で──殺す」
ショートソードを掲げるルーク。
「死ぬ前に、祈れ」
駄目だ、止まる気配がない。
「【パワーブレード】!」
ルークが剣を振り下ろした。
「【ソードラッシュ】!」
俺は迎撃用の斬撃を放つ。
一撃の重さは、奴のスキルの方が上。
それを俺は手数で強引に抑えこんだ。
十数合の攻防の後、俺たちはいったん距離を取る。
「目を覚ましてくれ、ルーク」
呼びかけにも、彼の反応はない。
ルークの様子は明らかにおかしかった。
なんとか元に戻せないだろうか──。
「あははははは、苦戦してるみたいだねぇ。そいつは他のレグルシリーズとは違う」
女科学者が勝ち誇ったように笑う。
「ルークは、レグルシリーズの最高傑作さ。国内で最高の設備を持つ研究所で作られた、ね」
「国内で最高の──」
リーザが眉を寄せる。
「この研究所以外にも禁忌の研究をしているところがあるというのか」
「あはははは、何を甘いことを言っているんだい! ここ以外にも、じゃない。禁忌の研究なんてすべての研究所でしているさ」
女科学者が鼻を鳴らした。
「な、なんだと……!?」
「ミランシア王が莫大な金をあたしたちの研究所に投資しているのも、結局はその研究のため。他国に先んじるための『力』を求めているんだからね」
「そんな……馬鹿な……」
リーザはショックを受けた様子だ。
「国を治めるにはきれいごとだけじゃすまない、ってことだろうさ。まあ、どうでもいい。今は──」
女科学者がルークに目配せをする。
「さっさと殺せ。あたしの──そして、あんたの敵を。機密を守るために、ね」
「了解」
ルークの動きがさらに増した。
ぎしぃっ……!
俺の剣が激しく軋む。
刀身に亀裂が走った。
まずいぞ、剣に思ったよりガタがきている。
このままでは剣を壊される──。
「いくらあんたが強くても、相手が悪いみたいだね。レグルシリーズの最高傑作──『失われし実験体』ルーク・レグルは」
「最高傑作? そんなふうに呼ぶな」
俺は彼女をにらんだ。
「ルークは、モノじゃない。一人の人間だ。俺たちの、仲間だ。だから──」
「仲間だから斬れないって? 甘いねぇ」
女科学者の笑みが深まった。
「手を抜けば、死ぬよ。あんた」
「はあああああああああああああああっ!」
ルークが雄たけびとともに突進してくる。
繰り出される斬撃を、俺は剣でいなしつつ後退する。
やはり、強い……!
このまま守勢に回っていては、まずい。
だが、どうすればいい?
どうすれば、ルークを無力化できるんだ。
殺すことなく、できれば傷つけることもなく。
なんとかして彼を抑えこみたい。
そして、元に戻す方法を探るんだ。
「今、助けてやるからな、ルーク……」
俺は決意を新たに剣を握り直した。
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