8 レグルシリーズ
少し間があいてしまい、すみません。
書籍化作業でバタバタしてました……_:(´ཀ`」 ∠):
ルークそっくりの兵士たち──『レグルシリーズ』とやらが左右から襲いかかってきた。
俺はリーザとともに剣を構え、これを待ち受ける。
「速いな……」
隣でつぶやくリーザ。
そいつらは、いずれも並の騎士をはるかに上回るパワーとスピードを備えていた。
おそらくは聖竜騎士団の上位席次をもしのぐほどの。
だが──俺の目にはすべてが見えていた。
正面から斬りかかってきた奴の剣を避け、すれ違いざまに一撃を叩きこむ。
ざんっ!
胴体部を切断され、上下に分かたれたそいつは、悲鳴を上げることもできずに倒れた。
……嫌な感じだ。
敵とはいえ、ルークと──仲間と同じ顔の相手を斬るというのは。
が、感傷にふけっている場合じゃない。
俺はすぐに他の連中に視線を向け直した。
そのうちの一人──いや、一体はリーザと切り結んでいる。
聖剣を得たことで、彼女のパワーやスピードは底上げされているんだろう。
レグルシリーズに比べ、リーザには余裕が感じられる。
「確かに君たちは速い。攻撃も重い。だが──」
彼女の動きはさらに加速し、敵を斬り倒した。
「聖剣を得た私には届かない」
頼もしいかぎりだった。
彼女になら、俺の背中を預けられそうだ。
と──別方向からさらに三体が向かってくる。
俺たちは位置を入れ替えつつ、迎撃した。
数合の攻防の後、三体のレグルシリーズをなんなく斬り伏せる。
残るは、二体。
「ご自慢のレグルシリーズとやらは、この程度か?」
リーザが女科学者をにらむ。
「観念して投降してはどうだ。彼らは明らかに禁忌の研究──『人工生命』と見受けられる。王都まで同行願いたい」
「同行?」
「聖竜騎士団で君の取り調べを行う」
「やだね。あたしはまだまだ研究したいんだ。あんたらなんかに邪魔はさせない」
女科学者がニヤリと笑った。
「レグルシリーズでは俺たちには勝てない。今の攻防で理解しただろう」
俺が彼女に言った。
「ふん、甘く見ないでよね」
二体のレグルシリーズに視線を向ける女科学者。
その口の端がひきつったようにつり上がり、笑みが深くなる。
「そいつら全員を巻きこんで自爆しろ!」
叫んだ。
「その間にあたしは逃げる!」
こいつ──。
俺はなんとか耐えられるかもしれないが、他の全員を守れるだろうか?
リーザは、おそらく聖剣の力でしのげるだろう。
だが、リズや中年騎士たちは?
俺がスキルで守りに行こうにも、彼女たちとは数十メートルも離れている。
一瞬で移動できる距離じゃないし、相手の自爆の方が早い──。
「甘いのは、そっちだ」
リーザが冷然と告げた。
「聖剣スキル──【天刃凍花】」
白い吹雪が、舞った。
直後、二体のレグルシリーズは真っ白に染まり、その動きを止める。
凍っている。
今の一瞬で──。
「リーザ、それは……!?」
「これが聖剣アストライアの真の力だ。氷雪系の力であらゆるものを凍らせる──」
ふう、と息をついたリーザが微笑んだ。
「さあ、今度こそ詰みだ。君を王都に連行する」
「くっ……まだだ」
女科学者が後ずさる。
ぎらついた瞳は俺たちを憎々しげににらんでいる。
「来い、ルーク・レグル!」
「何……!?」
彼女が叫んだ次の瞬間、大爆発とともに壁が吹っ飛んだ。
爆炎の向こうからスラリとした影が現れる。
黒髪に赤い瞳の、美しい少年──。
「ルーク……!?」




