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第7章 選抜部隊

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5 研究所2

 俺の一撃が人造マンティコアを両断する。


 が、その間にもう一体がリーザの方に向かっていた。


「リーザ、今行く!」


 急いでフォローに向かおうとする俺。


「大丈夫だ、マリウス」


 リーザがそれを手で制した。


「私は聖剣アストライアに選ばれた騎士。これくらいの相手は一人で倒せなければ──」


 すらりと抜いた剣が、まばゆい光を放つ。


 細く優美な刀身も、装飾の多い柄も、すべてが虹色。

 剣というよりも芸術品のような美麗な外観である。


 聖剣アストライア。

 オルトの大森林で、リーザがその所有者として選ばれた剣だ。


「聖剣に笑われてしまう」


 彼女がすれ違いざまに繰り出した斬撃は、マンティコアの首をあっさりと刎ね飛ばした。


「お見事」


 思わずつぶやく俺。


「聖剣のスキルを使うまでもないな。先を急ごう」


 リーザは聖剣を鞘に納めて言った。


 俺たちはふたたび進みだす。


「さっきの魔獣はなんだったんだ?」

「分からない。ただ……もしかしたら、ここで研究している実験体なのかもしれないな」

「実験体? 魔獣が?」

「噂では、な。ラ・ヴィムの研究に関しては、六番隊の隊長が深くかかわっているようだが──私たち隊長クラスにもほとんど情報が回ってこない」


 リーザが首を左右に振る。


「六番隊か」

「あそこの隊長は徹底した秘密主義だからな……」


 と、そのとき、


 ぐるるるるおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ。


 ふたたび前方から雄たけびが聞こえてきた。


 巨大なシルエットが七体ほど現れる。

 今度も魔獣のようだ。


 しかも気配からして、さっきと同じ人造魔獣だろうか。


「また実験体が暴走でもしたか? それとも野良の魔獣が迷いこんだか」


 リーザはため息交じりに聖剣を抜いた。


「──いや、あるいは」


 俺は嫌な予感を胸に、剣を構える。


「こいつらは『警備兵』じゃないのか?」


 だとすれば、こいつらが守るものとはなんだ?


 貴重な研究成果を守っているのか。

 重要機密を守っているのか。


 あるいは──他者に見られてはまずいようなものを守っているのか。

 ……なんて考えるのは飛躍しすぎだろうか。


「怪しいな。ここには何かがある」


 リーザが険しい表情でつぶやく。

 さっきから、ずっとこんな顔つきだ。


「リーザ……?」

「私は、ミランシアの暗部を暴きたい。敵は帝国だけではない。我が国の内部にも──」

「危ない!」


 ふいに、背後から何かが迫るのを感じ、俺はリーザを押し倒した。

 折り重なって倒れる俺たち。


 直後、そのすぐ上を何かが高速で通り抜けていった。


 ばぎぃっ……!


 壁に巨大な槍が突き刺さる。

 立ったままだったら、確実にアレに貫かれていただろう。


「大丈夫か、リーザ?」


 押し倒し、体の下になっている彼女に声をかける。


 すぐ間近にリーザの顔があった。

 息が触れ、ぞくっとなる。


「助かったよ。ありがとう、マリウス」


 いつも通りのクールな口調で答える女騎士。


 対して、俺は少しドギマギとしてしまった。


 落ち着け、俺。

 これじゃ、どっちが年上だか分かりやしないな。


 内心苦笑しながら、俺はリーザの上からどいた。


「人造魔獣に加えて、罠の類まであるとは」


 立ち上がった彼女がつぶやく。

 聖剣を抜き、油断なく構えた。


「侵入者の迎撃準備が厳重すぎる。よほど大事な研究成果か……あるいは見られたくないものが、この奥にあるのか」


 先ほど俺が考えていたのと、同じようなことを告げるリーザ。


「さっき、この奥から悲鳴が聞こえた。その者を助けるのはもちろんだが──もう一つ。この研究所が禁忌の研究を行っているとしたら、それを暴く」

「リーザ……」

「手伝ってくれ、マリウス」

「──ああ」

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