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2 シャルテ王国へ

 リーザの隊からは二十代の男女の騎士が一人ずつ、ルークの隊からは四十代前後の中年騎士が二人と十代の女性騎士が一人、という選出だった。


 精鋭メンバーとして選ばれるだけあって、いずれも腕に覚えのある手練たちのはずだ。


「よろしくな。こちらはウェンディ・ノアとサーシャ・レヴェリンだ」


 俺は彼らにウェンディとサーシャを紹介した。


「八十七期生の双璧か。サーシャのほうは聖剣探索行に引き続いて共同任務だな」


 リーザが微笑みかける。


「リーザ隊長……あいかわらず凛々しくて素敵……はふぅ」


 サーシャが頬を赤くして、うっとりした表情になった。


「サーシャちゃん、昔からリーザ隊長のファンだもんね」

「ええ、この方に憧れてあたしは騎士を目指したの……あ、もちろんマリウス隊長も憧れの人だけど」


 ウェンディの言葉に熱っぽく答えるサーシャ。


「また一緒の任務で幸せ」

「よろしく頼むぞ、サーシャ」


 リーザが右手を差し出す。


「あたし、がんばりますぅっ」


 サーシャは蕩けた顔でリーザの手を握った。

 と、


「あなたが噂のマリウス・ファーマ殿ですか」

「一緒に戦えることを光栄に思います」


 リーザの配下──二十代の男女の騎士が俺に対して一礼した。

 二人とも生真面目そうだ。


「ありがとう。ともに任務に励もう」


 俺は軽く手を上げて応える。


「マリウス隊長の足を引っ張らぬよう、粉骨砕身いたします」


 ルークの配下──中年騎士の二人組が言った。

 いずれも俺と似たような年齢である。

 さらに、


「お久しぶりです、マリウス隊長。あたしも精いっぱい任務に励みます」


 そう挨拶をしたのは、黒髪に眼鏡の少女騎士。

 彼女の右腕は義手だった。


「確か……リズ、だったか」


 魔剣の調査任務の際に、俺は九番隊の女騎士三人組──リズ、ララ、サーナと出会った。

 彼女たちは、いずれも『黄金世代』と呼ばれる優秀な騎士たちだった。


 が、魔獣との戦闘でそのうちの二人は戦死、残ったリズも右腕を失う重傷を負った。

 その彼女が、今回の任務に同行するとは。


「この腕なら平気です。むしろ以前より強くなったかもしれませんよ?」


 リズが凛と告げる。


「魔神が相手でも、きっと活躍してご覧に入れます」


 それは自分たちも同じ──とばかりに、他の騎士たちが俺の方を見た。


 二番隊も九番隊も、全員がいかにも手練れといった重厚な威圧感をまとっている。

 実際、この任務の選ばれるくらいだから実力は折り紙付きだろう。


 とはいえ、相手は魔神である。

 果たしてどこまで立ち向かえるか。


 俺はあらためて気を引き締める。


 果たして──。

 何人が、生きて帰れるのか。




 俺たち十人は軍用の大人数馬車でシャルテ王国まで移動していた。

 草原から荒野へ、そして切り立った峡谷へと差し掛かる。


「魔神……か」


 俺は客車内でつぶやいた。


「ん、どうした?」


 反応したのはリーザだ。


「いや、魔神ってどんな奴なんだろうな、と思っただけだ」


 と、俺。


「魔獣なんかよりはるかに強いことは分かっている。だけど具体的な強さはどうなんだろうな?」

「ふむ。私も戦った経験はない」

「魔神との戦闘経験があるのは聖竜騎士団でも数人だと聞いています」


 ルークが言った。


「雷撃騎士団でさえ、壊滅したんだろう? たった十人で立ち向かえるんだろうか」


 俺はたずねた。


 別に怖気づいたわけじゃない。

 ただ、本当にこの作戦で大丈夫なのかという漠然とした不安感があった。


「もっと大軍であたるべき相手なんじゃないのか? 総隊長の方針には反するが、俺はやっぱりそう思ってしまう」

「……そうだな。私も少し思った」


 うなずいたのはリーザだ。

 鞘に収まったままの聖剣アストライアを取り出し、告げる。


「この剣が魔神に対する有効打となってくれればいいが……」


 よく見ると、鞘から淡い光があふれていた。


「リーザ、それは」

「聖剣が……光っている?」


 リーザも気づいたようだ。




 ──次の瞬間、淡い光は強烈な閃光となって周囲にあふれ出した。




「くっ……」


 まぶしくて何も見えない。


 視界が、真っ白に染まる。

 やがて輝きがゆっくりと薄れていき、視界が回復する。


「ここは……!?」


 客車の窓から外を見て、俺は眉根を寄せた。

 さっきまでは峡谷を走っていたのが、いつの間にか洞窟の中のような場所にいる。


「まさか──」


 ルークが驚いたような顔をしている。


「どうした、ルーク」

「こんな場所に『研究所』が……!? 迷彩結界が解除されたのか……?」


 ぶつぶつと何やらつぶやいていた。

 この場所のことを何か知っているんだろうか──。

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