6 黒の猛将
感想返信が追いついてません……すみませんm(_ _)m
感想はすべて読ませていただいてます。とても励みになっています(*´∀`*)
また、ご指摘いただいた点をいくつか修正いたしました。ありがとうございました!
【19.6.27追記】経験値描写を最後に付け足しました。入れるの忘れてた……(感想欄でご指摘くださった方々、ありがとうございます!)
数時間後、俺たちは戦線に合流することができた。
場所は丘陵地帯で、ミランシアは丘の上に陣取っている。
対するガイアス帝国軍は丘のふもと。
陣形的にはこちらが有利である。
だが、それを覆すだけの猛者が帝国にはいた。
「【豪刃烈火】!」
身長3メートル近い巨漢の黒騎士が、身の丈を超えるような超巨大な剣を旋回させる。
真紅の衝撃波が放射状に広がり、ミランシアの騎士たちを両断していく。
彼一人によって、王国騎士の部隊が押されていた。
「鋼鉄の鎧も紙のように切り裂くとは──」
リーザがうめいた。
「広範囲攻撃系の武器スキルか。さすがは『黒の猛将』グリムワルドだ」
「猛将?」
「帝国には『猛将』と呼ばれる七人の最強騎士がいる。グリムワルドはその一人さ」
俺の問いに説明するリーザ。
なるほど、帝国トップクラスの猛者というわけか。
「さあ、命が惜しくない者は近づいてみよ! 我が剣の餌食にしてくれよう!」
グリムワルドはなおも超巨大剣を振るう。
確かに、強い──。
今まで戦ってきた帝国兵や帝国騎士とは次元が完全に違う。
単純な近接戦闘能力なら、マンティコアをも上回っているだろう。
少なくとも、【経験値1000倍ボーナス】に目覚めたばかりのころの俺じゃ、太刀打ちできない。
だけど──今なら、どうだろう。
さらに戦闘経験を重ね、レベルアップを繰り返した今の俺なら。
あるいは──。
「おお、二番隊の諸君!」
一人の騎士が馬に乗って駆けてきた。
金髪碧眼の美しい青年騎士だ。
「アルトゥーレ隊長、戦況はどうだ?」
「よくないね」
リーザの問いに、アルトゥーレと呼ばれた青年は首を振った。
「見ての通り、あのグリムワルドが獅子奮迅の活躍をして、我らの軍を押し返している。三番隊も四番隊も容易に近づけないんだ」
「なら、奴を倒せば戦況はこっちに傾くんだな?」
たずねる俺。
「もちろん、そうだが──」
アルトゥーレが眉根を寄せた。
「君は誰だ? そのみすぼらしい装備はなんだい? 一兵卒なら引っこんでいたまえ」
「一兵卒どころか、ただの農夫なんだが」
つい軽口めいた答えを返す俺。
「農夫だって!? ここは神聖なる騎士の戦場! 騎士でもない者は立ち去りたまえ!」
言って、青年騎士は馬から降りた。
グリムワルドに向かい、走りだす。
わざわざ騎乗の機動力を捨ててまで、何をする気だ──?
訝しむ俺の前で、
「農夫に手を借りたとあっては、四番隊の名折れ! 彼は僕が倒す!」
アルトゥーレの両足からまばゆいスパークがほとばしった。
「【アクセルムーブ】!」
その体がブレて、消える。
いや、そう見えるほどの超高速移動だ。
どうやら移動速度を上昇させる系統のスキルらしい。
超スピードでグリムワルドに迫ったアルトゥーレが細剣を繰り出す。
「ぬるいわ! いくらスキルで加速しようと、俺の【心眼】には通じん!」
が、グリムワルドはその一撃を大剣でやすやすとブロック。
返す刀でアルトゥーレを弾き飛ばした。
「ならば──【六連突き】!」
「無駄だ、【旋風刃】!」
武器スキルの応酬だ。
二人の間を無数の銀光が埋める。
加速しつつ、すさまじい速さで打ちかかるアルトゥーレ。
それをことごとく防ぎ、反撃するグリムワルド。
超一流の騎士同士の死闘──。
「や、やはり駄目か、ビクともしない──」
やがて、アルトゥーレが後退した。
いったん体勢を立て直そうというのだろう。
グリムワルドはそんなアルトゥーレに、ふん、と鼻を鳴らし、ふたたび超巨大剣を手に王国騎士たちを斬り払っていく。
「見てられないな」
俺は歩みを進めた。
「今度は俺が相手だ」
「ほう、臆せずこの俺の前に立つか」
グリムワルドが笑う。
肉食獣を思わせる獰猛な笑みだった。
「貴様の勇気に敬意を表し、真っ二つにしてやろう」
「敬意があろうがなかろうが、どのみち真っ二つにするんだろ」
俺はふんと鼻を鳴らした。
「然り。ならば、いくぞ!」
告げて地を蹴る黒騎士。
俺もまた地を蹴って突進した。
間近で見ると、その迫力は一段とすさまじい。
振り下ろされた超巨大剣を手にした剣で受け止める。
ばぎっ、と音がして、刀身が半ばから折れ飛んだ。
「くっ……」
跳び下がる俺。
なんて斬撃の威力だ。
「ふん、我が斬撃を受けて真っ二つにならんとは、なかなかの膂力! だが、この剣を受け止めるには、お前の剣では強度が足りんようだな」
「お前の剣が非常識にデカすぎるんだよ」
軽口を叩く俺。
よし、落ち着いている。
自分自身の精神状態に安堵した。
グリムワルドは確かに強い。
だけど、気圧されることはない。
気圧されて、たまるか。
タックだって魔獣に立ち向かっていったんだ。
俺も、相手がどれほど強くてもひるまない。
闘志は、決して萎えない。
「直接打ち合うのはやめだ。こいつで勝負させてもらう」
半分になった剣を振りかぶった。
幸い、覚えたばかりの武器スキルの中には、剣が折れていても問題なく使用できるものが一つあった。
俺の剣が青い輝きを放つ。
「スキルの光か──ならば俺も対抗させてもらおう」
グリムワルドも超巨大剣を掲げた。
刀身が炎のように赤い輝きをほとばしらせる。
俺が放つ氷のごとき光と、グリムワルドの炎を思わせる光。
二つのまばゆい輝きが、戦場を赤と青の二色に照らし出す。
そして、
「受けよ、【豪刃烈火】!」
「【豪刃凍花】!」
名前の通り、奴のスキルと同ランクのスキルだ。
グリムワルドが放った赤い斬撃波と、俺が撃った青い斬撃波がぶつかり合い、相殺される。
「むっ……!?」
「お互いの飛び道具は互角だな。なら、後は──白兵戦能力の高いほうが勝つ!」
吠えて、間合いを詰める俺。
「こしゃくな!」
グリムワルドも大剣を掲げ、迎撃する。
だが──俺のほうが速い。
パワーはともかく、スピードは俺の方が上のようだ。
やはり魔獣を倒した経験値が大きかったのか、俺は相当のパワーアップを果たしていたんだろう。
英雄クラスすら凌駕するほどに。
まともな力勝負ではなく、スピードで翻弄すれば勝てる!
斬っ!
グリムワルドの大剣を紙一重で避けつつ、すれ違いざまに一撃。
俺の剣が黒騎士の胴を深々と薙いだ。
「ぐ……うう……この俺の目をもってしても……見えな……」
そのまま倒れ伏すグリムワルド。
「み……ごと……なり……王国の、騎士……」
俺を称える言葉とともに、帝国の黒騎士は動かなくなった。
「あのグリムワルドを、一騎打ちで倒すなんて……」
アルトゥーレが呆然とした顔で俺を見つめる。
「君は、何者だ……!?」
「言ったろ。一介の農夫だって」
「し、信じられない──」
アルトゥーレはまだ呆然としたままだ。
と、
「敵将グリムワルドは我が隊のマリウス・ファーマが討ち果たした! 残りは雑魚だ、掃討せよ!」
リーザがすかさず宣言する。
おおおお、と王国騎士たちの士気が一気に上がった。
見た感じ、グリムワルド以外に強敵はいなさそうだ。
「くっ、僕もこうしてはいられない!」
ようやく気を取り直したらしいアルトゥーレが立ち直った。
「助太刀感謝する!」
俺に一礼し、ふたたび敵兵に向かっていく。
「我らも続くぞ、四番隊!」
と、配下の騎士たちに命じるアルトゥーレ。
「三番隊の矜持を見せよ!」
三番隊の隊長らしき女騎士が凛々しく叫ぶ。
おおおおおおおおおおっ!
鬨の声がさらに大きくなった。
王国の騎士たちが次々と帝国の騎士たちに向かっていく。
まさに、怒涛の反撃。
形勢は一瞬にして逆転した。
先ほどまでの劣勢が嘘のようだ。
それだけグリムワルドの影響が大きかったんだろう。
あるいは、一騎打ちによって、これほど急激に流れが変わるのが戦というものなのか。
戦争というものにまだまだ馴染みがない俺には、どちらとも判別できなかった。
ともあれ、今はこの流れに乗るしかない。
「帝国軍を一気に薙ぎ払ってやる──」
俺は半分になった剣を捨て、やって来た味方から新たな剣を貸してもらった。
その剣を手に、縦横に暴れ回る。
斬った敵兵の数は、百を下らないだろう。
そして二、三、四番隊もそれぞれ帝国騎士を圧倒。
終わってみれば、戦いは一方的な勝利に終わった。
グリムワルドを始めとして多くの敵を殺したことで、俺は大量の経験値を得ることができた。
総合経験値は4126000から5566000へ、レベルは61から68へそれぞれ上昇だ。