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第6章 王都激闘

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4 王都の激闘

【スラッシャーギガ】


 相手の物理・魔法防御を60パーセントカットし、切り裂く上級スキル。


 発動には膨大な精神エネルギーの一種──『闘気(プラナ)』が必要であり、現在の王国ではルークとブラムス総隊長の二人しか使い手がいないと言われる絶技だった。


「す、すごい……! さすが黄金世代の首席騎士……!」


 ウェンディは息を飲んで眼前の戦いを見つめていた。


「あっけない」


 ルークは小さくつぶやいた。


 息一つ乱していない。

 まさしく完勝だ。


 だが──彼の表情に喜びはなかった。

 むしろ険しい表情で、両断された双子剣士を見下ろしている。


「念のために首を刎ねておくか」


 ショートソード『覇道桜花』を油断なく構えながら、敵の死体に近づくルーク。

 と、


「なるほど、黄金世代か」

「侮ったことを詫びねばならないようだね」


 両断されたはずの双子剣士が、傷一つない姿で体を起こす。


「そんな……いつの間に回復を……!?」


 ウェンディは呆然とうめいた。


「高速復元能力……!」


 ルークもさすがに険しい表情だ。


「一撃で殺されない限り、僕らは瞬時にダメージを回復できる」

「君の攻撃は、君自身の体力と闘気をすり減らしただけだったね」


 得意げに笑う双子剣士。


「だったら──一撃で殺すまでだ!」


 ルークが吠えた。

 闘志に火がついたのだろう。


「【レイウイング】!」


 ルークの背中に、薄桃色に輝く翼が出現する。

 大量の光の粒子を吹き出し、その勢いで超加速するルーク。


「【メルトクロー】!」


 左手が闘気の炎に包まれ、真っ赤に燃え上がった。


「いくら高速復元能力があっても、頭を潰せば──」


 狙いは、相手の頭部。

 赤い輝きを宿した五指が、双子の片方に叩きつけられた。


 がいんっ……!


 鈍い音とともに、ルークの指撃が弾かれる。


「くっ……!?」

「魔剣スキル──【一極硬化(いっきょくこうか)


 斬撃を弾いた魔剣士は、ニヤリと笑う。


「身体硬化能力か……」

「正解。それも一点に集中したことで、硬化効果を極限まで高めたんだ」

「君の自慢の剣でも、簡単には斬れないよ? もちろんスキルでも砕けない」


 双子が勝ち誇る。


「かといって、頭以外をいくら斬ったところで高速で復元する」

「さあ、どうする? 黄金世代の騎士様?」

「どうするもこうするも──」


 ルークはひるまない。

 赤い瞳に炎のごとき光を宿し、


「攻め続けるだけだ!」




 十数分後──。


「……きりがないな」


 ルークがうめいた。


 パワーやスピード、そして剣技。

 すべてにおいて、ルークは双子を圧倒していた。


 浴びせた斬撃は優に二百を超えるだろう。

 まさしく、嵐のような猛攻──。


 その二百の斬撃を受けてなお、双子の頭部には傷一つつかない。


「ルーク隊長……」


 ウェンディも援護はしているものの、ほとんど焼け石に水である。


 確かにルークは強い。

 だが高速修復能力を持つ敵を相手に、決定打を与えられずにいるのが現実だ。


 一方の魔剣士たちも、ルークの前に防戦一方。


 一見して、互角の戦いだった。


「だけど……」


 ウェンディは唇をかみしめる。


 敵はいくら攻撃を受けてもすぐに修復するが、ルークの方は直撃を受ければ終わりだ。

 いずれルークが疲労すれば、動きが鈍り、敵の攻撃をしのげなくなるだろう。


 このまま長引けば、負けるのは──。


「ウェンディ、君は逃げろ」


 ルークが背中を向けたまま、言った。


「奴らは俺が斬る」

「っ……!」


 ウェンディは思わず後ずさった。


 ほとんど本能的に。

 すさまじい恐怖感を覚えて。


 ただし、恐怖を覚えたのは魔剣士たちに対してではない。


「ルーク……隊長……?」


 ルークの全身から異常な威圧感が放出されていた。


 双子の魔剣士の比ではない。

 まるで彼の方が魔獣や魔神であるかのような、そんな威圧感。


「この気配は……!?」

「まさか君は──『失われし実験体(ロストナンバー)』……!?」


 アロンとカロンが同時に驚愕する。


「俺の過去を詮索するな」


 ルークが一歩踏み出した。

 ずしん、と地響きがした。


「この『力』を使わせたことは評価してやるよ」


 さらに一歩、地響きが鳴る。

 一歩ごとに、すさまじい威圧感が上昇していく。

 と、


「いや、交代だ。ここからは俺がやる」


 声とともに、背後から誰かが歩み寄ってくる。

 振り返ったウェンディはパッと表情を輝かせた。


「隊長──」


    ※


 王都に入った俺は、戦場まで一直線に向かった。


 そこで行われていたのは、ウェンディや九番隊隊長ルークと双子の魔剣士との激闘──。


 俺はルークを制して、前に出た。


「ふん、新手か」

「だけど、そいつとの戦いを見てなかったのかな? 僕らはどれだけダメージを受けても、瞬時に復元できる」

「そして弱点部位は【一極硬化】で守っている」

「ゆえに攻略方法は皆無。君の体力がなくなるまでジワジワといたぶり、確実に殺す──」


 双子騎士が魔剣を掲げる。


「……気を付けてください、マリウス隊長」


 ルークがうめいた。


「単純な近接戦闘能力なら、俺やあなたの方が上でしょう。ですが、奴らに致命傷を与える手立てが見つからない……」

「致命傷、か。防御能力に自信がある奴らなんだな?」


 俺は剣を掲げる。

 まずは小手調べだ。


「【インパルスブレード】!」


 青く輝く斬撃波が、街路を削りながら双子魔剣士に向かう──。

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