表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生特典【経験値1000倍】を得た村人、無双するたびにレベルアップ! ますます無双してしまう  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第6章 王都激闘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/144

2 二つの戦い

 サーシャは【アクセルムーブ】で加速し、スルトたちの間を縫うようにして駆け抜けた。

 以前に見たアルトゥーレよりは劣るが、それでもすさまじいスピードである。


「【アイシクルエッジ】!」


 さらに、氷の刃を放つ攻撃スキルを連続して発動し、痛撃を与えていく。


 速度と手数を生かした見事な連携──。


 ただ、スルトも巨体に比して生命力が高い。

 炎の力を使うだけあって、氷属性の技が弱点のようだが、それでもなお耐えている。


 サーシャの攻撃では致命傷までは与えられない──。

 と、


「チャージ完了だ。ぶっ放すから、そこをどけ」


 クルスが傲然と告げた。

 サーシャが心得たように、大きく跳び下がる。


「消えろ、薄汚い魔獣ども! 【バーストボルテックス】!」


 吠えて、クルスが青白い光芒を放った。


 ごうっ……!


 スルトたちは光の衝撃波に飲みこまれて消滅する。


「三人ともすごいです……」


 俺の隣で、ニーナがつぶやいた。


 サーシャがこちらに向かって微笑んでいる。

 あたしたちだけでやりましたよ、と言いたげだ。


 実際、彼女たちのおかげで俺は体力を温存できたし、申し分ない戦果だった。


「頼もしい部下たちだな」


 思わず微笑む。


 ──と、そのときだった。


「まだだ!」


 ジュードが叫んだ。


 いまだ周囲が青白い光芒に照らされる中、その輝きの向こうから一体の巨大な影が現れる。

 どうやらスルトを一体撃ち漏らしたらしい。


 傷だらけの魔獣が棍棒を手に突進してきた。

 狙いは、


「し、しまっ──」


 サーシャの頭上に巨大な棍棒が迫る。


 ジュードは間に合わない。

 クルスもさっきスキルを撃ったばかりだ。

 ならば、


「ここでお前を死なせるわけにはいかない」


 俺は全速力で走り、サーシャの前に出た。

 剣を抜き放ち、スキルを発動する。


「【インパルスブレード】!」


 斬撃衝撃波が魔獣をバラバラに吹き飛ばした。

 周囲の街道が大きくえぐれ、小型のクレーターと化す。


「なんて威力だよ、あいかわらず……」

「すさまじいな……」


 クルスとジュードのうめき声が聞こえた。

 賞賛半分、ライバル心半分といったニュアンスが、いかにも血気盛んな若者らしい。


「隊長──」


 一方のサーシャは沈痛な表情でうつむいていた。


「……申し訳ありません。あたしの油断で、お手間を取らせました」

「ただ待っているのも退屈だからな。俺にも少しくらい分けろ」


 サーシャが落ちこまないよう、冗談めかして笑う俺。


 実際、今のスキル発動の後も、疲労感はまったくない。

 休息の効果はあったようだ。


「……ありがとうございます」


 サーシャはようやく微笑んでくれた。


 俺は笑顔でうなずき、周囲を確認する。

 どうやら二番隊も敵を撃退したようだ。


「さあ、王都に急ぐぞ」


 俺は部下たちを促した。


    ※


 突然、王都を急襲した双子の魔剣士。

 彼らの戦闘能力は絶大だった。


 二番隊の同僚である女騎士カリナは、魔剣の力で石化し、砕け散った。

 即死である。


 まともに戦えば、場の騎士たちは全滅するかもしれない──。

 ウェンディは一緒にいたジネットに市民の避難誘導を頼み、自らは魔剣士に突進していった。


 勝算は──ない。


 いや、勝つつもりなどない。

 ただ一秒でも長く敵を足止めできればそれでいい。


 その間に、一人でも多くの人が逃げられたら──それでいい。


「ボクの命を懸けて、君たちはここで食い止める! 【ラピッドムーブ】!」


 吠えて加速するウェンディ。

 速力増加系のスキルである。


 四番隊隊長のアルトゥーレやサーシャが使う【アクセルムーブ】よりワンランク下のスキルではあるが、それでも矢のような加速で魔剣士たちに肉薄する。


「さっきの奴の死にざまを見てなかったのか?」

「君も石になるがいい」


 二人は魔剣を振りかぶった。


「【アローブレード】!」


 その瞬間、ウェンディは二つ目のスキルを発動する。

 振り回した剣から、無数の斬撃衝撃波が放たれた。


「……ちっ」


 攻撃態勢だった二人は、舌打ちまじりに後退した。


 スキルを発動するためには、研ぎ澄まされた『集中力』が必要である。

 その集中状態に入るまでには、タイムラグが生じる。


 いわば、スキルを放つための『溜め』。


 ウェンディが狙ったのはそこだった。


 彼らがスキルを撃つより早く、こちらから攻撃し、相手に攻撃スキルを使う間を与えない──。

 なおもウェンディは機敏に動き回り、牽制のスキルを撃ち続けた。


 とにかく相手のスキルで怖いのは【石化】だ。

 直撃すれば、戦闘不能──かつ死を意味する。


「一つ一つのスキルは並ランクだが、発動が速い……!」

「威力ではなく手数とコンビネーションで押すタイプか……やるな」


 魔剣士たちの顔から笑みが消えた。

 完全に戦闘モードの表情に変わる。


「ならば──」


 二人が魔剣を振りかぶった。


 ばきん。


「えっ……!?」


 手にした剣が突然重くなり、根元から砕けた。


「【石化】!? そんな……発動が早すぎる!?」


 ウェンディは驚愕しつつ、即座に後退した。


「運がいい奴。剣だけで済んだか」

「不完全な集中状態でも、【石化】を放つことは可能だ。全力の集中状態より威力も効果も落ちるけど、ね」


 双子が笑う。


 手数で押し切り、相手にスキルを使う間を与えない──そんな戦法をやすやすと許してくれるほど甘い相手ではなかった、ということか。


「どうする、降参するか?」

「跪いて命乞いをしろ。石化だけは勘弁してやってもいいぞ?」


 魔剣士たちが傲岸に笑った。


「……誰が」


 ウェンディは彼らをにらんだ。

 全身からジワリと汗がにじむ。


 威力や効果が落ちるとはいえ、【石化】を乱れ撃ちされたら、とても防げそうにない。

 このままでは、なすすべなく石に変えられ、殺される──。


「よく時間を稼いでくれた。いい仕事をしたな、ウェンディ」


 救いの声は突然だった。

 驚いて振り返ると、そこには黒髪に赤い瞳をした、美しい少年騎士の姿。


「君は下がっていてくれ。奴らは──俺が斬る」


『黄金世代』の首席にして、史上最年少で九番隊隊長に就任した少年。


 ルーク・レグルがそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ