表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/144

12 帰還、そして

「それにしても……一気にレベルが40以上も上がったのか」


 経験値も、帝国兵4000人以上の数値をたった一度の戦闘で得たことになる。

 もしかして、ここに留まってさっきくらいの神と戦えば、レベルをガンガンあげられるんじゃないか?


「いや、それはできぬ。そろそろ汝が『神聖界』に滞在できる時間も限界だ」


 と、【最高神】。


 どうやらタイムリミットのようなものがあるらしい。

 今の竜神のような相手と立て続けに戦えれば、一番楽なんだが。


「相手がわざと負けても経験値は入らぬ。今の竜神にしても、あくまでも汝を殺すつもりでかかってきた。つまり──神との戦闘で経験値を得るのは、常に命懸けだ」


 俺の内心を読み取ったように説明する【最高神】。

 いや、あるいは本当に心が読めるのかもしれない。

 なにせ神々の王だ。


「当然、一歩間違えば死んでしまうだろう」

「……なるほど」


 ハイリスクハイリターンというわけだ。

 俺は次の質問に移った。


「限界ってことは、いったんこの世界から出なきゃ行けないってことか?」

「そうだ。そして、次に訪れることができるまでに年単位の時間がかかる」


【最高神】が言った。


「年単位──か」


 じゃあ、当分はこの世界を再訪できないわけだ。

 さっきの竜神クラスの相手と戦って、大量の経験値を得るというやり方はどのみち無理のようだった。


「しかし、レベル113であれほどの威力を出すとは」


 ツクヨミが俺を見て、わずかに微笑んだ。


「【光】をより輝かせるのは、人間の意志──君には、それだけの資質が眠っているようだ」

「資質……」


 そう言われてもピンとこない。


 俺はただ、俺自身の想いを乗せて【破軍竜滅斬】を撃っただけだ。


「その力で、魔神たちを討ってくれることを期待する」


 と、ツクヨミ。


「世界のバランスは急速に崩れようとしている──と、この世界で君に再会したときに説明しただろう。魔神は──【闇】に属する者の目的は、世界を暗黒で覆うこと。怒り、悲しみ、憎しみ、絶望──負の心で世界を包むことだ。我らは逆に世界を光で照らすことを目的としている。だが──直接我らが【闇】と戦うことは難しい」

「どういう意味だ?」


 俺は眉根を寄せた。


「我ら【光】の端末は、人間の世界では十全に力を振るうことはできない。一方の魔神たちはどうやったのかは分からんが、人間の世界でもある程度力を振るえるようになりつつある。我らが人の世界に赴いて魔神と戦うことはできぬ。君たち人間に託すしかない」

「それはつまり……俺に世界を救え、って言っているのか」


 もともとはただの中年農夫だった、この俺に。


「イレギュラーな状況とはいえ、君は【光】を授かった。それは運命だ」


 ツクヨミが語る。


 手違いで殺してしまった、なんて言いながら『運命だ』──なんて、ちょっと身勝手じゃないか?

 さすがにそう思った。


 とはいえ、魔神を討伐すること自体は、言われなくてもやるしかないと思う。

 帝国との決戦の際、魔神との戦いはおそらく避けて通れないだろうからな。


 そのための力になるであろう【破軍竜滅斬】を【最高神】から授かったのも助かる。


「すまないと思っている。だが、それでも君に……託す……しか……」


 ツクヨミの声が、急に遠くなった。


 その姿が、急に薄れていく。


 いや、ツクヨミだけじゃない。

【最高神】の姿も同様だ。


 周囲に広がる純白の空間が、徐々に灰色に変わっていく。


 これは──いよいよ『神聖界』にいられる時間がなくなってきた、ってことか。


「武運を祈る。人の子よ」


 今度は【最高神】が言った。


「汝が望む力は与えた。少なくとも、そのきっかけと鍵になるものは。後は、汝自身が昇華し、さらなる力を磨くがよい」

「まずは聖剣を探し、戦力を強化するのがいいだろう──君に」


 ツクヨミが続ける。


「幸あらんことを」




 ──そして。

 俺は元の場所に戻ってきた。


 ツクヨミの説明通り、どうやらこちらでの時間経過はほぼゼロのようだ。


「聖剣を探す、か」


 俺はつぶやいた。


 あらためて考えを整理する。


 帝国の切り札ともいえる魔神との戦い。

 そのために必要な力は、まず俺が【破軍竜滅斬】を自在に使いこなせるようになることだろう。


 理想を言えば、今の俺でも倒せるような弱い魔神から順番に倒していき、レベルを上げる。

 そうやって成長しながら、やがては最強の魔神をも凌駕するほどのレベルまで達し、すべての魔神を片付ける──。


 とはいえ、俺がどの程度まで魔神と戦えるのかは未知数の部分が多すぎる。


 そもそも、魔神は今のところ戦線にほとんど出てこないみたいだからな。


 そして、もう一つが聖剣の存在だ。

 七本あるという聖剣を手に入れ、その使い手を見つけ、俺以外にも魔神と戦える人間を用意する。


 この二つを並立しながら、すべての魔神を確実に殲滅する──。


 それが、俺がこれから目指すべきことなんだろう。

次回から第5章「聖剣探索」になります。明日更新予定です。


【読んでくださった方へのお願い】

ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある☆☆☆☆☆をポチっと押すことで★★★★★になり評価されます。

「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ぜひポチポチっとしていただけましたら励みになります!


「面白くなかった!」ときは(ごめんなさい……)★1でも結構ですので、ポチっとしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かった [気になる点] 続きが読みたい [一言] 作者がんばれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ