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11 決意

 魔剣回収任務から戻ってから二日──。


 心身が、やけに昂ぶっていた。

 体の芯からマグマのような熱が湧き上がってくるような感覚が止まらないのだ。


 魔獣たちとの連戦で、俺の中の【光】が高まった影響だろうか。

 興奮状態がずっと持続している感じである。


 その日の夜、俺はひさびさに王都の娼館を訪れた。

 昂ぶる熱を少しでも収めたかったのだ。


 隊長として高額な給金をもらっているから、金のことは気にせず最高級の娼婦を選んだ。

 めくるめくひと時を過ごし、隊舎に戻る。


 だが──心身の昂ぶりは、大して収まらなかった。

 エネルギーを持て余している感じだ。


「しょうがないから、少し仕事でもしていくか……」

「あ、隊長。こんばんは~」


 隊舎の入り口に一人の少女騎士がいた。

 夜目にも鮮やかな緑色の髪をポニーテールにした美少女──ウェンディだ。

 どうやら訓練帰りらしい。


「どうした、ウェンディ?」

「香水の匂いがします」


 俺に顔を近づけ、くんくんと鼻を鳴らすウェンディ。

 どこか子犬じみた仕草だ。


「さては……今夜はお楽しみでしたね?」


 なぜか、少し不機嫌な顔である。


「怒ってないか、お前?」

「ボク、別に怒ってません」


 ウェンディは、ぷうっ、と頬を膨らませた。

 ……怒ってるじゃないか。


 若い娘らしい潔癖さで、娼館に行くような行為を忌避してるんだろうか。


「隊長は、特定の女性はいないんですか?」


 ウェンディがたずねた。


「年が年だからな」


 肩をすくめる俺。


「そんな相手はいないさ」

「四十過ぎなんて、まだまだこれからの年齢ですよ。隊にだって若い女の子がたくさんいるじゃないですか」

「俺みたいなオッサンを相手にする若い女はいないだろう」

「そんなことないです。っていうか、隊長に憧れている女の子、けっこういますよ」


 まさか、と思って聞き流しておいた。


「第一、俺は隊長だ。仮にそんな機会があっても、隊の女性に手を出したりしない」

「もう……」


 さっきから何を怒っているんだ、ウェンディは。


「相手が必要なら、ボクがいるのに……」


 ポツリとつぶやく彼女。


 まるで、俺に気があるような反応だが、そんなことがあるはずもない。

 大方、俺をからかって楽しんでいるんだろう。


「お前はこれから帰るのか? 夜道に一人歩きは物騒だし、送っていこうか」

「え、隊長と一緒に帰れるんですか? やった!」


 嬉しそうにはしゃぐウェンディ。

 俺の腕にギュッとしがみつき、


「じゃあ、行きましょ」

「おいおい、くっつきすぎだ」


 苦笑しつつ、俺はウェンディと夜道を歩き出した。


 仕事はまあ、無理に今することもないしな。




 翌朝、隊舎に向かう途中でリーザと出会った。


 確か彼女の二番隊は西部地区に出向き、帝国軍と戦っていたはずだ。

 先日、勝利を収めたと聞いたから、王都まで戻って来たんだろう。


「帝国軍を撃退したそうだな。さすがはリーザだ」

「ありがとう。とはいえ、君の活躍には及ばないが」


 俺の言葉に、リーザは微笑んだ。


 金色の髪を高く結い上げた、気品のある美貌。

 あいかわらず、若く凛々しく麗しい美人騎士である。

 こうして話していると、年甲斐もなくドキッとしてしまうほどだ。


「ここ一か月あまり、ミランシアの国境沿いに攻めこんできていた部隊が、次々と撤退してるようだ」


 と、リーザ。


「戦線に複数の魔獣や数人の猛将を投入し、一気に押し切る算段だったんだろう。だが奴らの予想外に、我らが粘った。それどころか押し返した。これについては君の活躍も大きいな」


 微笑む女騎士。


「帝国としてはいったん態勢を立て直そうということだろう」

「態勢を立て直す……か」


 つまり、次に帝国が攻勢をかけるときは──もっと強大な戦力で来るかもしれない。

 猛将や魔獣クラスなら、レベル100を超えた今の俺にはそうそう負けることはないだろう。


 だが、魔神は別だ。


「帝国はなぜ魔神を戦線に送りこまないんだ?」


 以前からの疑問だった。


「……それは分からない。人知を超えた力を持つ魔神を、奴らは十七柱も従えているそうだ。それらをすべて繰り出せば、ミランシアは一瞬で滅ぶかもしれない」


 リーザは暗い顔でため息をついた。


 ラロッカで戦った魔獣キマイラは言っていた。

 自分たち魔獣のレベルは40から100くらいだ、と。


 そんな魔獣を従えている魔神のレベルは、推して知るべしだろう。

 今の俺でも、おそらくは立ち向かえない強さに違いない。


「もっと力が必要だな」


 戦闘を繰り返し、レベルを上げるのは継続してやっていくが、それだけでは足りないかもしれない。


 レベルアップに必要な経験値は、レベルが高くなるにつれて多くなる。

 これからは、今までほど急速なレベルアップはできないかもしれない。


 もう一つの強化方法──【闇】との戦い、というのもあるが、これは帝国側が【闇】に属する敵を送りこんでこない限り取れない方法だ。


 ならば、さらに別の手段として──。


「行ってみるか」


 先日のスキルメッセージを思い返す。


 神の世界への、扉。


『神聖界』に入り、俺がもっと強くなる方法を探ってみよう。


次回から第4章「異界突入」になります。明日更新予定です。

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