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9 【光】VS【闇】

「いっくよー、おじさん!」


 ミスティが二本の魔剣を手に斬りかかってきた。


 速い──。

 自身のレベルが100近いと豪語するだけあって、今まで戦ってきた敵たちとは別格だ。


「【ソードラッシュ】!」


 連続斬撃スキルを発動したミスティに、俺は同じく【ソードラッシュ】で対抗する。


 俺たちの間で無数の金属音が連続して鳴り響く。


 目にも止まらぬ速さで繰り出される互いの斬撃。

 斬り、払い、薙ぎ、突き──それらを防ぎ、いなし、ときにはカウンターを放つ。


 五十合、百合と打ち合いながら、俺はジリジリと後退した。


 斬撃の速さ、重さともに、俺の方が多少上回っているようだ。


 ただし、問題は得物だ。

 ミスティが持つ魔剣に対し、俺の武器は普通の剣。

 数百にわたる打ち合いで刃がこぼれ、刀身が軋む。


 このままでは遠からず壊れるだろう。

 その前に勝負をかけるか。

 あるいは──。


 考えたそのとき、べきん、と音を立てて、俺の剣が半ばから折れ飛んだ。

 ちいっ、思った以上に剣がダメージを受けていたか。


「ここまでだね。あたしの武器が魔剣じゃなければ、たぶん負けてたよ」


 ミスティが勝ち誇ったように笑った。

 掲げた二本の魔剣が、ひときわまばゆい輝きを発する。


 来る──。

 俺は身構えた。


「魔剣スキル──【戒めの鎖】! そして【死の刃舞(じんぶ)】!」


 拘束系と斬撃系の二連攻撃か!

 ミスティの左の魔剣から紫色の鎖が放たれ、右の魔剣は十六に分裂するほどの超高速連撃を放つ。


「【ソニックフィスト】!」


 俺は手持ちのスキルの中で最速の攻撃を発動した。

 彼女の【戒めの鎖】による身体能力低下と、【ソニックフィスト】による一時的な速度上昇がちょうど相殺する。


 それでも、俺にはレベル100近い能力がある。


 四肢を鎖で縛られたまま、構わず突進。

 十六の斬撃をかいくぐりつつ、拳撃を繰り出した。


「ぐ、あ……っ」


 彼女の悲鳴が響く。


 俺の拳が、華奢な少女の胸元を貫いたのだ。

 肉を裂き、内臓を潰す感触があった。


「うう……」


 同じレベル100近い能力といっても、身体能力は俺に分があったようだ。

 ミスティは胸元から大量の血を吹き出しながら倒れた。


 俺は四肢に巻きついた紫の鎖を引きちぎり、彼女に近づいていく。


「まだ……だ……!」


 ミスティは胸元を押さえながら、よろよろと立ち上がった。


「あたしは──負けない! ルシオラ様の命令を果たす! たとえ、この命が尽きようと──」


 すさまじい執念だ。

 といっても、体中がふらついているし、魔剣を持つのがやっとという感じだった。


 放っておいても失血死するかもしれないが……。


「もうよせ。今、楽にしてやる」


 俺は警戒しつつ近づいていく。


「ん……!?」


 ふいに、胸の奥で何かが蠢く感覚があった。


 この感覚は、なんだ……?


「ふざけるな! あたしは負けない──」


 ミスティが叫んだ。


「魔剣よ! 我が主ルシオラ様の剣よ! あたしに力を!」


 ヴ……ン!

 二本の魔剣がうなるような音を立てて振動した。


「あの方への恩を果たすため! 『お母様』の役に立つために──あたしの命を燃やし尽くそうとも、敵を倒すための力を与えて!」


 その、瞬間。


「っ!?」


 俺は得体の知れない悪寒を覚えて、後方に跳んだ。


「さあ──第二ラウンドを始めよっか」


 ミスティが笑った。


 魔獣少女の全身から黒い光がオーラとなってほとばしる。

 金色の髪は黒く、瞳は青から赤へと変化する。


 その姿が、消えた。


「っ……!?」


 俺でさえ、一瞬姿を見失うほどの超速移動。

 気が付いたときには、眼前にミスティの姿があった。


 二本の魔剣が閃く。


 俺の剣はすでに折れている。

 防御は不可能だ。


「このっ……!」


 俺はとっさに彼女の両腕をつかんで斬撃を止めた。


 みしっ、と全身が軋む感覚。

 さっきまでとは比べ物にならないほど、ミスティの筋力が上がっている。


 このまま押し切られて両断されるのではないか、と戦慄するほどに。

 だが──、


「ぐっ!?」


 吹き飛ばされたのは、ミスティの方だった。


 俺の体から黄金の輝きが湧き上がる。


 力が、湧いてくる。

 さっきと同じく、胸の奥で何かが蠢く感覚。


 あれは──俺の中から、さらなる力が湧き出る兆しだったのか。


「なるほど、【光】と【闇】は高め合う、か……」


 つぶやく俺。


 ミスティが力を増したように、俺の力も引き上げられていたんだろう。

 振り返ってみれば、魔剣使いの帝国騎士たちと戦ったときにも似たような現象があった。


 あれも、同様の理由だったのか。


「なんで、たかが人間が──」


 ミスティは二本の魔剣を手に、ふたたび斬りかかってきた。


 だが──遅い!

 俺は身を低くして突進する。


 力が、あふれる。

 全身の血が燃え上がる。


「【ディフェンダー】!」


 手持ちのスキルの中で、もっとも防御力が高いスキルでミスティの魔剣を弾いた。


「【パワーナックル】!」


 そして渾身の力を込めた拳をカウンターで顔面に叩きこむ。


 先ほどミスティが繰り出したのと同じ、二連続スキル発動だ。

 べきん、とミスティのか細い首がへし折れる音がした。


「っ……ぁ……ぎ、ぃ……」


 床の上で激しくバウンドした魔獣少女は、途切れ途切れの苦鳴をもらし、倒れ、そして動かなくなった。


「はあ、はあ、はあ……やった、か」




『魔獣×1との戦闘に勝利、経験値2500を取得しました』

『スキル効果により経験値2500000として取得されます』

『総合経験値が16864000→19364000になりました』

『術者のレベルが99→104に上がりました』

『次のレベルまでの必要経験値は残り484500です』

『レベル100に到達したため、「神聖界(しんせいかい)」への扉を開くことができます。今すぐ開きますか? Y/N』




「神聖界……?」


 今までのレベルアップメッセージで、初めて聞く単語だった。

読んでくださったみなさま、ありがとうございました! おかげさまで、なろうのトップページ(ジャンル別)で7位に上がりました! とてもうれしいです(*´∀`*)

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