表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/144

5 魔獣キマイラ1

今日のランキング更新でなろうのトップページ(ジャンル別:ハイファンタジー)に載っていました。リニューアル後、一度は載ってみたいと思っていたので、とても嬉しいです! ありがとうございます!

 俺は二頭のキマイラの前に立った。


 まずこいつらをなるべく短時間で討ち、さらに敵軍の中央に突撃して陣形を崩す──十二番隊隊長としての初陣でやったのと似たような戦法だ。

 ……単なる力押しとも言うが。


「ほう、【光】の力を持つイレギュラーか」

「しかも90近いレベルに達している……人間にしては大したものだ」


 二頭のキマイラが俺を見て感心したようにつぶやいた。


 こいつもマンティコアと同じく人語を解するタイプの魔獣か。

 いや、そもそも魔獣というのは、人間と同等の知力を備えているのかもしれないな。


「我らのレベルは70ほど。正面からの勝負ではお前に勝てぬ」

「随分と潔いな」


 というか、俺以外の奴のレベルを聞いたのは初めてだ。


「一般的な尺度として──兵士級のレベルが1~5程度、騎士なら5~10、上級騎士が10~20、猛将は20~50といった感じだ」

「我ら魔獣は40~100程度。個体によっては現在のお前を上回る者もいようが、我らでは敵わぬ」

「じゃあ、さっそくで悪いが討たせてもらう」


 長話をしている場合じゃない。

 こいつらの後ろから帝国軍が次々と押し寄せてくるんだ。


「我らを殺すか。それもいい。だが──」

「たとえ我らを討ったところで、お前程度のレベルでは魔神様には絶対に敵わぬ」


 キマイラたちが体を揺らして笑う。


「魔神……だと」


 俺は思わず動きを止めた。


 魔神。

 異界に住むという伝説の超存在。


 帝国に十七柱いるというそれらは、この百年戦争においてミランシアに立ちはだかる最大の障壁だろう。


「なぜなら、魔神様のレベルは──」

「マリウス隊長、私たちも!」


 と、リズ、サーナ、ララの三人娘がやって来た。

 来るなと言ったのに、俺を追いかけてきたのか。


「魔獣は俺一人で相手をする。お前たちは他の兵を担当してくれ」

「あたしたちだって九番隊の上位席次なんですよ。お役に立ってみせます」


 にっこりと笑ったのは、金髪の朗らかな少女騎士ララだ。


「敵戦力の要は二体の魔獣。マリウス隊長の強さは承知していますが、連携して倒した方がより早く決着がつくと思います」


 リズが言った。


「どうか、私たちにも手伝わせてください。黄金世代の力、見せてあげます!」


 黄金世代──か。


 若く才能あふれる騎士たち。

 自信に満ちあふれた彼女たちを見ていると、俺はどこか危うさを感じてしまう。


 それは、俺自身がそういったエリートとはほど遠い人生を歩んできたからだろうか。

 人生は上がり調子がずっと続くわけじゃない。

 時には挫折することもある……いや、挫折の方がずっと多いかもしれない。


 その挫折とは……戦場では『死』かもしれない。

 どうしても嫌な予感が頭をよぎるのだ。


「どうか、私たちをもう少し信用してください」


 リズが詰め寄った。


「信用しないわけじゃないが、しかし……」

「では、証明します。私たちの力を!」


 進み出たのは、青髪の少女騎士サーナだ。

 三人の中で一番勝ち気そうな表情が、闘志に満ちあふれていた。


 二頭のキマイラのうち、俺たちに近い方に剣を向ける。


「【スロウ】!」


 凛とした声で叫ぶサーナ。


「むう……体が……」


 キマイラの体が硬直した。

 確かこれは、相手の身体能力を低下させるデバフ系のスキルだったか。


「さあ、マリウス隊長、今です!」


 サーナが俺に向かって親指を立てる。

 なるほど、こういう連携もあるのか。


「おのれ、卑劣な──」


 うめくキマイラ。


 こいつらの話では、普通に戦ってもレベル差で俺が勝つんだろうが……デバフをかけてもらえれば、より容易に、より短時間で倒すことができるだろう。


「悪いが、俺には騎士道精神なんてない。正々堂々なんて言ってる間に、味方が死ぬなら」


 剣を振りかぶり、スキルを発動した。


「どんな手を使ってでも、手っ取り早く駆逐させてもらう! 【インパルスブレード】!」


 斬撃とともに衝撃波を放つ。

 二体のうちの一体が、バラバラに切り刻まれて吹っ飛んだ。


「まず一つ! 次は──」


 数メートル先にいるもう一頭のキマイラに視線を向ける。


「──馬鹿め」


 そのキマイラが体を揺らして笑う。

 同時に、全身がバラバラになりそうな衝撃が走り抜けた。


「なんだ、これは……!?」

「スキル【末期(まつご)の呪殺】」


 告げるキマイラ。


「キマイラ族は体内に一種の呪いをかけていてな。我らを殺した者は、相応のダメージを追う。殺しにかかわった者、すべてが」

「何……!?」


 ということは、さっきデバフをかけてくれたサーナも……!?


「ぐ、ぎゃあっ!?」


 可憐な美少女らしからぬ苦鳴が響いた。


「サーナ!」


 俺やリズ、ララがいっせいに声を上げた。

 その眼前で──、


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ……!?」


 サーナの腕が、足が、不自然な方向に折れ曲がり、さらに首がねじ曲がった。

 そのまま倒れた彼女は、もはやピクリとも動かない。


 即死だった。


「ふん、その娘のレベルは30程度。お前はなんとか耐えた呪殺スキルも、こいつには致命的な現象を引き起こしたようだな」


 キマイラが鼻を鳴らした。


「うわああああああああああああっ、よくもぉぉっ!」


 リズが突っこむ。

 眼鏡の奥の瞳を涙に濡らし、


「サーナの仇! 【パワーブレード】!」


 赤く輝く剣を振り回し、キマイラに叩きつける。


「【リフレクション】」

「【バインド】」

「【ファイアバレット】」


 獅子、山羊、蛇の三つの頭が同時にスキル名を告げた。


 こいつ──!?

 同時に三つのスキルを操れるのか!


【パワーブレード】の斬撃が不可視の防御壁──【リフレクション】によって止められ、弾かれる。

 地面から生えた無数の植物の根──【バインド】スキルが彼女の四肢に巻きつき、拘束する。

 身動きが取れなくなったところで、巨大な火球──【ファイアバレット】がまっすぐ彼女へと向かった。


「ひ、ひいっ……」


 恐怖の声を上げるリズ。

 回避不能の状態で巨大火球が彼女に迫り──、


「【ルーンスラッシュ】!」


 突進した俺が横合いから叩きつけた斬撃によって、火球は真っ二つになった。

「面白かった」「続きが読みたい」と思っていただけましたら、感想やブックマーク、最新話の下部にあるポイント評価を押していただけると励みになります(*´∀`*)


日間総合ランキングでの10ポイントはとても大きいので、ぜひよろしくお願いします~!

※ポイント評価欄は最新話の広告の下にあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ