2 復讐の殺戮
夜のランキングで日間ハイファンタジー10位、日間総合37位に入っていました。
予想よりずっと多くの方に読んでいただけたようで、ただただ感謝です。ありがとうございました!
引き続きがんばります~!
俺は残りの帝国兵と向き合った。
「【パワーナックル】!」
ふたたび俺の拳が輝くエネルギーに包まれる。
今度はさっきのスキルとは違い、赤い光だ。
「砕けろっ!」
気合とともに、前方の兵士たちに拳を叩きつけた。
「がは……ぁ……」
三人の兵士を鋼鉄の鎧ごと打ち砕き、吹き飛ばす。
一人は胸元が、一人はみぞおちが、最後の一人は顔面が。
それぞれ大きく陥没し、即死していた。
最初のスキルより、こっちのほうが威力がある。
──なるほど、最初のが『ダメージ:小』で、今のは『ダメージ:中』だからか。
「【ソニックフィスト】!」
俺は三つ目のスキルを発動させた。
両拳が緑色の光に包まれる。
さらに両足も同色の光がまとわりついた。
どんっ!
地面を蹴りつけ、一直線に駆ける。
まさしく音を超える速さで走り抜けつつ、五人の兵士たちに拳を繰り出した。
「がぅっ!?」
「ぐぁっ!?」
顔面や胸元を砕き、骨や肉片を飛び散らせながら、全員を一撃で殴り殺す。
これは音速で動きつつ、攻撃するという合わせ技のようなスキルか。
大体、分かってきた。
残りは三人。
俺はふたたび【パワーナックル】を繰り出した。
連中の苦鳴と悲鳴が響き──。
周囲には、十二人の帝国兵の死体が転がった。
『帝国兵×12との戦闘に勝利、経験値120を取得しました』
『スキル効果により経験値120000として取得されます』
『総合経験値が36000→156000になりました』
『術者のレベルが11→20に上がりました』
『次のレベルまでの必要経験値は残り21100です』
勝っても負けても、戦闘ごとに経験値が入る、ということだろうか。
あっという間にレベル20まで上がったわけだ。
どれくらい強くなったのか分からないが、とりあえず俺は走りだした。
スピードは小走り程度。
全力疾走すると、帝国兵と出会ったときに息が切れた状態で戦うことになるからな。
小走りといっても、レベル20になって俺のスピードはさらに上がっているようだ。
普段の全力疾走の十倍以上の速度で村の中を駆け抜ける。
「きゃぁぁぁぁっ……」
広場のほうから、かすかな悲鳴が聞こえた。
俺はスピードを上げて、広場まで駆けつける。
十数人の村娘が折り重なって倒れていた。
全員が血まみれでこと切れている。
それを為した兵士たちは満足げに談笑していた。
まるで、狩りでも楽しむかのように。
「お前ら……!」
俺は兵たちに歩み寄った。
「なんだ、おっさん」
「へえ、まだ生きてる奴がいたのか」
「ちっ、女なら楽しめたのに……むさいおっさんじゃねーか」
「おいおい、さっきさんざん楽しんだのに、まだ満足してないのかよ?」
楽しげな兵たちの会話に、気分が悪くなった。
こいつらは暴力と略奪を、ただ楽しんでいるんだ。
生きている資格なんてない外道だ。
「【ソニックフィスト】!」
俺はスキルを発動した。
音速の動きで、奴らの間を駆け抜ける。
すれ違いざまに放った拳を、奴らのみぞおちに叩きこむ。
「ぐ……ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「がああああああああ、い、いてえええええええええええっ!」
兵士たちが苦鳴を上げた。
たぶん内臓が破裂しているだろう。
「せいぜい、苦しんで死ね」
それがお前たちの罪の報いだ。
全員、数分間のた打ち回った末に死んだ。
『帝国兵×5との戦闘に勝利、経験値50を取得しました』
『スキル効果により経験値50000として取得されます』
『総合経験値が156000→206000になりました』
『術者のレベルが20→22に上がりました』
『次のレベルまでの必要経験値は残り24000です』
「──次だ」
この様子だと、村は全滅かもしれない。
それでも、俺はふたたび走り出した。
一人でも生き残りがいれば、助けたい。
その一心で。
半日後。
俺は一人、途方に暮れていた。
見上げれば、雲一つない夜空に淡い月光がきらめいている。
結局、村で生き残った者はいなかった。
皆殺しにされていた。
報復として帝国の兵も全員殺したが──。
仇を討ったことによる安堵感とも達成感ともつかない気持ちはあった。
が、爽快感は皆無だ。
喜びも、昂揚感も、何もなかった。
「空しい……」
強烈な喪失感が、あらためてこみ上げる。
帝国兵を皆殺しにしたところで、メルやアルマ、トレミー、そして村人たちは帰ってこない。
「これから、どうすればいいんだ……」
突然、故郷を失ってしまった。
平穏に生きていくことさえ、許されないのか。
不意に怒りがこみ上げる。
理不尽だと思った。
「俺たちが一体何をしたっていうんだ……!」
なぜ、こんなにも一方的に。
暴力的に。
残酷に。
無惨に。
理不尽に。
みんなが殺されなきゃならない。
許せない。
帝国兵を皆殺しにすることでいったん落ち着いたはずの怒りや悲しみが、ふたたび燃え上がる。
憎悪や復讐心があふれ返る。
「……そうだ、一つだけあったな。今後の目標」
俺は笑った。
なぜだか腹の底から、笑いが込み上げてきた。
天を見上げ、いつまでも哄笑していた。
きっと、こいつらは帝国の一部隊だろう。
たぶん本隊がいるはずだ。
「……そいつらも、皆殺しだ」
胸の奥に燃え盛る、ドロドロとした攻撃的な衝動。
全員、殺してやる。
滅ぼしてやる。
みんなの弔いだ。
「今の俺なら──できるはずだ」
手に入れた、この力なら。
帝国兵を皆殺しにすることも。
噂に聞く帝国の切り札──『魔神』を倒すことさえ、できるかもしれない。
俺は殺されたメルやアルマ、トレミー、そして村のみんなの埋葬を済ませた。
一人じゃ大した墓は作れないが、それでも弔うことができるのは俺だけだからな。
どうか安らかに。
祈りを捧げ、気持ちを切り替える。
「……行くか」
俺はとりあえず隣町に向かって出発した。
この地域を攻めている帝国軍の情報を集めるためだ。
【お知らせ】
『Sランクパーティを追放された俺は、真の力に目覚めて史上最強の賢者になる。今さら戻ってこいと言われても、もう遅い。九つの魔導書(全員美少女)とともに、自由気ままに生きていく。』を連載中です。
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