5 帝城突入
俺たちの進撃は続く。
途中、何か所か帝国軍が立ちはだかったが、すべて俺が蹴散らした。
戦術も何もない。
大技連発で敵兵を片っ端から薙ぎ倒していくだけである。
身も蓋もない戦い方だが、結局のところこれが一番強くて効率的だった。
そして――ついに帝都中心部へとやって来た。
「ここが皇帝の城か」
皇帝の居城前で馬を止める俺たち。
「リーザ、ルーク、隊の指揮をお前たちに任せていいか?」
正門前で止まると、俺はリーザとルークにそう頼んだ。
「私たちに……? マリウスはどうするんだ?」
「一人で城に突入する」
「そんな!? いくらマリウス隊長でも――」
ルークが叫んだ。
「無茶です」
「かもな。けど、勝算は十分にある」
俺はルークに言った。
「それに……悪いが、ここから先はお前たちでもついてこられない」
「えっ」
「城にいるのはガイアス皇帝。そしてそれを護衛しているのは最強の魔神だろう」
俺の言葉にリーザとルークは息を飲む。
「魔神の強さはお前たちが一番知っているはずだ。ここは自重してくれ」
以前の戦いではリーザやルークと共闘したこともある。
だけど、その戦いを通じて俺はさらにレベルを上げた。
はっきり言って、もはや二人でも俺にはついてこられない。
聖剣を持っていても、なお……。
「……だが、君は」
「俺は大丈夫だ。いざとなれば逃げる。それよりリーザやルークという聖剣使いを失いたくない。王国にとって最重要戦力だ」
「納得できない部分もあるが、どうせ言っても聞かないんだろう?」
リーザがため息をついた。
「条件が一つだけ。君が生き残ることを最優先してくれ。戦力というなら、君こそが最重要戦力だ」
「そうですよ。絶対に死なないでくださいね……!」
ルークも俺を見つめる。
「分かった。勝てそうになければ、一目散に逃げるさ」
俺は小さく笑い、二人に別れを告げた。
次は、メルだ。
「メルは避難していてくれ」
俺の背にしがみつき、馬に乗っているメルに言った。
ここまでは傷一つなく無事である。
「……おじさん一人で行くの?」
「ここから先は、さすがに危険だ。おそらく――皇帝の側には精鋭の魔神がいるだろう」
まず間違いなく、自分の護衛として最強の魔神を置いているはずだ。
「巻き添えは出したくない。俺一人で戦う」
俺は道すがら出会う敵兵を片っ端から斬り伏せていった。
城内を守るだけあって精鋭なんだろうが、俺の前にはただの雑兵と何ら変わりない。
苦も無く最上階まで到着した。
その最奥の部屋にある扉を開く。
「これは――?」
部屋の中は薄暗かった。
無数のろうそくが辺りを照らしている。
床には巨大な魔法陣が描かれていた。
そして中心部にはローブ姿の男が一人。
「おのれ……あと少しで魔神王を呼び出せるものを――」
振り返った男は憎々しげに俺をにらむ。
「……お前がガイアス皇帝か」
「いかにも。余がこのガイアス帝国を統べる皇帝である――魔神王の復活は絶対に阻止させんぞ」
「魔神王……?」
「【闇】の深淵にたどり着きし存在……魔神を統べる者……それさえ従えれば、この地上のみならず、神界や魔界ですらも我がものに――」
ざしゅっ……。
唐突に――皇帝の首が宙を舞った。
切断部から噴水のように血を吹き出し、皇帝の胴から下が倒れ伏す。
血だまりが床に広がっていく。
「なっ……!?」
驚く俺の前に、黒いシルエットが出現した。
全身に黒い甲冑を着込んだ騎士。
「お前は――」
「ゼイヴァ」
黒騎士が短く答える。
「魔神の頂点に立つ者だ」
「頂点……だと」
確かにこいつは、今までの魔神とは雰囲気が違う。
威圧感や存在感がまるで違っていた。
「皇帝には利用価値があった。我らの王をこの世界に呼び出す、と。そしてその役目は終わった」
と、ゼイヴァ。
「どういう意味だ……?」
「お前をここまでおびき寄せたからだ」
ゼイヴァが俺を見据える。
「最強の魔神である俺と、人でありながら魔神を超える存在となったお前――俺たち二人がいれば、魔神王様の封印を解けるだろう」
「封印、だと」
「もともとはガイアス皇帝がやろうとしていたことだ。俺たち魔神の力を吸い取り、収斂し、封印の門を破壊しようとしていた」
ゼイヴァが語る。
「魔神を戦争などにほとんど投入しなかったのは、そのためだ。封印を破ることこそが最優先事項だったからな。だが、魔神を温存するよりも、お前という強者をこの場に連れてくる方が、封印を破るには手っ取り早いと判明した」
「俺を……?」
「だから、皇帝は方針を変え、お前に魔神をぶつけていった。お前をさらに強くするために――」
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