3 無双に次ぐ無双2
SIDE ラガッハ
「化け物か、こいつ……!」
帝国の猛将ラガッハは戦慄していた。
正面には三千の騎兵が陣取っている。
向かってくるのは、一人の王国騎士。
そのたった一人に、三千の自軍が蹴散らされていく。
マリウス・ファーマ。
何体もの魔神を屠ったという王国最強騎士だ。
「があっ……!?」
苦鳴とともに、数名の騎士がここまで吹き飛ばされてきた。
全員、即死だ。
その中に見覚えのある騎士がいた。
「アリア――」
彼と同じ猛将の地位にある者。
そして、ひそかな想いを抱いていた相手だ。
そのアリアは驚愕の表情のままこと切れていた。
生首だけが、転がっている。
首から下は、ぐちゃぐちゃに吹き飛ばされたらしい。
他の騎士も似たようなものだ。
マリウスが放つ衝撃波系の攻撃によって、片っ端から味方が吹き飛ばされていく。
近づくことさえできない。
「ラガッハ様、お逃げくださ……ぎゃぁぁぁっ……!」
悲鳴が聞こえ、ラガッハはハッと意識を戻した。
味方がさらに蹴散らされ、気が付けば、自分が最前列だった。
十数メートル前方に、黒髪の中年騎士の姿がある。
全身に返り血を浴びたその姿は、悪鬼そのものだった。
凛々しくも涼しげな顔立ち。
眼光は鋭く、こちらを憎々しげににらんでいる。
「そろそろ全滅だな」
マリウスが剣を振り上げた。
ばきん。
刀身が寿命を迎えたのか、折れてしまった。
「これで四本目か」
小さく肩をすくめたマリウスは、背中から新たな剣を取り出した。
強烈なスキルを連打しているため、剣の方が持たないのだろう。
あらかじめ何本も予備を持ってきているらしい。
「まあ、全部なくなれば、お前たちから適当に拝借するか――というわけで、死ね」
マリウスが剣を振るう。
ほとばしる衝撃波に――逃げ場はなかった。
人生の最期とは、かくもあっけないものか。
劇的な出来事などなく、ただゴミのように蹴散らされるだけ。
きっと自分の人生など――いや、大多数の人間の生とは、そんな程度のものなのだろう。
「っ……」
ラガッハは悲鳴すら上げられず、その一撃に飲みこまれ――そこで意識が霧散した。
※
俺は四種の【豪刃】スキルを立て続けに放った。
すでにレベル600を超えた俺の四撃が、帝国軍の陣形中央を突き崩す。
今の攻撃で数百人――いや、千人以上は死んだだろう。
「蹴散らす」
俺は帝国軍に宣言した。
その宣言通りに、範囲攻撃で一方的な殺戮を繰り返し、中央を突破する。
と、
「人間が調子に乗り追って……ここから先は通さん!」
ずらり、と五体もの魔神が立ちはだかった。
さすがに帝国本土だ。
魔神も次から次へと出てくるな。
「蹴散らしてやる――」
俺は闘志を高めた。
『ブラック国家を追放されたけど【全自動・英霊召喚】があるから何も困らない。最強クラスの英霊1000体が知らないうちに仕事を片付けてくれるし、みんな優しくて居心地いいんで、今さら元の国には戻りません。』
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