14 決戦、終結
俺は攻撃スキルを連発し、敵兵を掃討しながら進んだ。
ルシオラを倒したことで、俺のレベルは600を超えた。
もはや普通の人間とのレベル差は圧倒的だ。
周囲一帯を薙ぎ払い、見渡す範囲では敵兵が一人もいなくなった。
ほとんどを殺しつくし、わずかに残った兵も逃げて行ったのだ。
「マリウス隊長!」
ウェンディとサーシャが駆けてくる。
傷だらけだが、無事のようだ。
「あの……クルスさんとジュードさんが……」
「魔神を相手に、奮戦したのですが……」
二人が泣きながら報告する。
「……そうか」
俺は唇をかみしめた。
もう誰も死なせない――。
その思いで剣を振るい、強くなってきた。
だけど、それでも守れなかった。
「……お前たちは後方に下がっていろ。十二番隊の全員にも伝えてくれ」
俺は二人に言った。
「隊長は……?」
「俺は残った敵兵を殺し続ける。奴らが降伏するまでは」
心の中にドス黒い憎悪と怒りが燃え上がるのを感じる。
奴らは俺の周囲の人間を殺す。
これ以上そうさせないように――。
「俺が奴らを狩り尽くす」
「マリウス隊長――」
ウェンディとサーシャが息を飲んだ。
二人の顔に、今の俺はどう映っているだろうか。
いや、そんなことはどうでもいい。
「お前たちはもう戦うな。後の戦いは俺一人でやる」
そして――。
帝国との一大決戦は、俺たちミランシアの大勝利に終わった。
特に、俺がヴァイツたち三体を仕留め、さらにルシオラをも倒した後の、自軍の死者はゼロ。
一方的に帝国を追い払ったような形だ。
俺は王から多くの報奨や勲章などをもらった。
世間は俺を英雄と持てはやしている。
王国を勝利に導いた英雄騎士だ、と。
実際、俺を聖竜騎士団の総隊長に推す声も日増しに強まっていた。
中には王女を娶り、この国の王に――なんて声まで聞こえ始めたくらいだ。
さすがに、そんな気はまったくないが……。
出世や権力を得るために戦ってきたわけじゃない。
最初は、殺された妹夫婦やメル、村人たちの復讐のために。
そこから周囲の人々を救ったり、仲間や部下たちを死なせたくないという思いへと移り変わっていった。
そう、守りたいんだ。
俺は、俺が大切に思う人たちを守りたい。
そのために、敵を退ける。
敵を、殺す。
その一心で剣を振るってきた。
「あと一歩だ――」
半ば無意識に、俺はつぶやいていた。
「あと一歩? どうした、マリウス?」
リーザが不思議そうに俺を見つめる。
今は隊長会議の真っ最中だった。
「……このまま帝都を落としたら、戦争はどうなる?」
「えっ」
「今回の戦いでミランシアは全面的な勝利を収めた。だけど帝国にはまだ兵がいる。魔神だってまだいるだろう。戦争そのものが終わったわけじゃない」
俺はリーザを見つめた。
「戦争を完全に終わらせたいんだ」
「それは……帝都を落とせば、さすがに戦争は終わるんじゃないか? 講和ではなく征服という形になるかもしれないが……」
リーザは困惑の表情だった。
「マリウス、君は何を言いたいんだ? 仮定の話をしているのか? それとも――」
「仮定じゃないさ」
俺は静かに首を振る。
今の俺の力なら――それは仮定じゃない。
実現可能な、戦略の一つなんだ――。
次回から第12章になります。本作は12章にて完結となります。
今しばらくお付き合いいただけましたら幸いです。
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