11 竜魔神戦、決着
「信じられん……たかが人間が、こんな……!」
「修行の成果が出たみたいだな」
俺は油断なく剣を構える。
神聖界での竜神との修行で、俺は大幅にレベルを上げることができた。
正直こうなることを狙ったわけじゃないし、想定したわけでもない。
神聖界に入ることができたのは、本当に偶然だからな。
ただ、その機会を十分に活かせたと思う。
もし神聖界での修業がなかったら――それ以前のレベルのままだったなら。
おそらく、ヴァイツには勝てなかったんじゃないだろうか。
それほどまでに、竜魔神からは強大なパワーを感じる。
「お前を倒して、俺はさらに強くなる――」
剣を振り上げた。
タフなこいつでも、さすがに首を刎ねれば死ぬだろう。
「これが最後の攻防だ!」
俺は地面を蹴り、竜魔神に向かって跳んだ。
「ぬおおおおおおっ!」
ヴァイツが雄たけびとともにドラゴンブレスを放つ。
「【サイクロンブレード】!」
斬撃で竜巻を生み出し、それを吹き散らす俺。
なおも空中を突き進み、ヴァイツの首筋に剣を叩きつける。
がぎんっ。
鈍い衝撃とともに、剣がはじき返された。
「無駄だ! 首筋は特に鱗の防備が堅い! いくらお前でも簡単に斬れはしねーよ!」
「剣が通らない……か。ならば」
俺はもう一度、剣を振りかぶった。
――そろそろ待機時間が解けているころだ。
ジゼルグ戦で使った、あのスキルをふたたび発動する。
「【ディメンションブレード】!」
「な……に……!?」
空間に亀裂を作る、斬撃。
その亀裂が生じるポイントを、ヴァイツの首筋辺りに設定する。
ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃっ……!
鉄が軋むような音を立て、竜魔神の首筋が裂けた。
どれほど頑強な鱗でも、空間そのものを断裂する一撃には耐えられない。
耐えられるはずがない。
ぼとん。
次の瞬間、ヴァイツの首が断ち切られ、地面に落ちた。
「ふうっ……」
大きく息をつく。
先ほどの攻防に耐えられなかったのか、剣が粉々に砕け散った。
俺は背中から予備の剣を抜き、掲げた。
「戦場に現れた三体の魔神はすべて討伐した。残るは帝国軍――人間の騎士や兵士のみ!」
朗々とした声で叫んだ。
味方全軍の士気を高めるために――。
魔神を倒したという事実を、周囲に知らしめる。
「もはや我らの勝利は見えた! 全軍突き進め! 俺に続け!」
叫び、俺はみずから先陣を切る。
ここから先の俺の役目は、先頭を突っ切ること。
王国軍の象徴のような役割を果たし、この背中で味方を勇気づけることだ。
「いくぞ。この戦い、必ず俺たちの勝利で終わらせる」
それも圧勝で。
可能な限り帝国軍にダメージを与えるんだ――。