11 聖剣オーディン探索行3
「はああああああああああっ!」
ルークが鍔迫り合いの状態から押す。
「──むっ」
ガラードの表情が変わった。
「これほどの力を……!?」
さらに、押す。
魔神は大きく後退した。
「いくら血肉の一部が我らと同じとはいえ、ここまでの力をお持ちとは」
言って、左手を突き出す魔神。
「近づくのは危険かもしれませんね」
ぞくり。
ルークの背筋に寒気が走った。
「魔神スキル【見えざる刃】」
来る──。
カーライルたちを殺した、不可視の攻撃が。
「聖剣スキル【氷輪の心眼】」
リーザが静かに告げた。
「見えた──」
そして聖剣を一閃。
ガラードの周囲で小爆発が連続して起きた。
「リーザ隊長……!」
正直、助かった。
やはり聖剣使いである彼女の存在は、このメンバーの中でも『大黒柱』とも呼ぶべきものだった。
「むっ、私の【見えざる刃】が……!?」
「無駄だ」
リーザが聖剣を振り下ろした体勢で告げた。
「さっきは初見ゆえに防げず、部下たちを犠牲にしてしまった。だが、一度見せてもらった以上、もう通用しない。私の【心眼】の前には、な」
「これが聖剣使いの力、ですか。人間もなかなかやるものです」
魔神が後退する。
「逃がさない!」
リーザが距離を詰めた。
聖剣の力で身体能力が底上げされているのか、人間離れしたスピードだ。
一瞬にして魔神との距離をほぼゼロにする。
「速い……!」
ガラードの表情から笑みが消えた。
「ですが、魔神には届きません」
リーザの斬撃を余裕をもって避ける。
「どうかな」
リーザが、さらに加速した。
「なっ──!?」
「私はかつて魔神に敗れた」
そして、また一段階の加速。
「一体どこまで速くなるのだ、人間……!」
「だから鍛えていたんだ。今度こそ負けないように。今度こそ──」
リーザの姿が、消える。
ルークですら視認できないほどの速度。
「がっ……!?」
ガラードが血しぶきを上げて後退した。
リーザが一閃させた聖剣によるダメージだ。
「爆ぜ消えるがいい、魔神!」
さらに、聖剣を振りかぶるリーザ。
「【プラズマブレード】!」
輝く斬撃がガラードの両腕を肘のあたりから斬り飛ばした。
「ぐっ、おのれぇぇぇぇぇっ……!」
ガラードが叫んだ。
「人間ごときが、この俺に手傷を負わせるだとぉぉぉぉぉっ!」
話し方まで変わっている。
逆上しているようだ。
「奴が再生する前に畳みかけるぞ、ルーク、アルトゥーレ!」
リーザは聖剣を手に突進する。
ルークは【レイウイング】で、アルトゥーレは【アクセルムーブ】で、それぞれ追従する。
隊長クラス三人による連携波状攻撃──。
「終わりだ、魔神!」
三人の声が唱和した。