9 聖剣オーディン探索行1
SIDE ルーク
前回の隊長会議から二週間が過ぎた。
聖剣オーディンの探索任務は続いている。
今日もルークは二番隊隊長のリーザや四番隊隊長のアルトゥーレ、そして選抜された騎士とともに遺跡の探索を行っていた。
王国東部にある遺跡群。
そのどこかに聖剣が存在する可能性が高いという。
「そろそろ聖剣が見つかるかもしれないな」
ルークがつぶやく。
根拠はない。
漠然とした勘である。
魔神ヅェルセイルは、彼の中に『魔神の細胞が埋めこまれている』と言っていた。
もしそれが事実なら、自分の内部にある【闇】が聖剣の【光】と呼応し、その存在を感知している──ということはないだろうか。
雑な推論ではあるが……もしそれが正しければ、ここに聖剣があるかもしれない。
「あるいは、魔神もそこに現れるかもしれない」
「ルーク隊長がいれば、たとえ魔神が来ても怖くないっすよ」
一人の少年騎士が威勢よく叫んだ。
九番隊の騎士カーライル。
ルークの一つ年下であり、ともに騎士養成機関の85期生でもあった。
俗に『黄金世代』と呼ばれる騎士だ。
その勇名にたがわず、カーライルは年少ながら九番隊の上位席次にいた。
「……魔神を侮るな。奴らは信じられないほどの戦闘能力を備えている」
ルークは苦い顔をした。
「俺も先日の戦いで思い知った。マリウス隊長が来てくれなかったら、俺は殺されていた」
「まじっすか!? あの鬼のように強いルーク隊長が!?」
目を丸くするカーライル。
「だから、お前も気を引き締めろ」
「まあ、僕たち全員でかかれば十分やりあえるだろう」
気楽な口調で言ったのはアルトゥーレだ。
「我が剣の錆にしてくれよう、ふふふ」
「……魔神を甘く見ないでください」
「甘く見てないさ。ただ、君の強さは信頼しているよ、ルーク君」
上品に微笑むアルトゥーレ。
「きっと魔神にだって引けは取らない」
「……俺は、前回の戦いで魔神に敗れました」
ルークがうつむく。
「奴らは、強いです」
握りしめた拳が震えた。
「だけど、このまま終わるつもりはありません。俺はもっと強くなる。そして、魔神を退けられるくらいの騎士になる。みんなを、守るために──」
『人ならざるもの』として生まれた自分だが、そうやって誰かのために剣を振るうことで、『人間』に近づける気がする。
「歓談の途中、すまないが──」
リーザが会話に割って入った。
「どうやらお客様のようだ」
すでに聖剣を抜き、臨戦態勢に入っている。
「──!?」
言われて、ルークもハッと気づいた。
言われるまで気が付かなかったのはなぜなのか。
一度気がつけば、すさまじいプレッシャーが周囲に充満しているのが分かる。
しかも、覚えのあるプレッシャーだった。
この雰囲気は、間違いない。
「魔神……!」