1 転生特典
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新作『仲間に裏切られた俺は魔王に転生する。俺だけの最強国家を魔界に築き上げ、最強魔族の軍団を編成したので、地上にいる仲間の領土に侵攻する。さあ、待ってろよ裏切り者ども。』を始めました!
序盤の伸びがとても大切なので、応援いただけたら嬉しいです。
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「すっかり遅くなってしまったな」
俺、マリウス・ファーマはため息をついた。
明日は姪のメルの結婚式がある。
妹夫婦の娘で、今年で二十歳。
四十三歳独身の俺にとって、実の娘のように可愛がっていた姪だ。
メルの方も子どものころから俺によく懐いていた。
『おじさんは、いい人いないの? あたしが大人になったら結婚してあげるね!』
彼女が子どものころは、会うたびに言われたものだ。
「そんなあの子も、とうとう他の男のもとに嫁ぐわけか。感慨深いな……」
思わず口元が緩んだ。
今日、隣町で買ってきた結婚式の祝いの品を見つめる。
俺は、四十歳を過ぎて大した収入もない農民だ。
小さな村で生きていて、出会いも少ない。
結婚なんて、ほぼ諦めている。
その分、姪には幸せになってほしい──。
そんなことを考えながら歩いていると、村が見えてきた。
「えっ……!?」
俺は立ち尽くした。
村が、燃えていた。
頭の中が真っ白になった。
村中が赤い炎に包まれ、黒い煙があちこちから立ち上っている。
なんだこれは?
何が起きている?
これは現実か?
いや、きっと悪い夢だ!
だけど、鼻先まで漂ってくる焦げ臭い匂いが、炎の熱気が──。
これはまぎれもなく現実だと、俺に突きつけてくる。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
罵声を上げて走りだす。
「メル! アルマ! トレミー!」
姪や妹夫婦の名を叫びながら必死で走る。
三人は無事なのか!?
頼む、無事であってくれ!
結婚を明日に控えて、こんなのは残酷すぎる!
俺は祈りながら走った。
村に入ると、辺りは炎に包まれていた。
あちこちに村人の死体が転がっている。
むせ返るような血臭で気分が悪くなる。
俺は吐きそうになりながら、さらに走った。
やがて──一人の女を発見する。
「あ……」
口からもれた声は、かすれた息に近かった。
メルが、血だまりの中で倒れていた。
完全にこと切れている。
衣服はボロ切れ同然に破られ、体中が鮮血にまみれていた。
可愛らしかった顔は恐怖と絶望、恥辱と苦痛で歪んでいる。
さらに、その傍には妹のアルマと夫であるトレミーが倒れている。
いずれもこと切れていた。
メル同様、鮮血にまみれて傷だらけになった凄惨な遺体だった。
「あああああああああああああああああああああああああ……!」
俺はその場で絶叫し、嗚咽した。
「メル! アルマ! トレミー! うああああああああああああああああっ!」
悲しみと怒りと絶望で、ただ叫び続けた。
「お、まだ生き残りがいたのかよ!」
「泣いてるぜ、こいつ! ははははははは!」
「村の連中が死んで悲しいかよ! 俺たちが一人残らずぶっ殺してやったからな!」
下品な笑い声とともに、十数人の兵士が現れる。
黒い甲冑の胸元に、竜と剣の紋章。
ガイアス帝国の正規兵だ。
ここミランシア王国と百年もの間、戦争を続けている仇敵。
最近は小康状態だったのだが、ふたたび戦争が始まったんだろうか。
「何ボーっとしてんだ!」
そのうちの一人が槍を繰り出した。
「があ……っ!?」
右足の太ももを貫かれ、俺は苦鳴を上げた。
たまらず地面に倒れ伏す。
「どうする、一思いに殺すか?」
「なぶり殺しにして楽しむ方がいいんじゃねーか?」
ヘラヘラと笑う帝国兵たち。
彼らの顔に浮かぶのは、暴力の悦び──それだけだ。
こいつらに、姪や妹夫婦は殺されたんだろうか。
「ちくしょう……」
俺も、ここで殺されるのか。
悔しさが、怒りがこみ上げる。
こいつらを皆殺しにできるだけの力が、欲しい。
「何にらんでるんだよ、おらっ!」
別の帝国兵が槍を突き出す。
「あ……ぎぁぁっ……!」
今度は胸元に熱い痛みが走り抜ける。
心臓を、貫かれた。
頭の片隅で、自分でも不思議に思うほど冷静に知覚した。
たちまち意識が薄れていく。
視界が暗転する。
体中が冷たくなっていく。
これが、死か──。
気がつけば、俺は草原に立っていた。
「……どこだ、ここは?」
村の中じゃない。
見たこともない景色だ。
「俺は……死んだのか」
「そうだ。だが、そうではないとも言える」
突然、目の前に人影が現れた。
全身が光り輝いていて、姿がよく見えない。
「どういう……意味だ……?」
「君は本来、死ぬべき運命ではなかった。だが、手違いで……この村で殺される運命に書き換えられてしまったようだ」
人影が語る。
「人の生死を司る存在──君たちに分かりやすい概念で言うなら、『神』による作業ミスといったところだな」
神様の作業ミスだと?
そんなもので殺されたら、たまったものじゃない。
いや、他の村人たちだって突然の理不尽な暴力で殺されたんだ。
理不尽な死って意味じゃ、俺も村の連中も変わらないか。
「まずは謝罪させてほしい。すまなかった」
人影が頭を下げた。
「謝られたところで、俺はもう死んだんだろ?」
「いや、君の死については私の責任で無効化させてもらう」
「無効化?」
「要は、生き返らせるということだ」
人影の言葉に、俺はハッとなった。
生き返る……だって……!?
「さらに、詫び代わりといってはなんだが、君に特別な能力を一つ授けよう。いわば転生特典だな」
「特別な能力……?」
なんだか妙な話になってきた。
「君の望みはなんだ? それに即した『力』を与える」
「俺の、望み──」
胸の奥から煮えたぎった感情が奔流となって湧きあがる。
そんなものは──決まっている。
「あいつらを殺したい!」
俺は叫んだ。
心の底からほとばしるような叫びだった。
「メルや妹夫婦の仇を取りたい! 皆殺しだ! 一人残らず!」
「ならば、君に授けよう。無敵の能力を。【光】に属するEXスキルを」
人影が告げた。
「そのスキルの名は──」
厳かに、告げた。
「【経験値1000倍ボーナス】だ」
気がつけば、俺は元の場所にいた。
「生きている……?」
傷一つなかった。
生き返った、ということなのか?
『術者の死がキャンセルされたため、運命係数の再計算を開始します』
『実行中』
『完了しました』
『【光】の力の起動条件を満たしました』
『術者にEXスキル【経験値1000倍ボーナス】が付与されました』
『直近の戦闘よりスキル効果が反映されます』
『帝国兵×12との戦闘に敗北、経験値36を取得しました』
『スキル効果により経験値36000として取得されます』
『総合経験値が0→36000になりました』
『術者のレベルが1→11に上がりました』
『次のレベルまでの必要経験値は残り400です』
中空に突然光輝く文字が現れた。
「おらおらっ、もっと速く走らねーと死んじまうぜぇ!」
「そらそらっ、逃げろ逃げろ!」
ガイアス帝国兵たちが矢を射てきた。
あいかわらず俺のハンティングに熱中しているようだ。
俺は走り回って、矢群を避けた。
「ん……?」
ようやく異変に気付いた。
矢を、簡単に避けられる。
俺のスピードが、信じられないほど速くなっている──!?
たぶん、普段の十倍くらいのスピードで走り回っている。
しかも息一つ切れない。
「な、なんだ、このおっさん!?」
さすがに兵士たちも焦ったようだ。
というか、俺自身が一番驚いていた。
体が軽い。
軽すぎる。
しかも、兵士たちの動きが異常なほどゆっくりに見える。
いや、逆だ。
俺の動体視力や反応速度が、信じられないほどアップしている──。
俺は超速で動き回りながら、兵士たちの攻撃を避ける。
だけど、避けているだけではどうにもならない。
攻撃に転じたいが、武器がない。
敵兵は鎧を着ているから、拳や蹴りなんて通用しないだろう。
「──待てよ。拳や蹴り、か」
これだけ身体能力がアップしているなら、相手が鎧を着ていようと、ただのパンチやキックでかなりのダメージを与えられるんじゃないだろうか。
『格闘スキルが使用可能です』
【ラピッドブロー】……ランク1スキル。拳による攻撃。対象:敵一体。ダメージ:小。
【パワーナックル】……ランク2スキル。全体重を乗せた強力な拳撃。対象:敵三体。ダメージ:中。
【ソニックフィスト】……ランク3スキル。音速機動からの拳撃。対象:敵五体。ダメージ:大。
まるで俺の意志を読み取ったかのように、ふたたび空中に文字が現れる。
「【ラピッドブロー】!」
スキルを発動した。
俺の両拳が白く輝くエネルギーに包まれる。
前方の兵士に連続で拳を叩きこんだ。
輝くエネルギーが防護してくれているのか、鉄の鎧を殴っても拳はまったく痛くない。
「ぐあっ……」
兵士は大きく吹き飛び、地面に叩きつけられた。
頭を強く打ったらしく、そのまま動かなくなる。
死んだ──のか?
生まれて初めての殺人だ。
「俺が……殺した」
罪悪感は、なかった。
ただ煮えたぎるような復讐心が少しだけ満たされた。
同時に、気持ちがさらに熱く燃え上がった。
仇を、討つんだ。
脳裏に、可愛らしく笑う姪の姿が浮かぶ。
脳裏に、幸せそうに微笑む妹夫婦の姿が浮かぶ。
(あの世で見ててくれ、メル、アルマ、トレミー……お前たちの無念を晴らしてやるからな)
今の俺にはその力があるのだから。
「さあ、帝国兵ども! 一人残らず殺してやるぞ!」
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