異世界エーディルワイスへ、スラムの教会とシスター
つたない文章ですが、よろしくお願いします。
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永中 宗一郎は白い世界を歩いていた。
女神エイレイの信仰を異世界にて取り戻すために。
(それにしてもこの何もない空間いつまで続くんだ……)
女神エイレイが消える前に開いてくれた『ゲート』を潜ってからもうなん十分も歩いていたが、未だにどこかへ着く気配がない。
(まさかこのままどこにもつかないんじゃないだろうな……、おっ! 何か見えて……)
少し不安になって来ていた宗一郎の前に、何か景色が見えてくる。そのまま歩を進めていく宗一郎は女神にもらった短剣を握り締め走っていった。
そうすると光が晴れていき少しずつ目が慣れてきて、周りの景色が認識できるようになってくる。
そこは全体的に灰色な世界であった。石畳の地面は何十年も一度も掃除されていないそうな地面で、家々も石造りの外壁はまだいいが屋根がなかったり、ただ布がかぶせてあったりするだけである。
時間帯はまだ昼間らしいが、人が誰もいない。まるで時間が止まってしまったような雰囲気の街並みに宗一郎はけおされる。
(どんな世界なのかと思っていたが、まさか世紀末な世界なのか…? 誰もいないじゃないか)
そう思いながら宗一郎は周りを見渡しながら、少しずつ町々を見ていく。とその家々を眺めながら歩いていた宗一郎は開けた場所に出た。
そこには今まであった家とは少し雰囲気が違う建物があった。今まで見た建物同様すさまじく破損してはいたが、所々木の板が当ててあったりと誰かが手を入れているような雰囲気があった。
そして建物の前面に何かのマーク、紋章のような装飾がなされていた。
(これは、まさか教会か!?)
いきなり目的の守るべき教会があった事に驚いたが、聞き込みなどの手間が省かれた事に少し安堵を覚え教会のドアに近づいていく。痛んではいたが、やはり誰かの手が入っているような綺麗さがあった。
(インターホンみたいな奴はさすがにないよな、ノックしてみるか……)
拳の裏で二回、三回と宗一郎はノックをする。しかし人が出てくるような気配はなかったのでドアノブを回してみる。
(開いてる)
宗一郎は軋み上げるドアをゆっくりと開けながら、教会の中に入っていった。中は横に長い椅子が並んでいる。その間を結婚式とかで新郎新婦が歩いていくシーンでよく見かける道が通っていた。さすがに赤い絨毯はなかったが。
そして一番奥には、女性をかたどった彫刻が置かれていた。ローブを着て胸の前で手を合わせている女性が目を閉じている場面をかたどった物の様だ。
(エイレイさんの像か? あまり似てるとは言いがたいが…)
女性像はすごく大人っぽい女性だが、宗一郎が会った女神はもう少し童顔な女性であった。
像が先に目に入ってしまったが、その像の前に女性が片膝をつき祈っている事に気が付いた。後ろから見る限りフードのような、シスターが頭にかぶっていそうな物を身に着け。服は上から下まで一つに繋がっている様な服装だ。
修道服といった物だろうか?体格的にどうやら女性のようだ。
その時、教会の天井に開いていた穴から雲が晴れた影響か日光が差し込んできて、薄暗い教会の中を照らす。日光はスポットライトのようにその祈っていた女性を照らしだしていた。
少しだけ神秘的な場面に遭遇し、宗一郎は思わず……
「……天使」
そう呟いてしまっていた。
「お客様でしょうか?」
教会内に柔和な女性の声が響く。どうやら人が教会に入ってきたことにその女性は気が付いた女性は立ち上がり、振り向いた。
「ようこそいらっしゃいました。 私はこの教会でシスターをしている者です。 本日はどのようなご用向きでしょうか? お祈りですか?祈祷のご依頼でしょうか?それとも……」
シスターさんは微笑みながら、いつの間にか手にもっていた棒を握り締めながら。
「泥棒さんでしょうか?」