女神との邂逅
拙い文章ですが、アドバイスやご感想など頂けたら幸いです。
「か、神!?」
神、そう自らを名乗った女性は微笑みながら、頷く。淡く光る金髪をしていて、真っ白なワンピースの様な服を着ている、たしかに常人ならざる気配をまとってはいる。
「ええ、貴方は神に自分の妹を助けてと願いました。 それに応えるべく、貴方を呼び出しました、宗一郎さん」
「じゃ、じゃあ俺の願いを・・・、夏美を助けてくれるのか!?」
「はい、ただその''選択肢"が貴方にはあるという事です」
そういうと、宗一郎の目の前にはイスが現れる。何も無かった場所から。
「・・・」
「このくらいで驚いていたら時間がいくらあっても足りませんよ。」
「あ、ああ」
宗一郎は戸惑い、これがやはり夢である事への疑いを強めイスに座る。
「さて、どこから話しましょうか? 貴方の妹、夏美さんと私には時間がありませんので、端的にお伝えしなければいけないのですが・・・」
神は異様に整った顔を傾けながら、困ったという顔をする。
「まずは、夏美の病を治してくれるという根拠を教えてくれないか? 医者は原因すらも把握出来てなかったんだ」
「そうですね。そこから教えましょう。まず医者が原因を突き止められない理由は夏美さん自身にあります。」
「夏美に?」
「はい、それは夏美さんが人間ではないからなのです。 いえ、少しちがいますね。 半分人間ではないと言った方が良いでしょうか?」
「え!? それは一体どういう・・・」
「それは彼女が半分は天使だからなのです。 もちろん貴方もですが」
「は、えっとなんだって!!?」
余りにも突拍子もない事を言われ宗一郎はかたまる。
「信じられないと思いますが貴方達兄妹は半分天使の血をついでます。」
神は一拍置いて、少し躊躇うようにそう言った。
「そして・・・、貴方の亡き母ルーシェは純粋な天使であり、地球で人間の男性との間に子をもうけたのです」
「母さん・・・と、俺たちが半分天使・・・は、まぁいいや、それはとりあえず置いて・・・なぜ天使だと医者は病の種類を分からないんだ?」
宗一郎はパッと衝撃とも言える事実を切り替えて、話の続きを促す。
そしたら、神は少しポカンとしていた。
「・・・余り驚かないのですね?」
「驚いてはいるけど、今の俺に重要なのは夏美の病気が治るかどうかだから・・・、でなぜなんだ?」
神は少し、ため息をつき。
「はぁ・・・、いいでしょう。 あなたはあの子の息子でしたものね。 そう永中 夏美さんがかかっている病とは天使特有の病とでも言いましょうか・・・。
天使には身体を構成しなければいけない『聖素』というものが存在します。聖素が極端に少なくなると身体機能を保てなくなり、『聖素欠乏症』と言う病にかかってしまい死に至るのです」
「聖素欠乏症か・・・、どうすれば治るんだ?」
「それは簡単です。聖素量を増やしてあげれば良いのです。 私、『女神エイレイ』と言いますが私の身体は聖素そのものですので、それを切り分けてあげれば夏美さんはすぐに元気になるでしょう」
「ほんとか!? すぐにやってくれ!!」
宗一郎は食い気味に身を乗り出すが、それを女神は手で制する。
「そこには少し問題があるのです。」
エイレイはそう言って、胸の前に手をおき目を瞑り話始めた。
「実はこの身も長くはないのです。 たとえ夏美さんに聖素を渡したとしてもこの身が滅びれば、同時に渡した聖素も消滅し、夏美さんの病は再発してしまうでしょう。」
目の前にあった希望が消失し、宗一郎はうなだれる。
「そ、そんな・・・、それじゃあ意味がないじゃないか・・・」
「そうとも限りません。少ない時間ですが夏美さんの余命は伸ばせるはずです。
そして、これが貴方の願いを叶える条件になります。貴方には私の消滅を止めて欲しいのです」
「そうすれば、夏美の病気もすっかり治るのか?」
「はい、全ての天使と私はパスで繋がっていて聖素の供給をしていますので、これまで通りそれが滞りなく行える様になります」
「それには一体何をすれば良いんだ! 俺が出来る事であればなんだってする!」
「それがどんなに過酷な道だとしてもですか?」
「ああ! 正直あんたが本当に女神かどうかは疑っている、だけど夏美が助かるならあんたが神でも悪魔でも構わない!」
まくし立てる様に宗一郎はそう言った。それに軽く頷いたエイレイは条件を口にだす。
「そう、ですか・・・では貴方にはこれから私の『世界』へ行って頂きます。 そこで貴方は私への信仰を取り戻してください」
女神エイレイは私の世界へ『行く』と口にした。
「ん? 行くって事はこの地球上でって事ではないのか?」
「あぁ、言っていませんでしたね。私はこの地球の、いえ、この次元の女神ではありません。
エーディルワイスという世界の女神なのです。 その世界では長らく私への信仰が薄れて、私を祀る教会も残す所一つになってしまいました。
神は信じられているからこそ存在出来るのですよ」
「なら俺はその世界で坊さんでもやれば良いってことか?」
「いえ、それよりまずは具体的な危機から救って下さい。 私を祀る最後の教会が潰されてようとしていますのでそれを阻止して下さい。」
「なるほど、そう言うことか・・・わかった!絶対阻止してみせるよ!」
たしかに右も左も分からない世界で、いきなり自分が行って何かできるかと考えると、凄く難しいと宗一郎は思ったが、そうではない『やるしかないんだ』と自分の心に刻みつけた。
「ありがとうございます。 お願いしますね、夏美さんと私を救って下さい」
「では、早速夏美さんに聖素を送りましょう。 私の聖素は残り少ないので、信仰が回復しない限り私とはコンタクトが取れなくてなりますのでお願いしますね」
女神は手を自分の左側にかざし「ゲート」と唱えた。
そうすると空間に渦が巻き、まるで鏡の様に別の場所が写し出される。
そこは夏美の病室であった。
「では、行きます!」
そう言って女神は両手を胸のまえにかざし、その中央に光が集まっていく。それはまるで女神から命を吸い取っている様にもかんじた。
そして、光で前が見えなくなったと思ったらその光が夏美の病室に入っていった。
「終わり・・・ました・・・」
絞り出すように言った女神は、酷く疲れているようだった。
「これで、本当に治ったのか・・・、あっ!」
宗一郎は食い入るように病室を見つめていたが、起き上がった夏美を見て声を上げた。
宗一郎が面会したときには、青白い顔をしていたが、今はすっかり血色がよくなり不思議そうにあたりを見渡している。
どうやらこちら側は見えてないみたいだが、すっかり調子が良くなったのか、手を握ったり開いたりしている。
その様子を呆然と見ていた宗一郎は自分の頬を伝う涙を感じた
「・・・エイレイさん、ありがとう」
「いえ・・・、どういたし・・・まして・・・」
エイレイは満身創痍といった様子だ
「どう・・・やら、げん・・・かいみたいですので、ゲートを開いて・・・おきますね」
そう言ったエイレイは病室の方のゲートを閉じ、別の場所が写っているゲートを開いた。
そこで宗一郎はエイレイの身体が透け始めている事に気がついた。
「エイレイさん、身体が!」
「ええ、・・・もう形と意識が保てないみたいです。 最後に貴方に異世界でも『言葉が通じるスキル』とこの短剣を渡しておきます」
「エイレイさんの信仰は必ず俺が取り戻してみせます」
宗一郎はそう言いながら、短剣を受け取った。
「その短剣の柄に付いてる宝石の中には、私の存在が保てる残り時間が聖火として入っています。
それが消えた時私の存在はこの世から消滅してしまいますので、炎が消えるまでに信仰を取り戻して下さい」
そう言い終わった女神の身体は完全に見えなくなり、周りに光の粒子が飛び散っていった。
「必ず成し遂げる」
自らに言い聞かせた宗一郎は異世界への扉を潜っていった。
人物紹介
女神エイレイ … エーディルワイスという世界の女神
永中 ルーシェ … 宗一郎と夏見の母親、宗一郎が幼き日になくなっている。女神エイレイ曰く天使。