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十五話 侍にできなくて忍者にできること

 当初、相模の砂浜には五万の幕府軍が参陣した。しかし戦いが進むにつれてその数は今や二万にも届かないぐらいに減っていた。戦ともなれば戦死者が出るのは道理だから減るのは当たり前だが、ソーラコア兵は結界から出ようとせず、結果としてあまり積極的に攻撃していないのだから戦死者の数はむしろ少ない方だ。これは近頃、攻撃の一手もなくただ陣を張っているだけになってきた幕府軍からソーラコア兵の魔法を恐れるか或いは食べ物が確保できなくなったとして逃げ出す者が続出したためであった。


 その状況を察してソーラコア兵たちは、「召喚によって崩れた我が国の体勢も立て直しが進んでいるだろうし、そろそろ攻めどきか」と目を光らせた。彼らはこうなることを待っていたのだ。戦は先手必勝というが、これは要するに戦いの結果を決めるには序盤の流れが非常に重要だということである。五百人ばかりしかいない自分たちソーラコア勢に対し、もともと五万人もいた敵方がここまで瓦解、というより一種グダグダした感じになればそれは後々の戦いにも尾を引く。彼らはそれを狙っていたのだ。そして彼らが近々援軍を呼ぼうと決めたそんなある日、ここしばらく殻にこもったカタツムリのように動きの少なかった幕府軍が久々に百人ほどの軍勢となって出てきた。風が少なく陽も暖かくて、泰平すら感じかねない晴天の昼のことであった。


「何をやるつもりだ?」

「さあ?」


 オッフェンバック断結界の存在を知り、幕府軍には最早打つ手もないと知ったであろうと思っていたソーラコア兵の見張りたちは首をひねりつつも後方に張ったテントに人を呼びに行った。槍をかいこんで駆けつけてきた他のソーラコア兵たちも首をひねった。

 ソーラコア兵側から見て砂浜の先はちょっとした上り坂になっているのだが、その頂上に並んだ百人ほどの軍勢はしばらく何をするでもなくただ立って彼らを見下ろしていた。断結界のこともあるし、そもそも百人ほどの少数で何をしようというのか意図がわからない。双方が睨みあっていると、やがて幕府軍百人の軍勢の間から十人の人間が前に出てきた。


「あ、あれは!」

「馬鹿な!」


 それを見ていたソーラコア兵たちは口々に驚きの声を上げてざわめいた。前に出てきたのはむくつけき男に後ろ手に腕を捕らわれた五人の女であった。しかもこれがただの女ではない。それはそれぞれに異なった髪の色を持ち、顔立ちも日本の女人とは感じの違うというすなわちアスファイヤの若い女性であった。


「な、何故? いつの間に捕らわれたのだ?」


 ソーラコア兵以外には穴を開けることができず、彼ら以外が外から入ることは絶対不可能のオッフェンバック断結界だが、逆にいえば彼ら以外の民が結界を越えて外に出ることも不可能だ。ということでつまり――、


「まさか、あれは偽物か?」


 との疑いが出た。しかし、着ているものこそ日本の着物だが、いくら目を凝らして見ても身をよじる彼女たちの容姿の感じはアスファイヤ人のものと見えた。それは同じ国の人間が感覚的に感じる細やかな雰囲気までそうであり、とても誰かが化けたとは思えなかった。このとき、ふと彼らの念頭にそういえば、とある考えが浮かんだ。そういえば、砂浜にオッフェンバック断結界が張られるまで召喚されてから少し間があった。その間にあちら側へと入り込んでしまったのが見つかって捕らわれてしまったのであろうか――。

 前に出た十人はそのまま坂を下り砂浜まで下りてきた。そして下りてきてまた少し前へ出た十人は、愕然として恐怖すべきことを始めた。背後の男がそれぞれ暴れる女たちの裾また襟をくつろげ陽に照ってまばゆく輝くむっちりとした乳房をまろび出させると、自らも袴をといて女たちを犯し始めたのである。

 これをつかの間呆然として見ていたソーラコア兵たちが不意に、「あっ……」と釣りだされるように走り出そうとした。しかしそこに「待て行くな!」との声がかかった。


「誘いの罠だ」


 言ったのはソーラコア陣営の指揮官であった。彼は前に幕府軍が仕掛けてきた作戦を踏まえ、こういう罠に警戒を強めていた。


「し、しかしっ」


 その指揮官に周囲の兵たちがキッとした目を向けた。犯されはじめた女たちがはたして本当にソーラコアの民かはまだ確証がない。だがその懸念のある者たちがむざむざ目の前で無惨な目にあわされるのを黙って見ているわけにもいかない。そんな周囲をなだめるように指揮官が、

「ここから見る限り相手は百人ほどしかいないが、その背後にはきっと大軍が伏せている。助けに向かえば襲われるだけだ」

 と言った。


 兵たちはぐっとうめいて踏み出そうとしていた足を止めた。確かに指揮官の言うことは正しい。かといってサンセクションなどの攻撃魔法を放って助けようとすれば間違いなく彼女たちを巻き込んでしまうであろう。兵たちは歯ぎしりしながら女たちが犯されるのを見守った。

 しかし――これが作戦ならばなんという凄惨な作戦だろう。あまりに清々しい青空の下、同じぐらい広々とした明るい砂浜で五人の女たちが犯される姿はそれだけに陰鬱で恐ろしい対称であった。ただ、むくつけき男に犯される女たちには不思議と凄惨美とも言うべき美しさもあった。燦々とした陽光に照らされる白い女体は白い砂の上で舞うように弾み、毛のない女陰は眩くけぶった。その光景には見守るソーラコア兵たちの目も頭も霞がかるようになってきた。そして彼女たちは次第にあえぎ声を発し始めた。その声は幽かなる名残を引いて――アスファイヤの大陸が接合されたため消えた波音を思わせた。


 しばしその光景を眺め、声を聞きながら沈痛な顔をしていたソーラコア兵たちは、しかし徐々に頭が煮えたぎったように薄開きにした口から舌をチロチロと出し、はっはっと肩で息をして血走った目をしてきた。確かに女たちのあえぎは男の獣心をくすぐるものがあった。声は段々大きくなり、息は熱くふるえ、それが五人重なって甘美なる合唱となった。それに加えて一ヶ月以上もここに詰めているソーラコア兵たちにもまさに色々あり、もとより彼らには下腹に込み上げ据えかねるものもあった。しかしそのような衝動こそ真に彼らの心をかきむしることであった。心中に相反重苦の大綱引きをしながらさらにしばらく女たちを見守っていると、ついに衝動を怒りに転化したソーラコア兵たちの一部が、

「もうたまらん。助けてやらねばなるまい」

 と身震いした。


 それを敏感に覚った彼らの指揮官が、

「待て!」

 と言ったが、彼らは、

「待ちませぬ! このまま民があのような目に合わされるのをむざむざ見過ごして、なんのための兵士、なんのための我ら。たとえ何が待ち受けていようとも切り抜けて助けねば!」

 と反論して叫びを上げて結界を飛び出していった。


 その言葉に感化された者や、誰かが飛び出してくれるのを待っていた者たちもそれに応じて後に続いて結界を飛び出した。その数は加速度的に増え、いま結界の前に集まった者たちのほとんどである三百名にも及んだ。

 対して幕府軍はそれに鉄砲を打ち掛け、矢を射かけた。しかし、その前にいる十人――というより女を犯す五人の男たちはよほど一生懸命なのか背後で銃声が鳴ろうと前方に敵が迫ろうと行動を止めることはなく彼らは馳せ寄るソーラコア兵の波濤に呑まれてしまった。彼らは即座に槍で突かれ、魔法で細胞一つ一つバラバラとなった粉の堆積と変えられた。

 その猛烈ぶりに恐れをなしたか、いやそもそも百人ばかりの兵数のため分が悪いからか、坂の上の幕府兵たちは少しずつ後退していく。坂の下まで来たソーラコア兵たちはさすがに誘い込みを警戒して二の足を踏み、結局それ以上進むのを止めた。


「まあ、目的は果たした。女たちはどうだ?」

「それが……どこにもおらんのだが……」

「なにっ?」


 ふり返ると例の五人の男こそバタリと倒れたり残骸と化していたが、言葉の通りまるで美しい幻のように女たちは消えていた。


「そんな馬鹿な。そんなことがあるはずがない。誰か見ていないのか?」


 誰もが否定した。場は混雑していたし、女たちを助けに行ったくせに幕府兵に対しての警戒の念に必死になって全員が全員他の誰かが見ているだろうと女たちに気を割く者もあまりなかったのであった。

 慌てたソーラコア兵たちは坂の上に対する見張りを立て、付近の捜索を開始した。しかし結果的に見つからず、一時間ほど経つと狐につままれたような顔で結界の中に戻って行った。

 そしてその夜――結界からやや離れたところに張られた陣屋代わりのテント群にてソーラコア兵たちは食事を取りながら各々疑問の言葉を呈していた。


「結局、あの女たちはどこに行ったんだ? 不思議だなぁ」

「不思議といえば敵の兵もそうだ。何か仕掛けてくると思っていたのに、結局一度身を引いてから何もなかったな。うーむ……考えてみても、何でかわからん」


 そう話しながら椅子に座ってパンをかじり、飲み物を飲む兵たちの側をまた別のソーラコア兵が通り過ぎた。それはいずれも黒い髪をして、先端に結んだ布が膨らんだ棒状の何かを担いだ四人組であった。彼らは人を横切り、所々に置いてある物資の詰められた木箱をすり抜けて誰の目にも留まらずひっそりとテントから離れていった。そしてしばらく草原の草を踏んで、テントから結界の反対側に向かって遠ざかると、その内の一人が呟いた。


「上手くいった」


 アスファイヤ語ではなく日本語だ。次に口を開いて、

「ひとまずここまでは来れたな」

 と言った大柄の男も顔こそアスファイヤ人らしく、服装もソーラコア兵のものなのに、言葉は日本語であった。いかにもかゆいように顎をかいた彼は「おっ」と声を漏らし、

「しまった。剥がれてきた」

 と頬から顎にかけてを何度も撫で擦った。その顔は不気味なことに右顎辺りの皮が浮いていた。


 それに反応した別の男が、

「それはふつう滅多なことでは剥がれん。髭を剃らんからそうなるのだ」

 と言った。


「そう言われてもわしの髭は剃っても剃ってもすぐに元に戻るというのはお前も知っているではないか。おい、どうにかしてくれ」

「いっそ剥がせ。改めて貼り直す」


 そう言われた大柄の男は浮いた皮をひんめくるように剥がしてしまった。そこから現れたのは皮下の赤い肉ではなく、髪こそ芝生のように短くなっているが眉はつながり髭はもじゃもじゃとした猛蔵の豪快そうな顔であった! 彼は目立つ蓬髪をばっさり切って変装していたのだ。その彼に先ほどどうにかしてくれと言われた男は口から肌色の風船のようなものを膨らませると、猛蔵の顔に向かって「ふっ」と吹いた。瞬間――パンッと音が鳴った。猛蔵を見るとその顔はアスファイヤ人らしい容貌にすっかり変わっていた!


「さすがは四季右衛門どの。近くで見ても全く変化とはわかりませんな」


 豪快そうなのは変わらないが、眉もつながっておらず髭もなくなり小奇麗になって、むしろ元より男前になったような猛蔵の顔をしげしげと眺めながら少年が感嘆したように言った。こちらは顔が変わることで質朴で篤実そうだが、丸顔で地味な風貌となった新瑞清十朗であった。

 清十朗が言ったように、彼らの顔が変化しているのは四季右衛門の仕業――これが陰口快弁と並ぶ彼のもう一つの忍法であった。忍法禍笑い。彼のこの忍法は人間の肌と感触などがほとんど同じかつ風船の如くよく伸びるように作られた伊賀秘伝の素材に、あらかじめ形を彫り、毛を植えて、顔を作っておく。そして小さく縮こまるそれを口の中に仕込み、膨らませて、相手の顔に飛ばすとパッと割れて貼り付きその顔に変わってしまうというものであった。四季右衛門は結界を越えるための策として、この忍法と髪の色を変えるための工夫を伊賀のくノ一にも施した。例の消えた五人の女たちは実は猛蔵が連れてきたくノ一たちの変装であったのだ。そして彼女たちにソーラコア兵をおびき出させ、捜索の最中、布を被って砂の中に潜んでいた四人――このとき四人はあらかじめペーチャーをはじめとする幕府に囚われた者たちが着ていたソーラコア兵の制服を着ている――が隙を見て何食わぬ顔で立ち上がり、ソーラコア兵になりすました四人はそれから本物のソーラコア兵が開けた結界の穴を他の者たちに紛れてさりげなく通ったというわけだ。この結界の越え方は闇の魔力を近くの兵たちに感じ取られてしまう魔族では決して為せない、魔力のない者ならでは――その中でも忍者なればこそのやり方であった。ところでくノ一たちを犯していた男たちだが、あれは五人だし、そもそも彼らは死んだので清十朗たちではない。あれは江戸の牢屋敷から曳いてきた重罪人であった。それはともかくこの策の根幹を成す働きをした四季右衛門は、

「さすがを言うなら女たちだ。おかげで上手くいった」

 と微笑して言った。


 四季右衛門の言葉に清十朗は閉じた唇をうごめかして苦々しい顔をした。


「しかし、その女たちのことですが……いくら策のためとはいえ、無惨といえばあまりに無惨な光景でございましたな。同じ鍔隠れの仲間、それも女があのような目に合うとは拙者心苦しく思います。彼女たちには悪いことをさせました。はたして大丈夫でしょうか?」

「清十朗」

 と、心を悩ませているらしい清十朗を睨み据えて四季右衛門が厳しい声で言った。


「お前の言うことは全くその通りだが、聖女を相手にするお前がそんなことでは困る。清十朗、善悪にとらわれるな。忍者は善も悪も超越していなければならん。なぜなら我らをつかう将軍家が善悪を超越しておわすからだ。天下人になるほどの御方々は必要な素質としてそれを持っているからだ。これを重々承知しておいてくれよ。すでに入ってしまった以上援軍は望めぬし、聖女をどうにかし結界が消えるまで我々もここを出ることは叶わぬのだからな。今回の任務、我々四人だけでやるしかない。そしてその要は我ら三人ではなくお前だ。よいな?」

「……ははっ、心得ましてございます」


 四季衛門に言われて清十朗は重々しく頷いた。そして叱られたことで深刻な顔つきで目を落とした。そんな彼の顔を見上げる四季右衛門は不意にふっと柔らかく笑って慰めるように、

「まあ、女たちは心配ない。あれらも承知の上でのことだ。それに、我らが任務を果たした暁にはあれらにも望むがままの褒美が与えられるだろう。我らと同じくな」

「望むがままの褒美」

 と顔を上げた清十朗が目を輝かせた。その顔を面白そうに眺めて口を挟んだのは猛蔵である。


「おっ、何だ清十朗。何か欲しいものがあるのか? 金か? 幕府への仕官口か?」

「……もしくは女か?」

 と薄笑いして柔膳が言った。


 それに猛蔵がおかしげに笑って、

「いや、女はないだろう。わしたちにとっては美女に触れるなど鯛を食うようなものだが、この清十朗ならばヒエをかき込むが如しではないか」

 と言った。

 

 この言葉に四季右衛門が不服そうな顔をした。


「待て、一緒にするな。お前たちと違って私だけは女房があり、子がある。私とて美女を抱くことはいつでもできる」


 柔膳がこれに「お前の女房といえば……」と顎を撫でながら宙に目を上げると、

「ああ、あの恐ろしいほどものをよく食う、鯛というより鯉みたいな御前様か」

「なに、誰の女房が間抜け面だ!」

「やっ、そこまでは言っておらんが」


 柔膳は手を振りながら苦笑した。

 

 続けて、

「大体、一緒くたにされたくないのは俺も同じだ。俺も割りといい男だし、女には困っておらん」

「それはどうせ女郎だろう。お前、相変わらず廓通いをしているんだろう。それは別にどうでもいいが、得た金のほとんどを注ぎ込むのはさすがに止めいよ。妻も娶らず、みっともない」


 猛蔵が呆れたようにこう言うと、柔膳は少しむっとした。


「みっともない? そう言うお前とていつまでも独り身だろうが」

「わしはただ女にもてぬだけだ!」

 と、猛蔵は妙に感のこもった声を上げた。そのとき、彼の身に実に不思議なことが起こった。それを見た清十朗はちょっと目を見張った。芝生のように短く切ってあった猛蔵の髪の毛が瞬く間にぞろりと元の腰辺りまで伸びると、風も吹かなかったのにふわりと逆立ったのである。髪が腰に垂れ下がると、猛蔵と柔膳の二人は「お前、いい男だというならば女房を娶るぐらいできるだろう。わしがやりたくてもできんことを何故やらんっ。わしはそこに腹が立つ」「お前のあの髭面とその図体ではなぁ。女も怖がるだろう。……だが俺は家に女房が待っているより廓に出向くほうがいいのだ。なんなら、この任務が終わった後にでもお前も共に繰り出してみようか?」「いや、いいっ。わしはそのようなところ興味はない」「なに? 足を運んだことがないのはともかく、行こうともせんのか。そのような奴につべこべ言われるのは俺としても気に食わぬぞ」と柔膳も徐々に熱を上げて双方言い争いを始めた。その争いはしばらく続いた。


 清十朗はそれにはじめ面食らい、次に話が終わるまで見守り、果てはいつまでも収まらない口論に次第に辟易してきて、

「お三方!」

 と呼びかけた。


「あん?」

「なんじゃ?」

「……私もか?」

「とにかく早く行こうではありませんか。われらに立ち止まり喧嘩をしている暇はありませぬ。われらは一刻も早く任を果たさねば。……しかも、口論の内容も女房がどうの、もてないがどうの、廓がどうのと益体のない――というより無礼を申せば今ここで話すにはあまりに下らない……」

「……」


 言った清十朗を三人はじっと見据えた。この若く魅力的な彼に何やら言いたげである。

 

 それに、

「な、なんでござる」

 と清十朗が動揺すると、四季右衛門が首を振って、

「……いや、なんでもない。そも何故このような話になったのか。確かにお前の言うとおりだ。ゆこう」

 と促した。


 四人は草原を黒いつむじ風のように走り出した。南へ――彼らの標的のいる王都へ向かって。彼らはむろんこの地に来たことはない。しかし清十朗を迎えに行く間も続けられていたペーチャー・クチャットへの尋問によってだいたいの道はわかっていた。そして二日のちの晴々しい朝――四人はある場所にたどり着き、島国たる日本の土地にはそうそうない広漠な草原にいくつか突き出した岩に身を隠してそこにあるものを遠望していた。ある場所とは王都ではない。それは連嶺する高い緑の山々の――ある山間の部分に建造され、凄荘の気を放射する黒く巨大な砦であった。



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