プロローグ 世界を救う者
君だ。
って、直感的に判断したよ。
いやなに、管理者である僕の直感は外れたことがない。
偶に落し物はするが……まぁ、人を見る目は確かさ。
この世界の人間の発展の仕方を見るに、僕の贈ったギフトはなかなかに優秀だったようだ。全員が全員使えるわけではないのが難点だけども、それも杞憂だった。君たちは優れたものを誰もが使えるようにし、普及させる事で世界の、そして人間の可能性を開拓していったね。
一つだけ言うことがあるとすれば、そう、現代社会はちょいと便利過ぎてギフトが隠れがちなところかな?それも成長の証と思えば文句は言えないし、言う気もないけど……
でもそれじゃあ困るんだ。
僕の与えたギフト―――"心式"が日陰者になるのはいい。君たちが独り立ちしていくのは頼もしい。
だけど―――
絶えてはいけない。
滅んではいけない。
失われてはいけない。
なんたって救世主の役回りがまた僕の担当に回ってきたのだからね。
君たちは実に逞しく成長した。
だけどそれはあくまで僕のギフトを経て君たちが築いた物理法則での話。
これから立ち向かってもらうのは異なる管理者、異なるギフト、異なる法則の中で生まれた脅威だ。
立ち向かうには科学ではなく心式を振るう必要がある。
ここまで話したらわかるかな?
そう、僕は君を―――五条優護を今回の救世主に選んだんだ。
もちろん君の心式の原点や、お姉さんのことは把握してるよ?だから選んだわけだし、当然、これも知っている―――助けて。
君の原点故に絶対断れないと知ってて言ってるんだから、性格悪いと思うかい?
でも本当に困っているんだよ。多くの世界で多くの人間がね。
それに君は人助けが好きだろう?でなきゃそんな心式は発現しない。
だから、ほら。
細かいことは僕がどうとでもするから。
君は、胸を張って世界を救う主人公になってくれ。