プロローグ 『終わりへ。』
死ねば何かご褒美が貰えるんじゃないかと思ったが、そんなことは無かった。
強いて言えば、肉体が如何に脆いかと、痛み。それから恐怖の類いを理解出来たことを、ご褒美と称することが出来るんではないか。
言えるかよ。精々「ふざけんな、死ぬのなんんてもう真っ平だ」ぐらいの感想しかない。
本当に痛いのだ。『痛み』と表現していいかは迷うが、とにかく。オブラートに表現して痛い。
地面に打ち付けられた身体は幸いなことに四肢が満足に繋がっていた。
おそらく大の字で投げやられている状態だろう。
投げ出されたように垂れた俺の視線は遥か遠くの空を向いていた。
丁度日が昇って、お天道様の光が早朝の空を貫き、照らしている。
視界の片隅に、ビルの頭が一つ覗いているのが見えるだろうか。俺が飛び降りをしたビルだ。
前兆何百メートルのビルだっけ……? まぁこの市内で一番大きなビルだ。
知ってる奴は知ってるだろう。
頭を思い切り打ち付けて、凄くどーでもいいことを考えてしまうのをホントどうにかしたい。
身体中のあちこちがもう使い物にならないのだ。
死体になるにはあともう一声捨てなければならいのは、知ってるだろ。そろそろしんどい。
後はこの思考が邪魔なんだ。いい加減にしてくれって、おい。
……早くしろよ、なあ?
藤井 尊、――さっさと死んでくれ。
それからいつの間にか経って、たぶん俺は死んだ。