それはいわゆる 下
今の声は確かに、闇の女神だった。使命を受けると決断したときに、必要な力はくれると言っていた。それを今、くれたということか?
『あなたの欲する能力を見極めました。勇者召喚と近い加護も与えましたので、少々劣りますが成長率も普通よりは格段に良くなります』
ステータスが見られれば自分の能力を客観的に判断できるし、他者の力量も大体わかる。挑むべき相手と逃げるべき相手が判断できるのは素晴らしい。ありがとうございます。俺は女神に感謝しつつ、この威力はないが便利な能力を早速試すことにした。
名前:稲目理斗
Lv:5
種族:人間
HP:200/200
MP:50/50
スキル:
ステータス開示
聖女顕現
闇の女神の加護
剣技
聖女顕現?なんだろうこれ。詳細も見れるようだが、まあ後でいいただろう。
パソコンのウィンドウのように目の前に現れた画面。右上にはヘルプまであって、慣れ親しんだ感じがした。
『ステータスの使い方』
・ステータス画面は使用者の任意によって他者に開示することができます。
・ステータス使用者は他者のステータスを見ることができます。しかし妨害スキル所持者など例外があります。他者のステータスを開示する場合、どの値まで見るかを任意に設定できます。
・他者のステータスを他者に開示することができます。
個人情報も何もなかった。試しにちょっとむかつく王様を見てみたけどレベル10とか今の俺よりは高いけど、たぶん低い方だよね。護衛騎士で30あるし。
この中で一番レベルの高いのは、俺たちを召喚したという魔術師たちだ。国でもそれなりの地位にいるのだろう、王座の階段の下、一番近いところをそれぞれ左右に分かれて立っている。
名前:シーナ
Lv:67
HP:2210/2210
MP:2150/3350
スキル:
風・水魔法適正
鈍器戦術
魔術博士
向かって右。見た目グラマラスな大人のお姉さんな女性魔術師は、大きめの杖を片手に自信たっぷりな表情で佇んでいた。腰ほど前ある長髪は黄緑色。ぴったりとしたインナーの上に着物のようなゆったりとした服を、これまた色気たっぷりにはだけさせて羽織っている。TPOとか大丈夫なのだろうか。目に毒です。ところで鈍器戦術ってその杖?杖を鈍器にしているのか?先端に大きな宝石の着いたそれで殴ればそれなりのダメージもありそうだ。
名前:ガラク
Lv:66
HP:2180/2180
MP:2100/3300
スキル:
火・土魔法適正
槍術
魔術博士
向かって左。少々気弱そうなメガネの男性魔術師は赤茶色の髪を持っている。男の持つ武器は長槍。魔術行使にも使うのだろう、儀礼的な飾りもついている。同じ魔術博士ということで似たような服を着ているが、お姉さんのように挑発的に着崩してもいないし、そもそもズボンだった。真面目そうな見た目だし、なんとなく安心感がある。
二人ともMPが満タンではない。ちょっと気になるのであとで要あたりに聞いてみようと思う。
デフォルトで表示される情報はHPやMP、レベルとスキルぐらい。どの値まで見るかを設定できるとあるので、ためしにどこまで見れるのか確認してみれば、知力や筋力といった細かなパラメーターが目の前に表示された。数字ばっかり……。これは非表示にしておこう。
「ねえ理斗?どうしたの虚空を見つめて」
「え、ああ」
由奈の目がかわいそうな人を見るものに変わる前に、これは説明しておくべきだろう。この能力は大勢の持つものでないことは女神から直接もらったことが何よりの証拠だ。この能力があれば由奈と要と共に行けるかもしれない。
使命のためには一緒にいない方がいいんだろうけど、如何せん、俺も三人一緒の方がいいんだわ。
「なあ、この世界ってステータス見れるわけ?」
「え?うん、私たちは説明を受けたときに見たよ。女神さまから授けられた水晶玉で」
「稲目はまだ触ってないよな?」
なんでステータスとか言い出したんだ、という目で見てくる二人にもう一つ質問。
「水晶玉以外で確認できないのか?」
「各々の力を可視化するのは女神より授けられたかの水晶でしか成せん」
答えたのはレベル10の王様だった。
ふむふむ、国王がそういうのならそうなのだろう。リアの時にはなかったんだけどなあ水晶玉なんて。そういえばどのくらい経ってるんだろう……。まあ、リアの能力はあまりステータスに載っている数値とは関係なかったからあっても触らなかったかもしれないけど。
さて、となれば、俺のこのスキルは有利に働きそうだ。
「いえ、お父様、古文書の勇者は見ただけで敵の力量を把握したと伝わっております。ステータスを可視化するスキルをおもちだったという伝説もありますわ」
エリス姫様が加える。つまり、スキル自体伝説級?
古文書の勇者とは初代勇者のことだ。初めてこの世界に魔王と呼ばれる存在が現れた際、特筆した能力を持った若者がそれを討伐した。昔話にあまり興味のなかったリアの知識では博識で、凄腕の魔法使いであったということしか知らないが、ステータス開示を持っていたとは。
「じゃあその勇者みたいに、戦闘中に敵のステータスとか見れる奴いたら、便利じゃない?」
ぎょっとなる周囲。ばかなという顔をする者、単純に驚くもの、様々だが。
問答無用で分からせるには、見せるのが一番。
周囲にいた偉そうな人々の眼前に、各々のステータスを展開させる。何の予備動作もなく発動するスキルだから、本当に唐突に彼らの前にそれは現れる。
ざわつき、驚きの声がかすかに漏れる謁見の間からは、もう俺を役立たずと扱う空気はなかった。
要と由奈にも開示しておいたので、たぶん上がったのだろうレベルを見て、そして俺を見て驚く二人に俺はにっこり笑う。
「要、由奈」
なんだかんだ、心配だしね。
「俺も一緒に行くよ」
名前:東藤要
Lv:6
HP:350/350
MP:55/55
スキル:
召喚の加護
全属性魔術適合
剣技
名前:天沢由奈
Lv:6
HP:250/250
MP:150/150
スキル:
召喚の加護
水・風魔術適合
剣技
にしても二人とも、勇者できそうなスペックをお持ちで……。
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