かばわれた騎士 下
自身で報告しながらも、いったいどういうことなんだと怒鳴り散らしたくなる無いようだとイーズは思った。迷宮の地下に半円形の空間?そこに巨体の怪物がいて?巨大な水晶が中心に鎮座して?怪物を倒したら上へ上る階段が現れて、そこで気を失った?意味が分からない。混乱を招くのは分かっていたが、事実だから仕方がない。ただ、赤い髪の少女のことは伝えなかった。唐突に現れた少女が倒しましたなどと、どうせ信じられはしないし、少女は消えてしまった。なにより、彼女のことは自身の中にだけとどめておきたかった。
上司を混乱の渦に叩き込んだ後、イーズは治療室で眠る理斗の元を訪れた。部屋の前には王国騎士部隊の青年が警護に当たっていたが、イーズが声をかけると一切止められることなく部屋の中へ入れてくれた。
若くして地位を手に入れたからとやっかみもあるが、元部下や直属の上司はイーズを実力で見てくれた。信頼は得られていると自負している。
自身が寝ていた救護室よりも清潔感の漂う白で統一された空間で、理斗は白い顔で眠っていた。ちゃんと、息はしている。胸の上の毛布が上下している。それにひどく安心した。
イーズは初めて、理斗の顔をまじまじと見た。閉じられた瞳は思いのほか長い睫で縁取られ、左に流れた前髪は目元を隠してしまいそうな長さ。鼻の位置や口元。美形というわけではないが、整っていないわけでもない。先ほどあったノクトルほど地味ではないが花もない。あどけなさの残る、まだ子供の顔。
「似てる?」
何となく、赤い髪の少女に似ている気がした。