迷宮の矛盾と残された二人 中
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「この下に空間があるのか?」
要たちは迷宮の奥へと進んでいた。奥には入口へ一瞬で移動できる転移陣があり、入り口に戻るよりも早いため、来た道を戻るのではなく奥へ向かうことにした。ボスがいなくとも魔物は存在するが、ボスを倒した証であるゴーレムの核を持っていると下級の魔物たちは畏怖して近づいてこなくなるため、一行は周囲の警戒もそこそこに早足で進んでいる。
そんな中、疑問を口にしたのは要だった。本当は聞きたいことは山ほどあるし、自分たちだけでも今すぐに理斗を探しに行きたい。しかし、穴がふさがってしまった今、どうやって理斗の元へ行けばいいのか、わからなかった。
だから、落ちたであろうそこに行く方法を、聞こうと思ったのだ。
が、返答は予想外のものだった。
「ないわよ。少なくとも、私の知る限りは」
「え?どういうこと?」
落ち着きを取り戻した由奈がか細い声をあげる。
質問を引き受けたのは一番後ろを歩いていたガラクだった、
「迷宮の壁や床は常に同じ状態を保つようになっている。理由はわからないけれど、迷宮そのものが古代の遺物だから、そのあたりは今研究中なんだけど、ひとまず、床が治ったことはこれで説明がつく。僕らがいくらこの空間を傷つけたとしても、迷宮は元に戻る。加えて戻るのが結構早くて、壁を貫通させるほどダメージを与えようとしたって、治る方が早くて無理なんだ」
実証済みだよ。とガラクは付け加え、いまいち理解できていない表情の二人に顔を向ける。
「だって、さっき地面が崩れたじゃないか」
「うん。崩れた。これはさっき僕が述べた迷宮の法則から逸脱しているんだ。だって、迷宮は絶対に傷つけられないはずで、絶対に劣化しないはずで、絶対に崩れたりはしないはずなんだから。僕らは掘れない壁の向こうに空間があるかどうかを調べることはできない」
「だから、私の知る限りは、とつけたの」
「僕らも知らないところへ、しかも僕らもどうやって行けばいいか分からないところへ二人を探しに行くことになる。準備がいるんだよ」
二人は納得せざるを得なかった。
今できることは、一刻も早く、白へ戻り報告をすることなのだと。
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