表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰った世界の勇者様~男で女な神の使徒~  作者: 紅紐カイナ
第一章 「古の聖女」
11/16

聖女顕現

お久しぶりです。

年内全話改稿。大変ぎりぎりですがなんとな間に合いました。

近日中に続きもアップします。


話の流れ自体は変更ありませんが、神話を追加、細かな過去の設定など変えております。

(2017/12/31)

スキル『聖女顕現』。

 ステータス開示を得た時、後回しにしたこのスキルは、読んで字のごとく、聖女を顕現させるスキルである。


「『聖女顕現』

 世界の記憶の顕現。二代目勇者聖女リア・シアーナの身体を世界の記憶により再構築し、顕現させる。その能力、技能、所持品などはその者の最高期に由来する。スキル使用者は己の肉体から離脱し、顕現させた聖女となる」


 後になってスキル説明を見て、首を傾げたものだ。だって、非現実的にもほどがある。不用意に使うことをためらって、今まで使ってこなかったこのスキル。でも、本当にあの頃のリアの力を使うことができるのだとしたら。

 俺はこの目の前の怪物を倒して、イーズと共に、二人の前に戻ることができる。



 棍棒の衝撃は思ったほどではなかった。否、間違いなく、俺の身体・・・・には致命傷を与えている。それでも壁に打ち付けられる際の衝撃をかばったことで、少しはましになっているはずだ。戻った時に俺が死んでいましたじゃあ話にもならない。

 そう、俺は今、スキルによって顕現させたリアの身体にいる。「己の肉体から離脱し、顕現させた聖女と」なった。この説明は仏教でいうところの霊魂、魂だけが他の肉体に映るということだったのだ。赤い髪の少女、リア・シアーナ。自分の肉体となっていることに違和感があるようなないような。不思議な感覚に陥りつつ、装備を確認すれば、それは魔王討伐時のもの。動きやすい生地のシャツとホットパンツに黒タイツとブーツ。それから、魔石の施されたピアス、ネックレス、ブレスレット、指輪、ベルト。リアはその能力故に重い金属の装備より、魔石による装飾を優先させる。

 俺は口から血を流す自分の身体を壁際にもたれかけた。食らったのは腹だ。おそらく内蔵か、骨あたりがやられている。冗談じゃなく俺が死ぬ前に、あの怪物を倒さなくてはいけない。


「はああああ!」


 その時、イーズの雄たけびが聞こえた。

まてまて、せっかく俺がかばったのに。死にに行くようなことを!

俺は慌てていくつかの魔石を起動させる。言霊は、そうだ、トロそうな怪物には速さで押してやろう。


『望は救いの力 纏うは風速の衣』


 唱えるとともに起動させた魔石が溶ける。両腕のブレスレット、ブーツの飾り、ベルトの4番目の魔石。溶けたそれらは俺の望むように形を作る。

 両手には見た目にもごついガントレット。両足には蹴りをいれれば致命傷になるであろう鋭い足先を持つヒールブーツ。髪は頭上でお団子に束ねられ、視界の邪魔にはならない。肩と背、前も大きく開いた装備であるので、その辺が少しスース―するが、速さを優先させた衣であるので、防御力は身体能力だのみな部分が大きい。レベル360のミノタウロスなどリアの相手ではない。


『流撃の衣』


 リアが実際に使っていた、速度重視の打撃装備である。

 時は一刻を争った。イーズの雄たけびが聞こえた四半秒。ミノタウロスが棍棒を掲げる。俺は衣の力を最大限に飛び出した。

 刹那にミノタウロスの前に躍り出る。こちらを認識すらしない目は、イーズを見ている。狙うは、顎。中空で回転。回し蹴りをその出っ張った牛のような顎にお見舞いする。けったいなうめきをあげて、巨体は跳ね上がった。

 ……思ったより、飛んだ。

 一度着地。天井に激突したミノタウロスを待って飛び上がり、より加速をつけるように蹴り落とす。

ぐわああああ

 あとはもう、ぼこぼこに。リアではステータスは見えないので、どれくらい殴ればHPがなくなるか分からないので、それはもうぼっこぼこに。とはいえ、リアであった経験、知識はそもそも俺の中に記憶としてあるので、それを掘り起こして、生き物が息絶えるときのあのシグナルを待つ。途中で倒れた怪物が棍棒を投げたが気にしない。もしイーズのところに行ったとしても、武人を名乗るのだから避けてもらいたい。


ふぐっ


 銀のヒールでの踵落としをお見舞いしたとき、それはあった。力んでいた筋肉が弛緩、力なく巨体が地に沈む。

 終わった。

 俺は安心して、胸をなでおろす。あとはあの封印を……えっと、守護者は倒したけど、封印ってどうやって解けばいいんだ?守護者たる怪物を見つめつつ、思案する。考えても分かることではないか、仕方ない。まずは俺の身体を治療してもらわないといけないし、だったら早く要たちと合流だ。守護者を倒したことで先ほど変な音がして、奥の壁に階段ができたのが見えた。

 ふと、視線を感じた。

 見れば、イーズがこちらを呆けた表情で見つめている。そこで俺は一つ、失敗に気が付いた。

 これ、もしかして隠れた方が良かった?

 勇者であり聖女であったリア。その姿が後世に残っていてもおかしくはない。古の勇者がよみがえったとなったら、世間はどう思うだろう。要たちの立場を弱くしたりはしないだろうか。

 しかし、これも考えても仕方のないこと。それは分からないし、憶測でしかない。まったく姿の違うリアと理斗を結びつけることはないはずだし。あ、でも顔はちょっと似てるかも。

 どうなるかは、イーズ次第。

 俺は彼の知識と、判断に託し、飛び上がる。スキルで生まれた肉体は、スキルを解除すれば消滅する。蜃気楼のようにふっと消えるリアの体。

 俺は俺の身体に戻り、そして。


「ううっ」


 あまりの激痛に気を失った。


「『聖女顕現』

 顕現した聖女の力量は最高値に由来するが、顕現率は使用者のレベルに準じる。また、顕現した肉体と元の肉体とはダメージを共有しないが、どちらかが死した場合、もう片方も死亡する」


名前:リア・シアーナ (顕現率10%)

Lv:200 

HP:14000/14000

MP:859/1000

スキル:

魔力任意凝固

魔力効果付与

剣技

闘士

射手

etc


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ