少女と少年
季節外れに投稿しますが、ぜひお読み下さい。
今日は2016(平成28)年2月14日(日曜日)。バレンタインデーだ。
とある住宅地の一軒の家から甘い香りがしております。
香りの発生源はとある少女が作っているお菓子のようです。
「フフン。フフ、フフンー♪」
少女はお菓子を作りながら鼻歌を歌っています。
ピンポン。そこへインターホンの呼び鈴が鳴らされました。
「おはよう。何か良い匂いするね。何か作っているの?」
インターホンのモニターには少女の隣人が映っている。
「ゲッ。アンタこんなに朝早く何か用でもあるのかしら?」
「ねえ今『ゲッ』って言わなかった?」
「アンタがこんなに朝早く来たんだもん。そう言うのは当然よ」
「嫌そうな顔しても、俺のこと好きだって知っているからな」
「ハア。いつまで勝手にそう思っているの?」
「またまた。そんなこと言っちゃって、素直じゃないんから!」
「ああもう勝手に言ってなさい!」
「まあまあ落ちついて、今も俺のお菓子を作っているんだろ?」
「ア、アンタの為にお、お菓子なんて、つ、作るわけないから!」
「じゃあお菓子は誰に作っているって言うんだよ?」
「お、お父さんに作っているんだよ!」
「お父さんか。へええ。じゃあどうやってお父さんに渡すんだ?」
「そりゃあ手渡し、あっ!」
「お前のお父さんは出張しているから手渡しできないよね?」
「えーっと。じゃあ宅配便で届ければ良いのよ!」
「ドケチのお前が宅配便使うわけないから嘘だろう?」
「嘘なわけない。私だって宅配便くらい使うわよ!」
「まあ信用しないでおこう」
「何で信用してくれないか理由を教えてよ」
「理由はさっき言ったじゃん。『お前がドケチだから』って」
「そっか。言われてみれば私って"ドケチ"かもね」
「いやいや、"かもね"じゃなくて、"絶対にそう"だから」
「うるさいなあ。仕方がないからお菓子はアンタにあげるわ」
「最初からそうやって素直にお菓子をくれれば良いんだよ」
「何その上から目線。そんなこと言ってるとお菓子あげないよ」
「ごめんなさい。謝るからお菓子ちょうだい。お願いします!」
「仕方がないな。これはバレンタインのお菓子じゃないからね」
少年は少女の言い分を聞き入れてあげることにしました。