おいしい違法茶のつくりかた
休日の午後。お盆にマグカップを載せた助手が書斎の戸を叩いた。
「先生、梅しそ茶です。どうぞ」
「ありがとう。ん…これ…! 」
赤茶色の液体を一口飲んだ私は絶句する。こんなことをしてはいけないと思いながらも、目からは懐かしさのあまり涙がこぼれた。
「ふふ、久しぶりでしょう。先生の大好きだった紅茶」
「どうやって手に入れた? 飲んでも大丈夫か…? 」
「ブレンド物だから平気ですよ。ふふふ…少なくとも先生が捕まることはありません…今のところは」
紅茶が貴重品になり、裏取引が横行し、遂には法律で禁止されるようになった時代。それでも皆は何故か様々な抜け道を使って紅茶を求めた。今助手が持ってきたのは幾つかの素材を混ぜて名前を変えることで法の網をくぐり抜ける「ブレンド」と呼ばれるものだ。
「世の中においしいものを増やすのは悪いことですか? 先生」
紅茶を飲み終わって渋い表情をしている私に助手が訊ねた。
「違うだろう。ただ…いや、私にはなんとも言えない」
こんなふうに書いてますが、紅茶を推奨しているわけではありません。
ちなみに作者はレモンティー派です。ガチャ(手錠)